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振り駒で先手は藤井聡太挑戦者(19)運命のファイナルラウンド、叡王戦五番勝負第5局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

「定刻9時になりました。それでは第6期叡王戦五番勝負第5局を藤井挑戦者の先手番で開始してください」

 9月13日9時。東京・将棋会館において第6期叡王戦五番勝負第5局▲藤井聡太二冠(19歳)-△豊島将之叡王(31歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 対局がおこなわれるのは将棋会館5階の特別対局室。立会人は塚田泰明九段です。

 9時45分頃、藤井挑戦者が入室。下座にすわります。和服の着こなしも堂々としてきた藤井挑戦者。今日は目にも鮮やかな青い羽織でした。

 藤井挑戦者は今期叡王戦でタイトル戦出場5回目となります。

 藤井挑戦者がタイトル戦番勝負の最終戦を戦うのは初めてです。

 藤井挑戦者が本局で勝つと、史上最年少での三冠となります。

 9時46分頃、豊島叡王も入室。床の間を背にして上座に着きます。こちらは少し落ち着いた感じの、青緑に近い羽織です。

 本局は番勝負最終局のため。対局に先立って振り駒がおこなわれます。ここまで互いに2勝ずつをあげていて、そのどれもが先手番での勝利。いつも以上に、振り駒に注目が集まりました。

 両対局者それぞれ二十枚の駒を並べ終えたあと、記録係の宮原暁月三段が豊島叡王の側の5枚の歩を取ります。

「豊島先生の振り歩先です」

 宮原三段が5枚の歩を両手の中でよく振ったあと、放りました。

「と金が3枚です」

 白布の上には表の「歩」が2枚、裏の「と」が3枚。先手は藤井二冠と決まりました。

 定刻9時。塚田九段が合図をして、両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間4時間の対局が始まりました。

 藤井二冠はグラスに注がれた冷たいお茶を飲んだあと、初手、飛車先の歩を伸ばします。

 チェスクロック方式ですべての時間がカウントされる本局。豊島叡王もあまり間をおかず、飛車の前の歩を1つ前に進めます。

 5手目。藤井二冠は角の横に金を上がりました。戦型は相掛かりです。

 豊島叡王は6筋と5筋、自陣四段目に銀を2枚並べます。用意の作戦でしょうか。そこで藤井二冠の手が止まり、39手目を指す前に熟慮に入りました。

 考えること29分36秒。藤井二冠は五段目の「高飛車」を最下段の一段目に引きます。形勢はほぼ互角です。

 藤井二冠は本局、午前のおやつに「コロコロしばちゃん」を選びました。

 豊島叡王の今年度成績は10勝9敗(勝率0.526)です。

 豊島叡王はここ2か月の間、ひたすら藤井挑戦者と対戦し続けた感があります。そして10月からは竜王戦七番勝負でも対戦することになります。

 藤井挑戦者の今年度成績は25勝5敗(勝率0.833)です。

 ハードスケジュールが続く藤井挑戦者。一昨日はABEMAトーナメントに出場し、チームを決勝に導きました。

 決勝のチーム藤井-チーム木村戦は9月18日におこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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