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城 南海 10周年記念ツアーで見せた、これまでと“これから” 「ずっと歌い続けていきたい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ポニーキャニオンアーティスツ

2019年1月にデビュー10周年を迎えた城 南海。現在その集大成とでもいうべき『ウタアシビ 10周年記念ツアー』を、東京を皮切りに、名古屋、大阪、札幌、仙台、福岡で行っている。11月23日、その大阪公演(サンケイホールブリーゼ)を観た。そこで感じたのは10年間、真摯に歌と言葉と向き合い、思いを紡いできたからこそ生まれる、その歌の“表情”の鮮やかさと豊かさだった。

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開演前、小鳥のさえずりが客席に響き渡り、奄美の森から清々しい空気が流れ込んで来るような、心地いい雰囲気に包まれる。オープニングナンバーは2009年1月7日に発売した記念すべきデビュー曲「アイツムギ」。まずはこの10年を辿る旅が始まる。そして三日月の月明かりに照らされながら歌う「月と月」。しっとりと、そしてどこまでも伸びる心地いい歌声に、客席が引き込まれていく。「サンサーラ」では強い生命力を感じさせてくれる力強さと、柔らかさと、抑揚豊かな歌に心を掴まれる。

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「今日は10年間の感謝の気持ちと、これまでの城、そして新しい城 南海をお届けします」と語り、三線を手にし「大好きな先輩・古謝美佐子さんのこの曲をオーディションで歌い、関係者の方に声をかけられ、デビューのきっかけになりました。16歳の時です」と語り、「童神~私の宝物~」を披露。グイン(奄美独特の、コブシを効かせたファルセットの一種)を駆使した歌声が奄美の薫りを運んでくる。続くカバーコーナーはABBAの「Dancing Queen」から。原曲は壮大でキラキラしたアレンジから、城はアコースティックギターだけで1番を歌い、バンドが重なってくるというアレンジで、この曲のメロディの素晴らしさを、城の歌が改めてクローズアップしてくれる。「『THE カラオケ★バトル』での思い出の曲です」と披露した中村中の「友達の詩」、そして中島みゆき「糸」のカバーでは、ダイナミックスさと繊細さを感じさせてくれる、圧倒的な表現力を見せてくれた。

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「晩秋」「遠い約束」を情感豊かに歌い上げると、「ここからはニュー城 南海です」と、まずは10月16日から配信がスタートしている新曲のロックナンバー「ONE」を披露。この曲が主題歌になっているテレビ東京系のドラマ『特命刑事 カクホの女2』に、わずかな時間ではあったが、教師役として出演。女優デビューを果たしたことを報告。12月18日に発売されるアルバム『one』から「クレムツ」を初披露し、続いてデビュー曲「アイツムギ」の作者・川村結花が新たに書き下ろしたジャジーなナンバー「行かないで」では、艶のある大人の色気を感じさせてくれる歌を聴かせてくれた。このアルバムについて「リアルな言葉、等身大の言葉が散りばめられているので、是非聴いてください」と、現在と未来に対する素直な思いがこもっていることを、教えてくれた。「アカツキ」では客席全体が手を揺らし、歌い、会場が一体化。「これからもずっと歌い続けていきたい」と改めて力強く語り「花~すべての人の心に花を~」を披露。ラストはサビの部分をノンマイク、アカペラで歌い美しい声を、会場の隅々にまで響き渡せていた。

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アンコールは「西郷どん紀行 ~奄美大島・沖永良部島編~」を、歌詞に込められた深い思いをひと言ひと言伝えようと歌う。広く、豊かで、せつなさも感じさせてくれる。そして「手つかずの自然が残る奄美にもっと来て欲しい。奄美の風景を楽しんで欲しい」と、城が初めて奄美の言葉で作詞・作曲を手がけた「祈りうた~トウトガナシ~」を三味線を弾きながら歌うと、城の美しく清らかなで、温もりのある声が、奄美の手つかずの自然の風景を映し出してくれるような感覚になる。

以前のインタビューで「これまで積み重ねてきたものを大切にしながら、色々な殻を破っていきたい。今まで積み重ねてきたものがあるからそこできることも、たくさんあると思う」と語っていた城。様々なスタイルのライヴに挑戦したり、ニューアルバムでは新たな一面を見せてくれる歌を聴かせてくれている。これまで積み重ねてきたものが、歌の“表情”となって、深い感動を与えてくれるともに、さらに進化した歌を聴くことができたライヴだった。

城 南海 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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