「カリマ」に乗ってサハラ砂漠の砂カナリア諸島に
小鳥の「カナリア」の語源で、アフリカ大陸の北西に位置するスペイン・カナリア諸島。この島は、冬の避寒地として欧州の観光客などに人気のリゾートですが、22日以降サハラ砂漠から大量の砂が飛来しています。
ここ20年から30年の間で最悪の規模とも言われ、衛星写真でもその様子をくっきりと見ることができます。
視界不良により多数の航空便が欠航し、観光客は足止めをくらったようです。また秒速45メートルの温かい強風が吹いたため山火事が発生しました。さらに、冬にもかかわらず30℃以上まで気温が上昇して、月間最高気温記録を更新したところもありました。
「カリマ」
この砂嵐と高温をもたらした原因は、何だったのでしょうか。
それは、カナリア諸島付近に居座っていた低気圧です。この低気圧の中心に向かって吹く風が、ちょうどアフリカ西部からカナリア諸島に砂を運んだというわけです。
このサハラ砂漠から砂を運んできた東寄りの暖かい風を、現地では「カリマ(Calima)」と呼ぶそうです。カリマとは、スペイン語で「煙霧(えんむ)」を意味し、主に冬季に発生し、時に数日間にわたって吹き続けます。
今回の砂嵐も、26日(水)頃まで続くとみられています。
砂嵐の恵み
カリマは黄砂のように、呼吸器疾患といった健康被害や、視界不良による交通障害をもたらします。
しかし一方で良い面もあるようです。
まず、窒素、リン、鉄といったミネラル分を海に供給するので、海の生態系を豊かにします。2011年4月にはサハラ砂漠の砂がイギリス周辺まで飛来したおかげで、北東大西洋でプランクトンの大量発生を起こしました。その様子は衛星画像にも写るほどでした。
次に、空中に舞い上げられた砂が、太陽光を反射し海面の温度を下げることから、ハリケーンの発達を抑制する効果もあるのだそうです。ある研究では、大規模な砂嵐が起きた2005~2006年に、大西洋の海水温が0.4℃も低下したといいます。
サハラ砂漠から魚の骨
ところで今からは想像できませんが、サハラ砂漠はその昔、水の豊富な場所であったようです。
今から約1万~4600年前に人が食べた跡と見られる大量の魚の骨が見つかったという論文が19日(水)に発表されました。今はアフリカ大陸の3分の1を占める巨大な砂漠ですが、今後気温上昇に伴って緑化していくという説もあるそうです。