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女子ワールドテニスWTAツアーで初優勝した土居美咲インタビュー Part1

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ルクセンブルク大会で、WTAツアー初優勝を飾った土居美咲
ルクセンブルク大会で、WTAツアー初優勝を飾った土居美咲

2015年10月に、女子ワールドテニスのWTAツアーで、二人の日本女子優勝者が誕生した。その一人が、土居美咲だ。

彼女は、WTAルクセンブルク大会(ルクセンブルク、10/19~24、インドアハードコート)で、初のツアー大会決勝進出で、見事ツアー初優勝を果たした。日本女子では、10人目のツアー優勝者となった土居が、独占インタビューに答えてくれた。

第1回目では、初優勝したルクセンブルクでの戦いを振り返ってもらった。

――ルクセンブルク大会で、WTAツアー初優勝を決めた時の気持ちは?

土居:嬉しかったです。ここ最近、トップの選手に勝てそうで勝てなかった試合が続いていたので、そういう中で、ペトコビッチやヤンコビッチに勝って優勝でき、いろんな思いが重なって、すごく嬉しかったです。

――表彰式で、優勝トロフィーを手にした時、どう思いましたか。

土居:お客さんもたくさんいましたし、WTAツアーで初めてということもあって、格別でしたので、本当に嬉しさが込み上げました。

優勝スピーチは、本当にどうしようと思っていて、ちょっとだけ考えてはいたんですけど。優勝した後、表彰式の直前に、大会関係者が来て、3つのこと、メインスポンサーのBNPパリバ、シティーオブルクセンブルク、大会20周年のお祝いを言わなければいけなかった。

後は、適当にブラブラと言ってと言われたけど、そのブラブラを教えてよ、という感じでした。ハハハ(笑)。自分のことで手一杯だったのに、いろいろ言わなければいけないことがあったけど、何とかスピーチが終わってほっとしました。

――2008年12月にプロ転向して、プロ7年目の24歳で勝ち取った優勝の実感は?

土居:もちろんもうちょっと早く取れていれば、それはそれでよかったですけど、逆に自分も成長して、いろんなことを乗り越えての優勝だったので、良かったと思います。

―日本女子選手では、10人目の快挙ということについてはいかがですか?

土居:優勝した後に、10人目なんだと聞いて、意外とそんなに優勝していないと知って、すごいことなんだなと感じた。だから、記録に残るという意味では、ものすごく価値のあるものだなと思っています。

――トロフィーはどこに飾っていますか?

土居:お家のリビングに飾ってあります。

――ルクセンブルクでは、1回戦で第4シードのアンドレア・ペトコビッチ(20位、大会時、以下同)に7-5、2-6、7-5で勝利、初戦をよく勝ちましたね。14年ローランギャロス1回戦では、ストレートで敗れた相手でした。

土居:以前戦った時の印象が、結構やられたという感じだったので、1回戦から本当にタフドローだなと試合前は思った。自分が、トップと渡り合えるようになったとはいえ、試合前は、どうなるかわからなかった。試合を通じて、競って、メンタルもフィジカルもタフな試合で、何とかくらいついて、本当に最後の最後で突き放せて勝てた。かなりメンタル部分が大きかった試合に勝って、突破できたのが大きくて、ものすごく自信になった。初戦を勝ててのれた。

――準々決勝では、第5シードのイェレナ・ヤンコビッチ(22位)7-6(4)、7-5に、ストレート勝ち。何がよかったのでしょうか。

土居:今、振り返っても、すごくフィジカルな試合でした。ヤンコビッチに勝つには、これだけ大変なんだと終わった後に感じた。彼女には、鉄壁の守りがありますし、そこを崩していく中で、自分も粘り強さも必要であり、攻撃的でなければいけない。本当に最初から最後まで気が抜けなかった。終わってみて、正直2セットで勝ててよかったと思いました。ヤンコビッチのサーブはいいんですけど、エースを狙ってくるというより、プレースメントがよかった。なかなかないチャンスを各セット共に取ることができた。最後は、自分の形で、しっかり攻めて、強い気持ちを持ってできたのが良かった。

――準決勝は、アリソン・バンウィトバンク(47位)6-4retで、初の決勝進出。今までツアーでは、12年WTA大阪大会のベスト4が最高だったが、一つの壁を破った感じでしたか。

土居:なるべく考えないで、一つの試合として捉えるようにした。ヤンコビッチに勝ったことは、自分の中で自信になったので、そういう意味で、自信のあるプレーができていたと思う。

――決勝前は、よく眠れましたか。

土居:緊張して、ちょっと眠りに行きづらかった。でも眠れました。

――モナ・バーセル(55位、ドイツ)との決勝、6-4、6-7(7)、6-0を振り返ってください。

土居:前日の夜も、当日の朝も、結構緊張していたんですけど、アップして、いざコートに入ると、そこまで緊張していない自分がいて、

それまでの試合でやって来たことと同じような感じで入れた。

――第2セットをタイブレークで土居さんが落として、ファイナルセット第1ゲームでは、土居さん0-40だった。ちょっと嫌な流れだったのではないでしょうか。

土居:あともう少しのところで、第2セットを落としたので、自分では気にしないようにしていても、精神的ダメージは少なからずあった。

でも、あと1セットやるだけというか、本当に目の前のことに集中して戦えた。それで次は、相手が逆に崩れてくれた。あそこが耐えられたのが一番大きかった。

――優勝が近づいて、緊張はなかったですか。マッチポイントでは、冷静でしたか。

土居:優勝を先に見過ぎた緊張は湧かなかったですね。気を抜くとやられちゃうと思っていたので、常にまだまだだぞと自分に言い聞かせ

ていた。マッチポイントでも大丈夫でした。もちろん緊張はしていたんですけど、プレーに悪影響が出るほどではなかった。(優勝した瞬間は)終わった~という感じで、私にしては、喜んでいたと思う(笑)。

――クリスチャン・ザハルカコーチから、優勝後に何と言われましたか。

土居:ほめてくれました。決勝は、セカンドセットで終われていたら、もちろん良かったけど、セカンドを取られてから、ファイナルセッ

トで勝ったのが嬉しい。くさらずにというか、根負けせずに、メンタルを保って勝ち切れたのが、俺は良かったと思うって。

――WTAツアーレギュラーシーズンの最後の大会で初優勝して、WTAランキングポイント280点を獲得して、92位から自己最高60位へ、最高の締めくくりができましたね。

土居:嬉しいです。今シーズンは、手ごたえを自分自身感じていたので、ランキングが上がったことによって、まだまだいけるという気持ちが強くなったので、勝てて良かった。でも、優勝できるとは全然思っていなかったです。今シーズンを悔いのないように終わりたいとは思っていましたけど、最後に優勝というのは、ものすごくよかった。もともとWTAツアーで優勝したいとは、ずっと思っていたので、それが達成できてよかったですね。

――ツアー優勝といえば、10月にWTAタシケント大会(ウズベキスタン、9/28~10/3、ハードコート)で、先に20歳の日比野菜緒が初優勝。対抗心はありましたか。

土居:純粋にすごいなというのと、自分も優勝したいという気持ちはもちろん強くなりましたね。

(Part2に続く)

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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