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高校&阪神タイガースOB対決は、後輩側に軍配!都市対抗3回戦にて

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
高校もプロも“先輩後輩”の玉置投手(左)と阪口コーチ。都市対応で初対戦しました!

 東京ドームで行われている『第90回都市対抗野球大会』は、きょう22日の第2試合まででベスト8が出揃い、第3試合のJFE東日本(千葉市)対パナソニック(門真市)から準々決勝に入ります。おととい20日に行われた3回戦で、元阪神の玉置隆投手が兼任コーチを務める日本製鉄鹿島(鹿嶋市)と、阪口哲也コーチが所属するパナソニックが初めて顔を合わせました。

 2人は時期が違うものの市立和歌山高校(玉置投手の在校時は市立和歌山商業高校)の先輩後輩で、阪神タイガースでは阪口選手が入団した2011年から4年間、一緒にプレーしています。阪神を戦力外になったあと2015年から阪口選手がパナソニックで、翌年から玉置投手が新日鐵住金鹿島(現・日本製鉄鹿島)で現役を続けました。阪口選手は2018年の夏から守備走塁コーチになり、玉置投手は2018からコーチを兼任しつつ今も現役です。

 これまで、この2チームが対戦したのは2017年3月の『JABA東京スポニチ大会』予選リーグ1試合だけ。結果は延長10回、タイブレークの末にパナソニックが4対3でサヨナラ勝ちしました。玉置投手が先発で、阪口選手は出場していません。その後は対戦がなく、この都市対抗3回戦が初めての“本大会対決”となったわけです。阪口コーチは三塁コーチ、玉置投手もコーチとして…いや玉置投手はおそらく登板に備えて投げていたでしょう。

試合が動いたのは後半

 では20日のパナソニック対日本製鉄鹿島戦を振り返ります。パナソニックはパナ、日本製鉄鹿島は鹿島と書かせていただきます。

7月20日 第2試合《3回戦》

パナソニック-日本製鉄鹿島

 パナ 000 001 010 = 2

 鹿島 000 000 000 = 0

※鹿島先発の伊藤投手。6回1/3で5安打1失点の好投です。
※鹿島先発の伊藤投手。6回1/3で5安打1失点の好投です。
※パナソニックの城間投手も5回1/3を投げて1安打無失点!
※パナソニックの城間投手も5回1/3を投げて1安打無失点!

◆バッテリー

【パナ】城間-庄司-○鈴木-小屋-北出 / 三上

【鹿島】●伊藤-山井-能間-角田 / 片葺

◆二塁打 パ:藤井健、坂田、田中

     鹿:高畠、林稔

◆盗塁 パ:藤井健

<試合経過> ※敬称略

 先発は鹿島が伊藤(元DeNA)、パナが庄司、右腕同士の投げ合いで5回までパナが2安打、鹿島が1安打という投手戦でした。先攻のパナは1回、死球があったものの盗塁失敗など3人で終了。鹿島は三者凡退です。2回はパナが三者凡退で、その裏の鹿島は4番・高畠が相手エラーで出塁、林悠の犠打で二塁へ進み、林稔(SUBARU)が四球、2死後に片葺も四球とノーヒットで満塁としますが、得点はなし。

※4回裏、チーム初ヒットの二塁打を放った4番・高畠選手。思わずガッツポーズが。
※4回裏、チーム初ヒットの二塁打を放った4番・高畠選手。思わずガッツポーズが。

 3回はパナが先頭の8番・藤井健がこの試合初ヒットとなる左前打!三上の三振で二盗を決め、横田の一ゴロで2死三塁とするも、やはり無得点。その裏の鹿島は三者凡退で、4回のパナも三者凡退です。その裏、今度は鹿島が初ヒット!高畠が右翼線に二塁打を放ち、またまた林悠が送って1死三塁のチャンスを迎えましたが、林稔の三ゴロで高畠が走塁死…。林稔は二塁へ進み、7番・佐藤竜の四球で一、二塁としたものの結局は2者残塁。

※6回表、2死二塁で坂田選手が先制のタイムリー二塁打!
※6回表、2死二塁で坂田選手が先制のタイムリー二塁打!
鹿島の山井投手は7回のピンチをしのいでベンチへ。
鹿島の山井投手は7回のピンチをしのいでベンチへ。

 5回のパナは2死から藤井健が右中間二塁打したけれど、チャンスは広がらず。その裏の鹿島は先頭の9番・日置(SUBARU)が四球を選び、藤本の犠打で二塁へ。福盛は遊ゴロでしたがファーストの捕球エラーによりセーフ。ここでパナの城間が先に降板します。左の庄司が左の堀越を右飛に打ち取って、今度は右の鈴木が登板。高畠は三振に倒れ、またしても2者残塁。両チーム合わせて3安打、まだ試合は動きません。

 しかし6回、パナが先制します。先頭の9番・横田が左前打、法兼が送って1死二塁。諸永は空振り三振に倒れるも、続く3番・坂田が伊藤の初球を打って右翼線二塁打!これで横田が還りました。4番・片山は一邪飛(前の2打席はともに見逃し三振)に切って取った伊藤。7回もマウンドへ向かったのですが、1死から田中に左中間二塁打を浴びて降板。山井が残り2人をピシャリと抑えて事なきを得ています。なお鹿島はパナ3人目の鈴木に対し、6回は三者凡退で7回は1四球のみでした。

※能間投手とともに初戦に続いて登板の角田投手。
※能間投手とともに初戦に続いて登板の角田投手。
※9回裏に二塁打を放った林稔選手。代走のルーキー・平山選手とタッチ。
※9回裏に二塁打を放った林稔選手。代走のルーキー・平山選手とタッチ。

 そして8回、鹿島は能間が登板。先頭の横田が中前打して犠打で二塁へ、続く代打・深瀬は左前打。1死一、三塁となりピッチャーが角田(SUBARU)に交代します。代打・長谷川(ミキハウス)は三振に倒れるも、続く片山が初球の真っすぐを打って右前タイムリー!この回は1点止まりでしたが、貴重な追加点です。

 その裏、パナ4人目の小屋に三者凡退だった鹿島打線。まだ1安打ながら、9回表を角田が2奪三振の三者凡退で片付け、最後の反撃へ。しかしパナは北出が登板、盤石のリレーとなっています。ここで先頭の林稔が1ボールからの2球目、真っすぐを左中間へ運ぶ二塁打!ようやくチーム2本目のヒットが出ました。ところが…佐藤竜が空振り三振、代打・島田も空振り三振、そして代打・安達は3球で空振り三振に倒れ試合終了。パナが8安打2点、鹿島は2安打0点です。

原口先輩は「いいスイング」と

 帰りに応援の皆さんが待つ外の通路へ出てきた両チームは、同じ青のシャツを着ているため区別が難しかったですねえ。まあ玉置投手は前回と同じ黒い服に、虎カラーのタオルなので一目瞭然でしたけど。ちょうど阪口コーチが高校のOB・梶本さんと話しているところへ合流。いわゆるチーム和歌山です。

何年か前にもお会いした市和商OBの梶本先輩(左)と玉置投手(中)、阪口コーチ(右)。
何年か前にもお会いした市和商OBの梶本先輩(左)と玉置投手(中)、阪口コーチ(右)。

 別の空間ではチーム帝京が集合。日本製鉄鹿島の島田直人選手はお母さんと、高校の同級生で今は三菱日立パワーシステムズ所属の園田崇人選手のご両親と一緒にいました。「以前、阪神の原口選手について取材させていただいたご縁で…」とご挨拶しかけたら、園田選手のお母さんが「もしかして岡本さんですか?」とおっしゃってビックリ。え、なぜ?「原口選手ですよ~。いつも読ませていただいていますから」。なるほど、阪神・原口文仁選手のおかげで、帝京ファミリーの皆さんに知っていただけて感謝!

こちらは帝京OB。右側が島田選手とお母さん、左は園田選手のご両親です。
こちらは帝京OB。右側が島田選手とお母さん、左は園田選手のご両親です。

 でも島田選手は最後に代打で出て三振だったこともあり、ちょっと元気がありません。その打席の時は甲子園のナイターが始まる1時間半前くらいだったので「ちょうど練習の終わった原口選手がロッカールームでテレビを見ていたかも」と言ったら「そうですかね?」と少し嬉しそうでした。

 実は、本当に見ていたんですって!結果は三振だったけど「いいスイングしていた」と原口選手。園田選手も1つ後輩だから当然で、さらに「補強で来ていた日置選手は、僕の直々の先輩なんですよ!」という情報も。

敗因はない、双方とも力を尽くした試合

 調べてみたらSUBARUの日置翔兼選手は同じ埼玉の出身で、中学時代は深谷彩北リトルシニア(2014年まで寄居リトルシニア)所属だったんですね!原口選手の1学年先輩だったら、いろんな話を聞けたでしょうに…。ユニホームを脱いだ試合後に見つけることは困難でした。2回戦の時にチャレンジしておけばよかったと後悔。次は日本選手権ですね。SUBARUの皆さん、京セラドームでお待ちしています。必ず来てください。

※9回1死で代打出場した島田選手。甲子園のロッカールームで原口先輩が見ていました。
※9回1死で代打出場した島田選手。甲子園のロッカールームで原口先輩が見ていました。

 ところで島田選手には、2回戦のあとで原口選手から「僕の代わりに気合の蹴りを入れといてください」と頼まれたので、しっかり任務を遂行したのです。それを伝えたら大笑いだった島田選手のお母さん。この日の帰り際に「原口さん、ぜひまた気合いの蹴りをお願いします!」とおっしゃっていました。今度は代理の私でなく、直に蹴ってあげてください。

 チーム帝京のもうひとり、この日の先発だった伊藤拓郎投手はひとこと。5回まで藤井健選手以外に打たれておらず、スライダーやフォークなどの変化球にパナソニック打線は苦労していたようです。いいピッチングでしたよね?と尋ねたものの「はい、まあ。でも…負けたので」という言葉だけです。

玉置投手のお母さん(右上)と、ポンポンを持って応援する玉置投手の長女(左)、大音量にも動じない次女(右下)。
玉置投手のお母さん(右上)と、ポンポンを持って応援する玉置投手の長女(左)、大音量にも動じない次女(右下)。

 玉置投手が「敗因はないですね。みんな力いっぱいのプレーをしましたし、それで負けたら仕方ない」と言ったように、両チームとも見事な戦いだったと思います。日本製鉄鹿島・中島彰一監督も「いいチームです。勝たせてやりたかった。申し訳ない」と帰り際、応援に駆けつけた方々へ言葉を残して帰途に。いい試合を見せていただきました。ありがとうございます。

北出投手が4年ぶりの150キロ!

 一方、勝ったパナソニックは、きょう22日の18時からJFE東日本とベスト4を賭けた準々決勝に臨みます。阪口コーチと同期の選手を中心にコメントをご紹介しましょう。

 阪口コーチがパナソニックに入ったのは、阪神で4年間プレーした後の2015年。つまり同期入社(入部)は、大学を卒業した同い年の選手たちです。そのおかげで私もよく話をさせていただきました。でも柳田一喜選手が今季からコーチになったり、顔ぶれは阪口選手が入部した頃とは少しずつ変わっています。考えたらもう5年目。阪神より長くなったんですもんね。

※パナソニックの北出投手。今のところ“9回の男”です。
※パナソニックの北出投手。今のところ“9回の男”です。

 そんな同期の2選手のうち、まず北出浩喜投手です。2回戦の東邦ガス(名古屋市)戦では、1点リードの9回に登板して2奪三振の三者凡退!最速150キロを計測しました。「自分では見てなくて、でもみんなに言われました(笑)。150出てた、150出てたって」。私もビックリした、って言うと失礼だけど。「いや本当に150キロなんて、日本新薬の補強で出た1年目の都市対抗、ENEOS戦以来!4年前ですよ」

 ちょっと振り返りましょう。2015年7月25日、都市対抗2回戦での日本新薬(京都市)対JX-ENEOS(横浜市)。日本新薬は榎田投手が先発し、7回途中に北出投手がリリーフ登板でした。2回2/3を投げて1安打無失点の完封リレー!1対0で勝った試合です。この時以来ということですね。ちなみにJX-ENEOSには5番サードで糸原選手(阪神)が出ていました。

「ピッチャーがすごい」と三上捕手

2回戦に続いて3回戦も最後を締めた北出投手(左)と三上捕手(右)のバッテリー。
2回戦に続いて3回戦も最後を締めた北出投手(左)と三上捕手(右)のバッテリー。

 現在に戻って、この3回戦も先頭に二塁打されたあと3連続三振!「いや~よかったです」。あと3つ勝てば…と言いかけたら「それは禁句です!」と北出投手に止められました。「先を見るんじゃなく一戦必勝で」という田中篤史監督の方針ですね。

 「はい、1つ1つ勝っていこうと。次に相手がどこかも知らないくらい。でもね、さっき(試合後のミーティングで)監督が『3つ勝って、これが折り返し』って言ったんですよ。ダメでしょ?自分で言ったら」と笑います。田中篤督は、さぞ選手たちに突っ込まれたことでしょう。

※160センチの小屋投手ですが、投げっぷりはすごい!帽子が飛ぶこともしばしば。
※160センチの小屋投手ですが、投げっぷりはすごい!帽子が飛ぶこともしばしば。

 バッテリーを組んだ三上恭平選手にも聞いてみました。彼は阪口コーチら入社5年目組より1学年上です。「ピッチャーがすごいです!僕は捕っているだけで。いいボールが来たら打たれないですね」と3連勝を振り返ります。「うちは接戦ばっかりだから、きょうの8安打が珍しいくらい」。鹿島打線については「ずっとマークして研究していました。その通りピッチャーが頑張って投げてくれた。ほとんど失投はなかったと思います」とのこと。さすがキャッチャーらしいコメント。リリーフの小屋裕投手も2回戦、3回戦と見事な抑えっぷりですね。

昨年の打ち方に戻して奏功

 最後は藤井健選手。入部してすぐ嬉しそうに「同い年です。健と書いて“つよし”って読むんですよ」と、当時の阪口選手が教えてくれたので、一番よく覚えています。今大会は2回戦で1安打、3回戦は2安打でした。「レフト前はスライダーで二塁打はフォークです」。でも、今季ずっと好調なわけではなかったようです。

※藤井健選手の打席。この日は二塁打を含むマルチで、盗塁も決めました。
※藤井健選手の打席。この日は二塁打を含むマルチで、盗塁も決めました。
※先取点が入り、ベンチ前で笑顔の藤井健選手。
※先取点が入り、ベンチ前で笑顔の藤井健選手。

 「ことしに入ってキャンプで振り込んで手応えはあって、オープン戦ではずっと調子がよかったんですけど、春先のJABA大会で調子が下がって…すぐ修正できなくて悩んでいました」

 いつからよくなった?「都市対抗予選からですね。予選までは、去年より打率を高めるために去年やっていなかった逆方向を意識したりしていたんですけど、それが自分にはあまり合ってなかったというか、まだ早かったというか(笑)。予選に入れば打たないとダメなので、去年と同じスタイルに戻して。上がってきたというか、今まで通りに戻った感覚です」

 早かったということはないと思いますけど、社会人の場合は時期も難しいでしょうね。「またオフシーズンに鍛え直します!」。了解しました。ただし来年はオリンピックの影響で日本選手権が夏、都市対抗は秋になるんですよね。それも大変。

「テツはいいコーチです!」

 ところで、同い年の阪口コーチはいかが?「テツのコーチぶりですか?自分はいいコーチだと思います!思っていることも言ってくれますし、自分が考えてることも伝えやすいので。自分はいいコーチだな!と思います」。試合前のシートノックで阪口コーチがノッカーを務めていてビックリしました。

※6回2死二塁で坂田選手が二塁打!手を回す阪口コーチ。
※6回2死二塁で坂田選手が二塁打!手を回す阪口コーチ。
※試合前のシートノック。阪口コーチ(左)はノッカー、玉置投手(右)は三塁側で見守ります。
※試合前のシートノック。阪口コーチ(左)はノッカー、玉置投手(右)は三塁側で見守ります。

 本人に聞いたら「ことしから」だそうで。都市対抗、しかも東京ドームなんて緊張したでしょう?と尋ねると「初戦は緊張しました!今もいい緊張感でできています」と阪口コーチ。でも藤井健選手に言わせると「緊張しすぎですよね!もっと適当に打ってくれてもいいんですけど、また力んだりして変なところへ打ってきたりしますからね(笑)」とのこと。いい緊張感も、ほどほどにお願いします。

 藤井健選手も、前出の三上選手も、もちろん阪口コーチも、田中監督の方針通り「目の前の試合を1つ1つ」というスタンスです。なのに自身で「折り返し」と言って、思いっきりダメ出しされる監督の、とても明るい人柄がチームをまとめているのかも。そんな気がしました。きょうも「一戦必勝で頑張ってきます!」と試合に向かった阪口コーチ…いや、哲ちゃんコーチ。また腕をグルグル回してくださいね。

    <※印は各チーム提供、それ以外は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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