エルニーニョで得する国と損する国
今冬、世界の天気は異例続きだった
2014年から続くエルニーニョは、ゴジラ級だとかブルース・リーなどといろいろな別名をつけられていますが、まさにそのパンチ力は強大で世界各国で異常気象を発生させています。
例えば、今冬だけで見ても、東日本は観測史上2番目に暖かい冬(12月から2月)を経験していますし、アメリカ北東部では史上1位、イギリスでは史上2位の暖かな冬となりました。
また沖縄や奄美地方、そしてアメリカ北西部と南西部では史上最も降水量の多い冬となり、イギリスでは史上2番目の記録となりました。
その反対に、アフリカ南部では熱波や数十年来の大干ばつが発生し、1400万人が飢餓の危険にさらされています。
このように、エルニーニョにより極端な高温や少雨となる地域では、経済的・人的被害が膨みますが、暖かく雨が適度に多くなる所には好影響となることがあります。
エルニーニョは悪い面ばかりが取り沙汰されがちですが、その実、恩恵を受ける国々も多いのです。
エルニーニョで得する国
ではどんな国がエルニーニョで得をするのでしょう。
まずアメリカです。
ある研究では、1997-1998年の大規模なエルニーニョが起きた際、アメリカは220億ドルの経済利益があったと試算されています。また、国際通貨基金(IMF)によると、エルニーニョが起きるとアメリカではGDPが上昇するといいます。
なぜでしょうか。
それは、エルニーニョが起こると、カリフォルニアなど、干ばつの続く場所で恵みの雨が降り豊作になること。大西洋岸のハリケーンの上陸数が減り防災や復興の費用がかからないこと。そして通常厳冬の北東部が暖冬になることで、経済が活性化することなどが挙げられます。
IMFによると、メキシコでは東部のハリケーン上陸が減ることで石油産業が好調になり、シンガポールではアメリカ等の好況の影響を受けて船舶業が盛んになるなど、GDPが上昇するといいます。
エルニーニョで損をする国
しかし一方で、当然ながら、損害を受ける国々も多くあります。特に、太平洋の海水温の変化の影響をじかに受けるペルーやインドネシアなどです。
ペルーでは多雨となり洪水が増加し、蚊を媒介とする感染症なども増える恐れがあります。
反対にインドネシアでは、少雨になるために山火事が発生したり、コーヒーやヤシ油といった農業生産が落ち込みます。また煙霧によって周辺国にも多大な経済損失を与えることもあるでしょう。
その他には、エルニーニョ時に高温・干ばつになりやすい南アフリカやオーストラリアなどもGDPが下がる傾向にあるようです。
日本は得する国か?
では一体、日本ではどうなのでしょうか。
日本経済研究センターが発表した今年1月の実質GDPは、前月比0.4%減でした。暖冬の影響で個人消費が落ち込んだことが一因のようです。しかしIMFの研究によると、長期的に見るとエルニーニョ時は中国やアメリカの景気が影響をして、GDPが上昇する傾向にあるようです。
今回のエルニーニョは今冬にピークを越えましたが、それでも依然強力で、今後も世界の天候に大きな影響を与えそうです。ただ、このIMFの調査を見るに、エルニーニョが長引けば、利益をあげている他国からの影響で、巡り巡って日本の経済にプラスに働く可能性があるかもしれないようです。
*参考資料*
IMF Working Paper
"Fair Weather to Foul? The Macroeconomic Effects of El Nino"