名門復活か!? 新生ミランにわくわくが止まらない
中国資本のオーナーによって生まれ変わり、今夏の移籍市場で2億ユーロ以上(約260億円)を費やしたミラン。
17日に行われたヨーロッパリーグ・プレーオフ第1戦で、マケドニアのシュケンディヤに6-0で大勝した後、中2日で行われたセリエA開幕節もクロトーネに3-0と快勝。どちらも前半の大量得点で試合を決定づける、上々の船出となった。
クロトーネ戦は[4-3-3]のスタメンに、7人の新戦力が名を連ねている。FWボリーニ、MFチャルハノール、ケシエのほか、ディフェンスラインはDFコンティ、ボヌッチ、ムサッキオ、リカルド・ロドリゲスの4バック全員が新戦力だった。
スペースを支配するミランは、攻守においてコンパクト性を維持。ボールを回し、奪われてもすぐに奪い返す。帰陣も早く、チームとしてのまとまりがある。大きくメンバーが入れ替わったにもかかわらず、仕上がりの早さが印象的だ。
また、豪華な補強が目を引く一方、育成選手もチームに組み入れた。センターフォワードは8歳からミランに所属する生え抜き、19歳のFWクトローネがスタメン。中盤の底に入った19歳のMFロカテッリも、11歳からミランで育てられている。また、18歳ながらすでに国際的な注目を浴びるGKジャンルイジ・ドンナルンマも、14歳からではあるが、ミランの下部組織で育った。クラブの低迷期に取り組んだ育成の改革が実を結び、今のミランは大型補強だけでなく、自前の若手も融合している。
信頼を勝ち取ったクトローネ
クロトーネ戦では、生え抜きのFWクトローネが大活躍した。ボールを持って技を見せるタイプではないが、動き出しで相手の裏を取るのがうまく、瞬間的なスピードも際立つ。
前半5分にPK奪取と相手DFの退場につながった飛び出し、18分にショートクロスに反応してニアサイドへ飛び込んでヘディングでゴール、24分には裏への飛び出しから起点を作ったアシストと、動き出しのうまさでミランの3得点すべてに絡んだ。
フィオレンティーナからFWカリニッチの加入が決定的となり、クトローネには移籍のうわさもあったが、試合後にモンテッラ監督は「クトローネはチームに残る」とコメント。この話に終止符を打った。プレシーズンから移籍市場が閉まるまでに、この生え抜きFWは結果を出し続け、自らの力を証明してみせた。
ただし、今後は得意とする動き出し、飛び出しが、対戦相手から警戒されるだろう。
実際、クトローネやボリーニの飛び出しに何度もスペースを突かれていたクロトーネは、3失点後の前半34分、守備的MFマンドラゴラを左センターバックに下げ、5バックに変更した。4バックが5バックになったことで、最終ラインの間隔が狭まり、ミランはそれまでのように容易にスペースを突けなくなり、飛び出し屋のクトローネの存在感が薄まった。このような対策を施すチームは増えるかもしれない。
ロナウドの後継者と言われる男
そして後半16分、クトローネに代わって投入されたのが、4000万ユーロ(約52億円)の移籍金で加入した補強の目玉、21歳のアンドレ・シウヴァだった。クリスチャーノ・ロナウド本人から、「ぼくの後継者」と指名を受けたポルトガル代表FWだ。
ユース時代を含めて中盤やサイドなど、攻撃ポジションを広く経験し、ポルトのトップチームでストライカーにコンバートされたアンドレ・シウヴァは、トリッキーなポストプレー、高い身体能力で繰り出すヘディングなど、かなりのポテンシャルを誇る。クトローネよりもプレーの幅が広いので、裏のスペースを消されても特徴を出せるのは、アンドレ・シウヴァかもしれない。
タイプが異なる2人だけに、単純な競争ではなく、対戦相手によって使い分ける、あるいは共存させる可能性もある。仕上がりは早くとも、最終型が見えないところが、今季のミランは本当に楽しみだ。
また、ミランの公式サイトでは、右サイドバックの攻撃的なコンティが「5バックを好むが、自分のキャリアではいつも4バックでプレーしてきた」とコメントしている。4バックの場合、コンティ自身が相手ペナルティーエリアに侵入してチャンスに絡む機会が少ないことに、物足りなさを感じるようだ。
このようなシステム変更の可能性も、モンテッラ監督はあり得るとコメントしている。選手選考、システム……、新生ミランの最終型はまだまだ先にありそうだ。
もちろん、忘れてはいけないのは、新キャプテンのボヌッチの存在。リーグ6連覇のユヴェントスから電撃移籍した彼が、勝者のメンタリティー、チームスピリットの注入者として君臨する。すでにミランのロッカールームでも、はしゃぐ若手を一喝して集中を促し、王者のあるべき姿を示したそうだ。
大型補強、生え抜き、そして理想のキャプテン。
チーム再生に抜かりなし。今季のミランはかなり期待できるのではないか。