車内で日本酒の利き酒が!「越乃shu*kura」を徹底レポート
「新潟デスティネーションキャンペーン」に合わせて登場した、JR東日本のイベント列車「越乃shu*kura」。車内で日本酒の呑みくらべができるという、これまでにないコンセプトで誕生したこの列車を、今回はご紹介しよう。
○見た目はフツー、でも中身で勝負!
午前9時過ぎ、上越線高田駅。北陸新幹線の金沢延伸開業に合わせて第三セクター「えちごトキめき鉄道」へ移管されるこの駅に、「越乃shu*kura」が姿を現した。紺色と白色に塗り分けられた車両は、キハ40系を改造した3両編成。前面はヘッドライトがLED化された程度と、いたって普通の顔立ちだ。だが、上下に大きく広げられた側窓や、ドア横に描かれたロゴマークに期待が高まる。
さっそく車内へ入ってみよう。座席があるのは1号車と3号車で、合計70席が設けられている。1号車はJR東日本の旅行商品「びゅう」専用車両で、2人席・4人席で構成。手前海側には、窓に向かって腰掛けるカウンタータイプの「展望ペアシート」が、山側は1段高くなったフロアに同じく海側へ向けて座席を配置した「くつろぎペアシート」が並ぶ。続いて4人掛けの「らくらくボックスシート」があり、一番奥は定員8名のフリースペースとなっている。食をテーマにした列車らしく、どの席も大きなテーブルが設けられていて、カップルや友人同士で酒や肴を楽しむのにも便利だ。
3号車は一般用となっており、「みどりの窓口」等で指定席券を購入すれば誰でも乗車が可能。車内は通常のリクライニングシートが並んでいる。「通常」と言ってもゆったりしたシートで、座席間隔も拡げられており、キャリーバッグなどを置いても余裕の広さだ。座席に座ると、肘掛けの辺りから天井に届くくらいまである窓越しに、「日本一海に近い駅」として知られる青海川駅をはじめ、日本海に面した絶景を眺めることができる。この座席から、のんびりといつまでも景色を眺めていたい・・・。
○「越乃shu*kura」のキモは2号車にあり!
・・・というわけにはいかないのだ、この列車は。「越乃shu*kura」最大の特徴は、2号車である。ここにはサービスカウンターとイベントスペースを設置。サービスカウンター「蔵守」では、新潟が誇る地酒とおつまみが取り揃えられている。地酒は常時5種類が用意され(適宜入れ替えられているとのこと)、1杯100円からオーダー可能。さすがは地酒王国・新潟、どのお酒も美味しく、それでいて酒蔵ごとの個性が見られて楽しい。お酒はプラスチックの使い捨てカップで提供されるが、ここはお土産品として販売されている特製おちょこでエコに楽しむのも良い。「越乃shu*kura」グッズはこの他にもコースターやタオルなどがあるほか、酒蔵とタイアップしたオリジナルの大吟醸酒も並ぶ。
さて、サービスカウンターで好みの酒とつまみを手に入れたら、その横にあるイベントスペースへ。窓際にはカウンターテーブルが設けられ、足下まである窓から広がる大パノラマも肴に、日本酒が味わえる。中央に設置された、酒樽をモチーフにしたテーブルを囲んでグループでワイワイやるのも良い。そしてここでは、様々なイベントも開催される。筆者が乗車した日は、ジャズの生演奏と蔵元による試飲イベントが行われていた。絶景を眺めながら美味い地酒、そして耳にはジャズの響きと心地よいジョイント音・・・。まさに至福の時である。ジャズ生演奏は3回行われ、その合間に試飲イベントと、座席に戻るのがもったいないくらい。いや、戻らなければ戻らないで、客席でお酒を味わうというもう一つの楽しみ方ができず、それももったいない・・・。さんざん悩みつつ列車を堪能しているうちに、あっという間に3時間が経ち、終着駅・十日町へ。「もっとのんびり走ってよ!」という心の叫びを胸に、真っ昼間からほろ酔い気分で駅へ降り立ったのであった。
冒頭に書いた通り、新潟デスティネーションキャンペーンの一環として誕生した「越乃shu*kura」。期間中の評判も上々で、キャンペーン終了後の7月以降も運転継続が決定した。運転区間も、これまでの高田~十日町・越後湯沢に加え、新潟への運転も予定されている。一見普通の外観とは裏腹に、とんでもない魅力を詰め込んだ「越乃shu*kura」、一乗の価値アリだ。