なぜバルサはデンベレの放出を望んでいたのか?ネイマールの“代役”の末路と求められる原点回帰。
マーケットの終盤に移籍が決まるのは、珍しくない。
今冬の移籍市場で、積極的に動いていたのがバルセロナだ。フェラン・トーレスの加入と、アダマ・トラオレのレンタルでの復帰が決定。シャビ・エルナンデス監督を満足させるために、ジョアン・ラポルタ会長とマテウ・アレマニーGD(ゼネラルディレクター)が懸命に働いた。
一方で、バルセロナはいくつか課題を抱えていた。そのうちの一つが、ウスマン・デンベレの契約延長問題である。
■契約期間と指揮官の評価
バルセロナとデンベレの契約は2022年夏までだ。「ウィングのポジションで世界最高の選手になる可能性がある」と語っていたシャビ監督の評価を受け、クラブは彼に契約延長のオファーを出していた。
だがデンベレ側が年俸アップを求め、交渉は難航した。なぜなら、バルセロナはサラリーキャップの問題を抱えているためだ。今季のバルセロナのサラリーキャップの額(9790万ユーロ/約128億円)はラ・リーガで7番目の数字となっている。
最終的にはデンベレが年俸ダウンで契約更新を行うか移籍するかの二択になった。
ピッチ内のパフォーマンスだけに目を向ければ、デンベレを称賛する声は少なくない。
「ピッチ上で、デンベレはフェノメノ(怪物)だよ。どのレベルまで辿り着けるか、それは彼次第だ。世界のベストプレーヤーの一人になれるかもしれない。彼は若くて、まだ適応している段階だ」とはリオネル・メッシの言葉だ。
また、「デンベレが現在のレベルのプレーを見せているのは喜ばしいこと。ピッチ上では予測不可能で、スピードがあり、相手にダメージを与えられる。彼のプレーを見るのは、楽しいね。クオリティが高く、世界のどのチームに移籍しても、貢献できる選手だ。フランス代表では、ほかの選手とは異なる特徴を持っている。縦に速く、攻撃に推進力をもたらしてくれる。非常に才能豊かな選手だ」と話すのはラファエル・ヴァランである。
■ネイマールの代役として
デンベレがバルセロナに加入したのは、2017年夏だ。その時、何があったのか。そう、ネイマールの移籍である。
パリ・サンジェルマンがネイマールの獲得に動いた折、世界は震撼した。2億2200万ユーロ(約286億円)という契約解除金が支払われ、パリSGがバルセロナの主力を引き抜いたのである。「200%ない」という当時のジョルディ・メストレ副会長の言葉から分かる通り、バルセロナとしては想定外の出来事だった。
当然ながら、バルセロナは混乱に陥った。そこから、パニック・バイ的にネイマールの代役確保に奔走した。デンベレ(移籍金固定額1億500万ユーロ)、フィリペ・コウチーニョ(2018年1月加入/移籍金固定額1億2000万ユーロ)、アントワーヌ・グリーズマン(2019年夏加入/契約解除金1億2000万ユーロ)を次々に獲得。だが、ネイマールの穴を埋められる選手は存在しなかった。
デンベレは、ネイマールの後釜として期待されていた。他方、彼はパニック・バイがもたらした補強だったとも言える。
バルセロナに在籍した4シーズン半で、デンベレは129試合出場31得点23アシストを記録。出場試合数は全体の50%に満たない。
度重なる負傷に苦しめられたのは確かだ。だが彼が年俸アップを求められる活躍とバルセロニスタを納得させられるパフォーマンスを披露したとは言い難い。
最終的にバルセロナはデンベレを放出することができなかった。しかしながら両者の関係は、今冬のマーケットの最終日を迎えるずっと前に、すでに壊れていたのだ。
いま、バルセロナは原点に立ち返らなければいけない。
今冬、アダマ・トラオレのバルセロナ復帰が決定した。今季終了時までのレンタルで、3000万ユーロ程度で行使可能な買い取りオプションが付けられている。ジェラール・ピケ、セスク・ファブレガス、ジョルディ・アルバ、ジェラール・デウロフェウ、エリック・ガルシア…。彼らに続いて、アダマの復帰が決まった格好だ。
2004年に8歳でバルセロナのカンテラに入団したアダマだが2014−15シーズン終了時に移籍金1000万ユーロでアストン・ヴィラに移籍した。その頃、バルセロナの攻撃を牽引していたのがMSN(メッシ/スアレス/ネイマール)である。
ネイマールの存在によりトップで居場所を見つけられなかったアダマが戻ってきて、ネイマールの代役として外から獲得してきたデンベレが構想外になった。この事実が示唆するところを、バルセロナは決して逃してはならない。