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石破首相、「地方交通は地方創生の基盤」と所信表明 地方鉄道の存続・活性化は本当に期待できるのか

鉄道乗蔵鉄道ライター
衆議院本会議で所信表明する石破首相(写真:首相官邸)

 2024年10月4日、第102代内閣総理大臣に就任した石破茂氏は、衆議院本会議において所信表明演説を行った。石破首相は自らが鉄道ファンであることを公言し、内閣府地方創生担当大臣を務めた経歴もあることから、昨今、全国各地で存廃問題が表面化しているローカル線問題についての解決を期待する声も聞かれる。

 こうしたことから筆者は、石破首相の所信表明演説で、ローカル線問題について何を語るのか注目していたところ、演説の中で「地方交通は地方創生の基盤です。全国で『交通空白』の解消に向け、移動の足の確保を協力に進めます」と言及があった。

 ネットメディアの影響力を十分に承知しているという石破首相は、総理・総裁の就任前からさまざまな取材に対して積極的に応じてきており、その中で日本の鉄道の在り方について、ローカル線問題の落としどころ「上下分離」になるとし、そのためには「乗りたくなる鉄道、乗っていきたくなる町を作るための努力は必要」と発言している。さらに、災害時や有事の際の輸送力の確保の観点から鉄道をネットワークとして評価することの重要性についても各所で発言していることは、筆者の過去記事(石破首相が就任前に発言「リニアに使うお金があれば北海道の鉄道に使うべき」 北の鉄路は石破政権で蘇るか)でも詳しく触れている。

 しかし、その一方で、2024年1月5日のJCASTニュースのインタビュー記事では「1日に数人しか乗らないようなどうにもならない路線については、バス転換は否定しない」「ライドシェアは時代の趨勢から必須、不可避」といった趣旨の発言をしており、石破首相のいう「交通空白の解消」が、実際にふたを開けてみるとローカル線の廃止とライドシェアへの転換でお茶を濁されるという懸念もないとは言えない。

 2022年10月1日、上下分離により11年ぶりに災害復旧し営業を再開した福島県の只見線は、被災前の輸送密度はわずか49人であったが、福島県では只見線を日本一の地方創生路線とすることを目標に掲げさまざまな取り組みを行ったところ、利用者は被災前の約3倍に伸び、バスでは輸送できないほどの観光客が沿線の押し寄せ、福島県が負担する只見線の維持費を上回る経済効果を県内だけでも発揮しているという。地方創生の基盤となる地方交通というのであれば、これまでのインタビューで語ってきたような、「鉄道をネットワークの観点から再評価」し、地域の「乗りたくなる鉄道、乗って行きたくなる町づくり」の取り組みを後押しするような政策が有言実行となるのか注目だ。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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