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「奇跡の投手」がプロ10年目で開花。ホークス川原弘之、初の年俸1000万円超。

田尻耕太郎スポーツライター
契約更改後の会見もちょっと緊張?(筆者撮影)

年俸2.4倍に「緊張して・・・」

「緊張していて、どんな言葉を掛けてもらったのかあまり覚えていないんです」

 福岡ソフトバンクホークスの川原弘之投手が3日、ヤフオクドーム内の球団事務所で契約更改を行い、倍増以上となる700万円アップの年俸1200万円で一発サインをした。

 ハンコを押した後に会見場に現れた川原はやや戸惑っていた。そして、冒頭のセリフである。

 今季がプロ10年目だった。これだけ長くプロ野球の世界に身を置きながら、年俸1000万円を超えたのは自身初めてだった。もともとは2009年のドラフト会議で今宮健太に次ぐ2位指名でプロ入りをしたが、最速158キロの豪速球を生かせないほどの制球難に苦しんだ。その後左肩にメスを入れ、左肘もトミー・ジョン手術を行うなど長いリハビリ生活に。その間に背番号122の育成選手契約となっていた。

もっと活躍できたという思い

 チーム内からもこんな声が聞かれた。

「(昨シーズンまで)5年間も一軍から遠ざかり、通算でも3試合しか投げていないのに10年目を迎えられるってスゴイ。奇跡の投手ですよ」

 決して陰口ではなく、川原のいる前で発せられた言葉だ。本人も妙に納得していた。

 資料によれば、過去最高年俸は入団時の600万円。それが4シーズン続き、育成枠に移行された後は400万円台まで下がっていた。年棒増を勝ちとったのは昨オフの10万円増(450万円→460万円→その後支配下登録で500万円に)の一度きりだった。

「やれば上がる。それを実感しました」

 今シーズンは19試合に登板。0勝0敗だったが、プロ初ホールドとなる1ホールドをマーク。防御率は2.66とまずまずだった。「でも、正直もっと頑張れた、もっと活躍できたという思いはあります」。一軍登板の多くはシーズン序盤。球宴明けは3試合のみで、7月19日の東北楽天戦が今季最後の一軍マウンドだった(9月に一軍登録されるも登板はなかった)。

 来季に向けては「50試合登板」と目標を掲げた。球団からも「左の中継ぎは嘉弥真とモイネロしかいない。期待している」と言葉を掛けられた。

感動した開幕戦セレモニー

 今シーズンはプロ10年目にして、プロ野球選手としての本当の喜びを味わった。

「6年ぶりの一軍だったシーズン初登板も緊張して足が震えたけど、一番印象に残っているのは開幕戦のセレモニーでした。ドームの照明が暗くなって、スポットライトを浴びながら自分の名前を呼ばれて選手の整列に向かった時にもの凄い歓声が聞こえた。すごく感動しました」

 これでプロ野球選手・川原弘之はようやくスタート地点に立った。真価が問われる2020年シーズンへ、今オフはまた千賀滉大らと一緒にトレーニングを行う。「鴻江スポーツアカデミー」の合宿にも参加する予定だ。

(金額はいずれも推定)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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