「味噌汁一杯でもいい」発酵食で自分の体を守る。 食の大切さを伝えた『腸活』の映画が教育現場にも波及
広告代理店に勤務中、大病をきっかけに、有機野菜、発酵食品、日本伝統の和食を取り入れた『食養生』を始めて30年以上のオオタヴィン監督(イーハトーヴスタジオ主宰)。
自身の経験をもとに、食の大切さを伝えた、初監督ドキュメンタリー映画『いただきます みそをつくるこどもたち』(2017年)が自主上映700回を超えるヒットに。2作目となる『いただきます ここは、発酵の楽園』が現在、公開中。「腸活エンターテインメント・ドキュメンタリー」が話題に。子どもたちの笑顔、美しい畑、みずみずしい野菜、美味しそうな食事などの映像美も評判。
感染症の専門家も出演、「腸内環境と免疫力の関係」について語った第1回、CM作りを活かした映像手法、クラウドファンディングでの映画制作についての第2回に続き、連載最終回。
撮影の苦労はゼロ。楽しくてしょうがなかった
―― 今回の映画は、農家の方だけではなくて、教育関係者や研究者、行政の方も出演されていますが。まだドキュメンタリー監督として作品が少ないという場合に、思いがあったとしてもなかなか伝わらないかもしれない。どういう言葉でオファーされたんですか。
「まず1作目を作る前に、何の当てもないけれども、映像作品を何本か作っているんですよ。例えば、セドナに旅行して、泊まったB&Bがめちゃくちゃ素敵だと、5分ぐらいの映像を作っちゃったりするんですね。趣味なんですよ」
―― 映像を撮るのが趣味で。
「この映画も全部趣味。よくインタビューで『苦労された点はどこでしょうか』と言われると、撮影に関してはゼロなんです。とにかく子どもを撮っているあの時に一番楽しんでいるのは僕だから。100%趣味で、『きゃー、かわいい』って撮っているわけですよ」
―― では、普段からいつもカメラをお持ちなんですか。
「いやいや、持ってないです。そうすると何もできなくなっちゃうから。完全に趣味だし、あと、僕、(広告代理店の時の)仕事がつらくてしょうがない時に、仕事を辞めちゃって、オーガニックファーマーになろうと何回も思ったから、ものすごく興味があるわけ。オーガニックの畑に行って自分の疑問をいろいろ聞ける、というのも趣味なんです。だから撮影はもう楽しくてしょうがないわけよ。一度も仕事だと思ったことがない」
仕事を辞めて、オーガニックファーマーになろうと何度も思った広告代理店時代
―― ドキュメンタリー映画を作るからこのカットを撮らなきゃ、じゃなくて、興味があるから、どんどん話を聞いているうちに。
「そう。で、撮ると、それを今度はすぐに編集したいわけ」
―― なるほど。すごいですね。
「撮りながら、ずっと自分の頭の中で編集してナレーションも入れているから、撮っちゃうと今度はすぐ編集したいわけですよ。あのシーンとあのシーンはこう入れて、あの音楽をこう入れるといいなあと思っているから、編集するのも結構楽しいんですね」
撮影をしながら、頭の中で編集、ナレーション、音楽を入れている
―― 編集もすべて、オオタ監督がされているんですよね。
「はい。音楽を入れて仕上げていくのも楽しいから、作り上げるまでは100%趣味なんですよ。1回もつらいことがない」
―― 撮るのは好きだけれども、編集は任せるという人もいるじゃないですか。
「映像における編集は、文章の推敲と同じなんです。そうしないと『作品』にならない」
―― だからライブ感があるというか。
「ほら、シンガーソングライターの人は自分で詩を書いて歌ってパフォーマンスするじゃないですか。それと同じですよね」
―― では、シンガーソングライターで言うと、曲を作っていたら同時に詩が浮かんできて、もう歌っちゃっているみたいな感じですか。
「そういう感じですよね」
―― それは天性のものですかね。
「それができる時代、テクノロジーの進歩というのはすごく大きいと思うんですけれども」
『ザ・ハイロウズ』の曲は、イメージしてたオーガニックファームそのもの
―― 音楽も素敵でしたね。
「この映画は、エンターテインメントだから。僕の中で、『ザ・ハイロウズ』の『日曜日よりの使者』は、イメージしているオーガニックファームそのものだ、と思ったんですよ。まず映画を作るときに自分の中で主題歌を決めるんです」
―― テーマソングを。
「それを聴きながらやっている。今回は3人のファーマーと、保育園の話と、地域はバラバラなんですが、収穫の秋に1つのシーンにぎゅっと結合されて、その時に『ザ・ハイロウズ』が、ジャーンって流れると決めていたわけです」
「これは、腸活ミュージカル」
―― それは何かふっと降りてきたんですか。
「そうではないんです、映画全体がミュージカルだと思っているんです。映画80分が音楽設計されていて、20人ぐらいのミュージシャンでオリジナル音楽を全部作っているんですよ。メイキング映像もあるんですけれども。映画は、大体60分ぐらい過ぎると、人間はちょっと飽きるというか、眠くなるんですね。そこに『ザ・ハイロウズ』を持ってきて、そこまでずっと何回かの山を短く作っていって、ラストに『雨ニモマケズ』を入れて……。という、全体80分のこれはオペラというか」
―― だから腸活エンターテインメント。
「腸活ミュージカルなんですよ。だから音楽がすごく重要なんですね」
オーガニックファームを応援したい
―― 今日も、映画に出てきた佐世保市の『菌ちゃんふぁーむ』(代表 吉田俊道)の人参を持って、上映後のトークショーに出られていましたけれども。この映画は、観客と農家の方を繋げられますね。観て終わりじゃなくて、今後、野菜を買うこともできる。
「そう。特に、今日みたいにマルシェを開催していると」
―― その場で買える。
「オーガニックファーマーをすごく応援したいんですよ。ファーマーの方って作ることで精一杯だから。オーガニックの野菜が、なぜいいのかということが伝わってないんですよね。みなさん、有機野菜のことを、農薬がかかっていないセレブの食べ物だと思っているから」
―― 思っているかもしれませんね。
「中身が全く違う」
―― 青森のリンゴ農家の木村秋則さんが11年かけて、無農薬、無肥料のリンゴ栽培に成功した『奇跡のリンゴ』は収穫4カ月経っても腐らないのが驚きでした。
「根本的に、クオリティが違うんですよね」
―― なんですけれども、やっぱりオーガニックというと、ハードルが高くなる。例えば、お金がなくて、忙しくて、そんな高いオーガニックの野菜を買えないし、買いに行きたくても売っているお店が早く閉まっちゃうから行けないとかね。
「よく言うのは、『1年間の病院の治療費と食費を足して考えてください』と。僕で言うと、もう10年間病院に行っていなくて、そうしたら治療費はゼロなわけですよ。その分食費が2倍かかっていても、結果的に安くて、気分もいい」
携帯代や家賃を削ってでもオーガニックを食べたほうがいい
―― 確かに、治療代が高くかかるくらいなら、予防代としてお金をかけたほうがいいですよね。調子が悪くなってから、あれこれやるよりも。
「僕も会社を辞めた時は本当にお金がなくて。でも、僕のようにお金がない人ほどオーガニック野菜を食べたほうがいいです。どんなにエンゲル係数が高くなっても、携帯代や家賃を削ってでも、食べるものだけは削らなければ健康でいられるわけですよ。自分の体が健康だったら仕事ができるじゃないですか」
―― もし健康じゃなかったら、仕事も遊びも趣味もできない。オオタ監督なら、映像も撮れないし、編集もできない。
「そうなんですよ。でも、人の食事のことを、あれこれ言うのは、基本的に不要なおせっかい。髪型にダメ出しされた気分になるんですね。だから、質問された場合だけ答えるようにしています。食べる時は、楽しく食べないと!」
―― 人に応援してもらえるというのもそうですよね。もし、オオタ監督がボロボロで鬼気迫る感じでいたら、「え?」っと引いちゃいますよね。それが、生き生きとしていて、この元気さだから、説得力があるじゃないですか。
「そうだね」
―― いいものは作ったけれども、頬が痩せこけたようだと。
「ガリガリですごく不健康そうだったら」
―― そうそう。食べていません、寝ていませんみたいな人が「食」の映画を作っても。
「説得力がないよね。それに、『こういう食事にしませんか』と言われても、病気はしないかもしれないけれども楽しそうじゃないなと」
―― そうすると、支援するほうもこれを広めていいのかなと疑問になりますものね。
「そうそう。やっぱりなりますよね」
「人間関係は不得意なほう。空気を読むのがすごく下手だった」
―― 今回の映画は多くの方が出演もされているし、クラウドファンディングでもたくさんの支援を受けている。人のつながりというので、何か大事にされていることはありますか。
「何でしょうね。いや、人間関係は不得意なほうなんで」
―― そうなんですか。
「そうなんですよね」
―― それは人見知りということで、ですか。
「どうなんですかね。空気読むのがすごく下手だったのね。だから、今は逆に、人より気をつけるようになったんですけれども」
―― ちょっと、アーティスト志向だったとか。
「ああ、そうそう、そうですね。本当に昔は。30歳は『とがったナイフ』だったんで(笑)」
―― じゃあちょうど、腸活を始めた頃。ということは、腸活で丸くなったと言ってもいいんじゃないですか。
「それはやっぱりあるかもしれないですね」
―― それまでは、自分を守るために、他を排除するというような感じだったのが、壁がなくなったとか。
「そう、とにかく自分の感性を何よりも優先したい、という、とってもわがままな人でした」
―― なるほど。それが今は、多くの人を受け入れて、受け入れられるようになって、無理がなくなっていったということですか。
「ああ、そうかもしれないですね」
―― 今回、専門家の方たちも協力されているじゃないですか。
「研究者の方とか」
―― 感染症の専門家や農学生命科学の専門家や。そういう方たちのお話をお聞きしても説得力がある。だけれども、野菜や畑の映像で感覚的にすーっと入ってくる。幸せな気分にもなるし、勉強にもなるという、両方のバランスが素晴らしいなと思ったんですけれども。
「独りよがりだと、どんなにいいものを作ってもやっぱり。例えば、新聞にも取り上げていただいたのもやっぱりきちんとしたエビデンスがあるからですよね」
科学的な根拠もあるから説得力がある
―― 調査結果やデータも示されていますしね。
「ええ。そうじゃないとやっぱり思い込みだけでは作れないんで。特に自然農の分野は感覚的になり過ぎるところがあって。例えば、『奇跡のリンゴ』のことも、木村秋則さんの畑を15年間ずっと調査している弘前大学の杉山修一教授と木村さんと、二人セットで初めて、説得力のある映画になるなと思ったんですね」
―― そうですよね。すごく説得力がありました。
「科学的な根拠があるから、りんご畑に雑草を生やすこと、農薬を使わないということが、実は科学的にも、微生物にとっても、いいことだったんだという裏付けができる」
―― 土の中の土壌菌を育てることがまずは大切ということですよね。
「はい」
―― 女性は映像を見ただけで泣いちゃう。でも男性はちゃんとした分析がないと納得いかないと。
「そうなんです」
―― その両方ができたということですよね。素晴らしいですね。
―― 冒頭のシーン、山梨県甲府市の『みいづ保育園』の子どもたちの様子が印象的ですよね。自然農の畑や田んぼで野菜を育てていて、笑顔がキラキラ輝いている。畑保育も素晴らしい。今後、全国の小学校や幼稚園、保育園で上映会が広がっていきそうですね。
「前作もそうですし、きっと自主上映公開になれば、全国の保育園でも見ていただけるかなと思うんですけれどもね」
―― 教育現場というところで、今回映画の中で、千葉県いすみ市の全ての公立小中学校がオーガニック給食になったということが衝撃的で。すごい動きだなあと。この取り組みは、今後広がっていくんじゃないかなと思うんですが。
「そうですね。まず、2021年から、韓国では、ソウル市内のすべての小中高1400校がオーガニック給食を無償で実施されることが決定しているんです」
―― すべてというのが、すごいですね。
「むちゃくちゃすごいですよ。何でこれをもっと報道しないのかなと思うくらい」
千葉県いすみ市の全ての公立小中学校がオーガニック給食
―― 素晴らしい取り組みですよね。しかも無償で。
「そう。フランスも今そうしようとしている。これは世界的な潮流で、今、世田谷区とかでも東京で初めてオーガニック給食を、という運動が盛り上がっているので、とにかくこの映画を好きなように使ってもらって、1校でもいいからオーガニック給食の比率を高めていってほしいなというふうに思いますよね」
―― トークショーでも話されていましたけれども、「保育園であれだけオーガニック給食、畑教育をしても、小学校に行ってしまったらどうなるのかな」と皆さんに言われると。
「そうそう。それとよく言われるのは、『本当に子どもがキラキラして素敵だったんだけれども、その後どうなっていますか』と言われると答えられないというか。小学校に行くと、ひどいことになっているんじゃないかと。あんなに自由に動いていた子どもたちが、いきなり6歳になったからといって、先生には申し訳ないけれども、あんまり面白くない、興味がないことを、1時間も聞き続けるなんてそもそも無理なんですよ」
「オオタ君はすごく問題がある」と小学校の時に言われたけれども
―― 確かに、そうでなくても、小学校に入ると、生活が一変しますよね。
「僕は小学校6年の三者面談の時に、母親と僕と担任がいて、担任の先生が『いや、オオタ君はすごく問題があるお子さんだから、多分普通の中学校には行かないほうがいいと思いますよ』と言われたんです。今で言うと、発達障害、多動症なんです。僕は国語と美術しか興味がないから、じっと座っていられないわけですよ。小学校の算数も、嫌いなの。今のこの映画の仕事のために理数系が必要だったの? って。国語と美術、この2つがあればいいから、今までの膨大な時間、数学とか地学とか、あれは何だったのかなと」
―― 問題があると言われていたけれども、こうして素晴らしい映画を作られている。
「みいづ保育園の園長先生の娘さんも映画に出ているんですけれども。卒園のタイミングで、『こんなにいい保育園で、小学校はどうされるんですか』って、『いや、山梨にすごくいい小学校があるんですよ』といろいろ話をして、調べたら、とてつもなく素晴らしい小学校があったんです。それを、3作目のドキュメンタリーにしようと思っているんです」
3作目のドキュメンタリーのテーマは、『教育』
―― では、3作目の映画のテーマは、「学校」。
「今度は『教育』がテーマなんですが、要するに、僕自身の体験があるんですね。当時の僕は、今だったら発達障害というレッテルを貼られてとんでもないことになっていたんだけれども。今、取材している小学校は、テストがない、通知表がない、偏差値がない。子どもたちは4つのプロジェクトがあって、『料理』、『むかしの暮らし』、『クラフト』、『アート』『演劇』この5部門から好きなものを選べばいいんです」
―― へえ、面白そう。それは公立の学校ですか。
「私立なんだけれども、文科省公認の1条校なんです。だから、そこは全く公立と同じ資格とクオリティというか、国がちゃんと認めているところなんです」
―― それを今、撮影されていて、いつ公開なんですか。
「来年ですかね」
―― やっぱり興味がどんどん生まれてきて。
「その学校に行ったらあまりにも素晴らしくて。もともと僕は学校の先生になりたかったんですよ」
―― そうなんですか。
「一時、真剣に教育大学に進むのを考えていて、教育関係の本をすごく読んでいて、シュタイナー教育の先生になりたいなと思った時期もあったので、こんな素晴らしい学校が現実に日本に存在するんだと思って」
興味があれば、子どもは自然と学んでいく
―― それは興味深い。ぜひ、知りたいですね。
「ええ。で、とにかくその5つから子どもたちが『学ぶ内容』も、『先生』も毎年、自由に選んで、9年間ずっとそれをやるんです。教科書も宿題も何にもない。なんだけれども、いろんなことを自然に学んでいくわけですよ。おいしい麺を作るためには、いろんな小麦粉と『かんすい』の比率が要るから、自然に分数になるんだけれども、おいしい麺を作りたいという目標のために自主的に分数を勉強する。だから全然違うんですよ。子どもたちの熱意というか、真剣度が」
―― 興味があるから。目的もはっきりしているし。
「そう。じゃあこの麺は一体どこから、中国から来たのか、日本でどういうふうに伝わって、江戸時代はどうだったのかと歴史の勉強にもなるわけ」
―― トークショーでも言われていましたが、一緒に取材に行かれた茂木健一郎さんが「偏差値が60、70、80とか言っている場合じゃなくて、やがてAIの偏差値が1,000という時代が来るから、記憶とか、計算とかというのはもうね」と。
「だってスマホが1台あればそれで済む。それを何十年かけてやったって何の意味もない」
―― だから、違う能力というか、才能を伸ばす必要が出てきて。こんなにも世の中に不登校が社会問題になっているにもかかわらず、なかなか対策的には。
「その学校にも、いわゆる発達障害と言われた子が何人も来ていますけれども、自分でやりたいことを選び、拘束されないと、才能がどんどん伸びてくる。すごく分かるんですよ。感受性が鋭い子が全然やりたくないことをずっと座らされて聞かされ続けるというのは苦痛以外の何ものでもなくて」
「普通の中学校には行かないほうがいい」と言われたその後は
―― オオタ監督自身の体験でね。ちなみに、普通の中学校には「行かないほうがいい」と三者面談で言われて、その後どうなったんですか。
「その後、これがまた僕、可哀想なことに中学になったらガリ勉になっちゃったんですよ」
―― あら。
「当時、小学校で下から数えたほうがいいぐらいの成績だったのが、そんなことを言われちゃったもんだから、『俺、勉強しなきゃいけないんだ。俺、普通じゃない人間だから』と思って、急にめちゃくちゃ真面目になって、そうしたら今度はノイローゼ気味に一生懸命勉強をやって。成績は本当に上のほうになったんだけれども。結局無駄なストレスと無駄な時間をかけて」
―― 頑張ったんですね。
「そう。当時、学校の先生になろうと思って、国立の教育大学に入れるような高校に入ろうということで勉強を急にしだして。母親はびっくりしたんでしょうけれどもね。いきなり下から5番目ぐらいが上から5番目になっちゃったんでね」
―― では、いろんなことができるポテンシャルはあったんですね。すごい。
「まああったのかもしれないですけれども、今から思うと、当時の俺、ものすごく可哀想。あんなにやりたくないことを一生懸命やってね」
―― でも最終的に、広告代理店に入られて、スキルも学んで、キャリアもできて、それで今、やりたいことがやれているという。
「そこまでが長げーし。だって、監督デビューが55歳とかだからね。だから、あの時にもっとこういう小学校に入っていれば、もう私は20歳ぐらいでデビューできていたかも(笑)」
AI時代に生き残るために
―― では、次世代に期待をする、ということで。
「次世代の子どもには、もっと笑っていてほしい」
―― サドベリースクールとか、結構海外とかでもいろいろあるし。先生がいなくて、自分たちで学んでいくという。
「結局、文科省はAI時代に対して膨大な教育改革案を作って、何にもできなかったんですよね。こんな具体的な例があるのに」
―― そうすると今度は保護者の方が、自分たちで食べるものも選ぶように、教育も選ぶという時代が出てくるでしょうね。
「そうしない限りAI時代を生き残れないですよね。こんな意味のない偏差値で競争させて、何の役にもたたないことを延々と記憶して計算し続けている人間が増えたって。それは高度経済成長時代で、日本人のほとんどをサラリーマンにして、高性能な自動車をたくさん作るのだという時代はそれで良かったんだけれども、もう根底から変わっていくわけだから」
―― だって世の中が、今回の新型コロナウィルスもそうだし、地震も洪水も、サバイバル時代というか、予定調和に生きられない時代がやってきたので、どれだけ自分で発想を変えていくかということですものね。本当に、『食』と『教育』って、すごく大事なことをテーマにされているなと思うので。
「でも、それは両方とも自分の個人的な経験なんですよね。最初にそういうテーマがあって、映画を作ろうということじゃないんですよね」
―― 次回作にもクラウドファンディングで支援を募られるんですか。
「まだ、未定なんですが。クラウドファンディングというのは、非常にいいことを言っていただいた方がいて、『クラウドファンディングというのはお金集めじゃないんだよ』と。『未来の映画のファンを作る仕事なんだよ』と言ってくれて、それで初めてやってもいいかなと思ったんですね」
―― 支援したい人がこの映画を広めたいと思うし、みんなで作っている感じがありますよね。
「だから、次もそういう仲間作りをしたいなと思っていますね」
味噌にお湯を注ぐだけで腸活ができる
―― 最後に。今回2作続けて、『いただきます』という映画で、『食』をテーマにされました。でも、これを読まれている方の中で、20代の一人暮らしの方や、30代、40代の忙しいビジネスマンの方だと、発酵食、オーガニックな食事を、と言っても、料理を作る暇もゆっくり食べる時間もない。買い物に行こうと思ってもスーパーは早く閉まっている。ネットで買っても受け取れないくらいの忙しい生活をしていたり。お子さんを共働きで育てていて、ましてや、シングルマザーで育てていて、時短の料理は作れても、とてもじゃないけど、手作り味噌なんて無理という人がおられるかもしれない。どうしたらいいですかね。
「インスタント生味噌が一番いいと思います。インスタントコーヒーと変わらないから」
―― では、生味噌をまず買ってきて。
「はい。そこだけはどこかで買わなきゃいけないんだけれども。それをスプーン1杯すくって、お湯を注ぐだけでいい」
―― それで、腸活ができてしまう。そこに、乾燥わかめやお麩や海苔を入れたりして、カスタマイズしてもいいですよね。コーヒーカップにぽんと入れて。
「そうそう。ぽんと入れてかつお節とか入れてもいい。それを会社に持っていけばいいわけ」
―― そうすると、どういうふうにいいんですかね。
「生きた酵母菌が体の中に入ってきますから、DNA的にも日本人に最も合う菌を自分の体の中に入れていくということで、腸内環境が良くなることによって、やっぱり免疫力が高くなる。少なくとも、映画に出ていた保育園の子どもたちは真冬に裸足で短パン、半袖で、インフルエンザの学級閉鎖はゼロなわけですよ」
―― それはすごいですね。
「それも1日1食あの食事をすればいい。だからやっぱり1杯の生味噌、インスタント味噌汁だって、飲まないよりもはるかにいいと思うんですよね」
―― だって、わざわざ遠くの国に買いに行かなきゃいけないわけではなく、すぐに手に入る、日本の伝統的な食事、和食だから。
「僕も広告代理店にいた時は、超忙しかったので。過労死やうつ病になる人もいましたから」
―― 寝ていないし、まともに食べていない。
「ええ。ストレスもすごいし、休みもないし。なんだけれども、やっぱり、忙しい人ほど体が資本なわけなので」
―― その時に、もし生味噌を食べていたら、またちょっと違ったかもしれないですね。
「いや、その時からもう、『食養生』や『ファスティング』をやり始めていたんですね。会社に勤めながら、腸にいいこと、腸を休めることもしていました。だから、キープできていたんです。その経験があるから、忙しい人ほど自分の体の最低限のメンテナンスだけはしないと続けられない、とわかるんです」
忙しい人ほど、『食』を大事にしてほしい
―― 不思議なもので、忙しくてクタクタの時ほど、ジャンクフードを食べちゃうんですよね。
「食べちゃいますよね。それはストレス解消だからね。ジャンクフードを食べてもいいんだけれども、プラス、基本食というか、予防食みたいなことをしないと、ジャンクフードで脳は癒されても、体が、腸が、悲鳴を上げちゃうわけじゃないですか。結果的に病気になっちゃいますよね。だから忙しい人ほど、『食』だけは何とかしなきゃいけないんですよ。生命線なんですよね」
―― 監督の映画を見ると、もう味噌汁を飲みたくてしょうがなくなる。味噌汁って、やっぱり安心感がありますね。ほっとしますね。
「そうだよね、日本人のソウルフードだからね」
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