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貧血や不妊の原因にも 「子宮内膜ポリープ」について産婦人科医が解説

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:イメージマート)

ポリープは子宮の中にできることもある

ポリープと聞くと、胃や大腸にできる病気というイメージがあると思います。

ただ、実は女性の骨盤内にある「子宮」にもできる病気なのです。

今回は、子宮の中にできるポリープである「子宮内膜ポリープ」について解説します。特徴や早期発見のためのサイン、治療法などをお伝えしますので、気になる方は産婦人科の受診も検討してみてくださいね。

子宮内膜ポリープってどんなもの?

子宮内膜ポリープは、子宮の内側を覆っている「子宮内膜」という部分に生じる病気で、組織が過剰に増殖してできる良性の腫瘍です。子宮内の内膜が過度に増殖し、腫瘤(こぶ)状の突起を形成することで形成されます。

子宮内膜ポリープは、通常、数ミリから数センチまで大きさの幅があります。また、子宮内に一つだけでなく複数個できることがあります。

どの年代でも発生する可能性がありますが、40〜49歳が最も見つかりやすいと考えられています。月経のある女性のうち、異常な不正出血のある場合には、子宮内膜ポリープが見つかる確率(有病率)は20〜40%程度と推定されています。(文献1)

なお、子宮内膜ポリープは良性の腫瘍ですが、癌化するリスクもわずかながら存在します。悪性の子宮内膜ポリープに関わるリスク因子には、60歳以上、大きなポリープ、閉経、不正出血、多嚢胞性卵巣症候群などがあります。(文献1)

子宮内膜ポリープの症状は?

主な症状には以下のようなものがあります。

  1. 不正出血
  2. 月経量の増加
  3. 月経不順
  4. 下腹部痛
  5. 不妊

ただし、無症状であることも多く、定期検診などで偶然ポリープが発見された場合でも、自覚症状がない人は少なくありません。

子宮内膜ポリープの検査・診断方法は?

検査方法にはいくつかの選択肢があります。
以下に、主な検査方法を挙げます。

1. 経腟超音波検査

超音波検査は、子宮内膜ポリープを診断するための一般的な方法です。

腟内に超音波機器を挿入して、子宮および子宮内を観察します。超音波検査では、子宮内膜の厚みやポリープの有無、大きさ、数などを確認することができます。

2. ソノヒステログラフィー

子宮内に温められた生理食塩水を注入し、子宮内を水で満たします。その後、経腟超音波検査を行うことで、ポリープの存在や大きさがより明瞭に観察できます。

3. 子宮鏡検査

子宮鏡検査は、最も確実な子宮内膜ポリープの診断方法の一つです。

子宮内に細い管状の器具(子宮鏡)を挿入し、子宮内を直接観察します。子宮鏡には光源とカメラが付いており、医師はポリープの有無、大きさ、形状を直接目で確認することができます。

必要に応じて、子宮鏡検査中に生検を行い、ポリープの組織を採取することも可能です。

子宮内膜ポリープの治療方法は?

子宮内膜ポリープの治療方法には、保存的治療と手術があります。

保存的治療

その時点で積極的な治療はせず、定期的な検査を行なっていきます。偶然発見された子宮内膜ポリープは、無治療でも自然に消失する場合があります。ある研究では、閉経前の患者において29%の子宮内膜ポリープが1年後に自然消失したと報告されています。(文献2)

手術

外科的に子宮内膜ポリープを除去する場合もあります。一般的には子宮鏡を使用し、通常は局所麻酔または全身麻酔下で行われます。これが最も多用される標準的治療法とされています。子宮内膜ポリープが小さく、個数が少なければ、外来でも実施可能です。

状況によっては、子宮内膜全面掻爬術(子宮の内側の全面を薄く削り、内膜ごとポリープを削り取る方法)が実施されることもあります。

治療後の症状改善と再発について

子宮内膜ポリープの治療後は、多くの場合に症状(不正出血や月経量増加など)が改善します。ただ、改善の程度には個人差があり「確実」ではありません。

なお、不妊症で悩む女性に対する子宮鏡手術(ポリープ摘出術)は、妊娠率を高めることが期待できます。(文献3)

子宮内膜ポリープの再発率は比較的低いとされています。ただ、治療後は定期的な経過観察をすることで再発の有無をチェックし、再発した場合に早期発見できる方が良いでしょう。

まとめ

子宮内膜ポリープは産婦人科の中でそこまで珍しい病気ではなく、偶然見つかることも多い病気です。検査法や治療法が確立されていますので、その点はご安心ください。

ただ、どのような治療法が良いのかは患者さんごとの状況によって異なりますので、担当医としっかり相談することが大切です。

不正出血や月経不順、過多月経、妊活がうまくいかない、などでお悩みの方は、ぜひ産婦人科で相談してみてくださいね。

参考文献

1. Mansour T, Chowdhury YS. Endometrial Polyp. In: StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; April 25, 2023.
2. Lieng M, et al. Prevalence, 1-year regression rate, and clinical significance of asymptomatic endometrial polyps: cross-sectional study. J Minim Invasive Gynecol. 2009;16(4):465-71
3. Kodaman PH. Hysteroscopic polypectomy for women undergoing IVF treatment: when is it necessary?. Curr Opin Obstet Gynecol. 2016;28(3):184-190.

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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