「うどんタクシー」に商標権の効力は及ぶか?
「”うどんタクシー”名称やめて…商標権持つバス会社がタクシー会社提訴」というニュースがありました。
琴平バスの「うどんタクシー」の商標登録(登録4789305号)は、有効に存続しており、指定役務(サービス)に「車両による輸送」や「旅行者の案内」を含みます。空港タクシー側は同じ名称を使って、「車両による輸送」や「旅行者の案内」のサービスを提供しているので、商標権を侵害していることは明らかに思えますが、実はそう単純ではありません。
商標法26条には以下の規定があります。
つまり、サービスの特性の「そのまんま」を表している場合には商標権は及びません。空港タクシー側の反論「『うどんタクシー』に商標権の効力は及ばない」はこの条文を念頭においているものと思われます。
結局、論点は、タクシーの利用者が「うどんタクシー」という商標を見た時に「うどん」というブランドのタクシーと認識するか(「日の丸タクシー」という商標を見た時に「日の丸」というブランドのタクシーだなと認識するのと同じ)、「うどん店を案内してくれるタクシー」とそのまんまの意味で認識するかという点に帰着します。たとえば、仮に空港タクシー側の名称が「うどん案内タクシー」だったとしたならばほぼ確実に商標権の効力は及ばない(琴平バス側が「うどんタクシー」と類似と主張しても通らない)のですが、「うどんタクシー」だとなかなか微妙なところがあります(自分は香川県に観光に行ったことはないのでこの辺の感覚についてはコメントしにくいです)。
しかし、たとえば、「燕背脂ラーメンタクシー」という名称のタクシーが存在するようで、「<食べ物>+タクシー」というパターン名称が、その食べ物の名店を案内するタクシーサービスを表すという使い方はある程度一般的になっているのかもしれません。
一般的に言って、指定商品やサービスの「そのまんま」に近い商標は一見強力な権利のように見えますが、記述的に過ぎないとして無効にされたり(なお、「うどんタクシー」は登録から5年過ぎているので基本的には無効にできません)、26条により他者の使用に対して権利が及ばない可能性が出てくるので一長一短というところがあります。