ロペテギとモンチがタッグを結成。新計画を掲げるセビージャは過去を払拭できるのか。
「ロペテギは豊富なフットボールの知識を備えている。そして、育成年代に携わった経験がある。何より、彼には成功への意欲がある」
セビージャでスポーツディレクターを務めるモンチは、フレン・ロペテギ新監督の就任会見で、招聘の理由について説明した。成功への意欲。それが、セビージャとロペテギ監督を繋ぐものだった。
■歓迎されない新監督
セビージャはロペテギ監督と2022年までの契約を結んだ。モンチが指揮官と3年以上の契約を結ぶのは初めてのことだ。
近年、ホルヘ・サンパオリ(2年契約)、ウナイ・エメリ(2年契約)、マルセリーノ・ガルシア・トラル(1年+1年延長オプション)らはいずれも短期間での成果を求められていた。
ただ、セビジスタはロペテギ監督の就任を歓迎していない。マドリディスタであり、加えてロシア・ワールドカップ直前にレアル・マドリーと契約を結び、スペイン代表の監督の座を追われた彼の過去がネックとなっている。
一方でモンチは2018-19シーズン終盤にローマのスポーツディレクターを辞してセビージャへの復帰を決めた。思えば、彼が去ってから、この2シーズンのセビージャは混沌に襲われていた。
2017-18シーズン(リーガエスパニョーラ7位)、18-19シーズン(6位)と立て続けにチャンピオンズリーグ出場権を逃した。エドゥアルド・ベリッソ、エルネスト・マルクッチ、ヴィンツェオ・モンテッラ、ホアキン・カパロス、パブロ・マチンとその期間に5人の監督がベンチに座った。
軸が定まらないまま、時間だけが過ぎていた。
■FWの不振と疲労の蓄積
2018-19シーズンにおいては、ヨーロッパリーグでスラヴィア・プラハ(チェコ)を相手に不覚を取りベスト16敗退に追い込まれた。コパ・デル・レイでは準々決勝でバルセロナに敗れたが、リーガエスパニョーラに関しては6位でフィニッシュ。EL出場権獲得という最低限の目標を果たした。
シーズン前半戦は好調だった。ウィサム・ベン・イェデルとアンドレ・シウバの2トップが爆発。パブロ・マチン元監督の3-1-4-2は完璧に機能していた。
計算外だったのはA・シウバの極度の不振だ。リーガ開幕から7試合で7得点を挙げ、彼はセビジスタの新たなヒーローになるかと思われた。だが、以降16試合で2得点と絶不調に陥る。その後、この夏に行われるネイションズカップに臨むポルトガル代表の試合を見越し、戦列復帰を先延ばしにしてクラブの反感を買った。セビージャは3800万ユーロ(約46億円)の買い取りオプションを行使しない考えで、レンタルバックでミランに戻る運びとなった。
また、疲労の蓄積がセビージャを苦しめた。全公式戦で、61試合を戦った。シーズン終盤まで3冠の可能性を残していたバルセロナでさえ、試合数は60試合だった。アレイシス・ビダル、マキシム・ゴナロン、ノリートが次々と負傷離脱を強いられ、中盤の選手たちに休養を与えられず、悪循環に陥った。
■移籍問題
新たなプロジェクトを前に、懸念されるのがエベル・バネガとパブロ・サラビアの移籍問題である。
バネガはセビージャの中核を担ってきた。18-19シーズン、バネガのボール奪取数(290回)はリーガのランキングで1位の数字だった。ロドリゴ・エルナンデス(アトレティコ・マドリー/280回)、ジェラール・ピケ(バルセロナ/277回)、ダニ・パレホ(バレンシア/270回)を抑えて、である。
そのバネガに、ボカ・ジュニアーズが関心を寄せている。2020年夏までセビージャとの契約を残しているバネガに対して、移籍金400万ユーロ(約5億円)を準備しているようだ。バネガはリーガ第35節ジローナ戦(0-1)で悪質なプレーによりレッドカードをもらい、それが原因でクラブ側から処分が検討されていた。そういった事情が相まって、この夏の移籍が騒がれている。
一方、サラビアはリーガで13アシストを記録。ジョニー(アラベス/10アシスト)とサンティ・カソルラ(ビジャレアル/10アシスト)を上回り、リオネル・メッシ(バルセロナ/13アシスト)と並んでアシスト王になった。バネガと同様に2020年夏まで契約を残しているサラビアだが、契約解除金は1800万ユーロ(約25億円)に設定されている。決して、高額ではない。パリ・サンジェルマンが彼を狙っているといわれている。
主力を残留させながら、ロペテギ監督を満足させる補強を行わなければいけない。ローマから復帰したばかりで、モンチには大きな仕事が託されている。