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高校時代のチームメートが日本代表で再会。当時の小林悠と太田宏介の記憶。

河治良幸スポーツジャーナリスト

あれから10年が経ったのかと思うと、とても感慨深い。

10月のジャマイカ戦とブラジル戦を目指す代表メンバーに小林悠(川崎フロンターレ)と太田宏介(FC東京)が選ばれた。小林は今年4月の代表国内キャンプに招集されたが怪我で辞退。太田は2010年1月に実質B代表で臨んだアジアカップ予選のイエメン戦で初キャップを経験し、ザッケローニ前監督の下でも2011年8月のトレーニングキャンプに参加したが、その後は代表から遠ざかっていた。

ご存知の方も少なくないと思うが、2人は神奈川県の麻布大学付属渕野辺高校の同級生だ。そんな彼らが初めて日本代表で顔を合わせることになった。筆者は2004年、2005年と全国高校サッカー選手権に出場したチームを県大会から取材しており、2人にも何度か話を聞いた。当時から強烈な存在感を放っていた小林と太田だが、キャラクターは全く異なっていた。

小林が県大会で決めたゴールは今でも鮮明に覚えている。味方のパスを呼び込むとファーストタッチでマークを外し、技巧的なシュートでGKの横を破った。そのシーンに関して小林は自分がボールを引き出しながら動き出すタイミング、相手DFをかわすイメージ、シュートのコースにいたるまで説明してくれた。

これまで多くのストライカーにゴールシーンのイメージを聞いて来たが、あれほど具体的に解析して語れる選手はプロでもそう多くない。もちろんストライカーは理詰めで語れれば良いものではないが、刹那の空間的な現象をしっかり描けていることの証明だ。現在は栃木FCに所属する小野寺達也とも超高校レベルのコンビネーションを実現していた。

一方の太田は高校時代から人並みはずれた身体能力と驚異的な左足のキックを誇っており、主に左のウィングバックだった彼が敵陣サイドを攻め上がれば、崩し切らなくてもシンプルなクロスでビッグチャンスがもたらされた。特にカウンターからのアーリークロスはゴール前に走り込むアタッカーに吸い込まれていく。当時の記憶としては、技巧タイプの小林よりも快速を誇る他のFWとホットラインを築いていた。

高校卒業で横浜FCに入団し、清水エスパルス、FC東京で実績を積み上げてきた太田と、大学から叩き上げでプロ入りの夢を掴み、攻撃的なパスサッカーを標榜する川崎フロンターレで決定力に磨きをかけた小林。その2人はこれまでの歩みも大きく異なるが、ここで再び同じチーム、しかも日本代表でプレーする。

高校時代から大きく成長した小林と太田が若き日からのライバルとして、元チームメートとしてどういった活躍を見せるのか。23人のチームではあるが、2人が刺激し合いパフォーマンスを見せてくれることに期待せずにはいられない。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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