赤道直下のケニアに「雪」が降って住民大興奮! それなのに…
去年の1月、沖縄本島に史上初めて雪が降ったとき、住民たちが大はしゃぎしていたというツイートを見ましたが、4日(火)同じようなことが、赤道直下の国ケニアで起きました。熱帯のこの国に「雪」が降って、一面真っ白な世界が広がり、人々が大興奮したというのです。(下の写真がその時の様子↓)
しかしケニアの人の見た、この「雪」というのは、実は「雹」でした。翌日気象局から公表された文書には、このようなことが書かれてありました。
「昨日、多くの住民たちが雪だと言っていたものの正体は、雹です。ニャフルル(地名)等では、しばしば雹が数時間降り続き、積もることがあります。」
あっさりとした文面で、特段珍しくもないと書かれており、大喜びした住民の方々に気の毒さを覚えるほどです。
(ケニア気象局の発表↓)
雹と雪の違い
ではそもそも、雹と雪の違いは何でしょうか。
形状
わかりやすいのは形状の違いです。
雪の結晶は、自然の芸術作品ともいわれるように、その多くが規則正しく美しい形をしていますが、雹は丸っこい塊です。大きくなればなるほどいびつになっていきますが、縦に切ってみると、年輪かバラの花のようにきれいな断面をしています。
でき方
その形状の違いは、発生過程の違いから来ています。
雪は、雲の中の水蒸気が、空気中に漂うほこりなどの核にくっ付いて氷の結晶となり、それが溶けずに降ってくるものをいいます。
一方、雹は雷を伴うような、発達した積乱雲の中でできます。氷点下でも凍らない水滴(過冷却水滴)が核にくっ付いて氷の塊になり、それが雲の中を上下に何度もかき混ぜられることで大きくなって、落ちてくるものをいいます。
つまり、雪は寒い時期に、雹は雲が大きく発達するような暑い時期に主に発生します。
ただ熱帯の地域は非常に暖かいので、雹でも地面につく前に溶けてしまいます。2012年5月に赤道に近いフィリピンのセブ島で雹が報告されていますが、熱帯ではそう見られるものではありません。
ケニアの雹は珍しくない
ではなぜ、気象局は、今回のケニアの雹がそれほど珍しくないと言ったのでしょうか。
それは、雹が降ったニャフルルという場所が、標高2,300メートルに位置する高地だったからです。文献によると、ケニアの山間部などでは雹がよく観測されることがあって、年に114日の雹が降った場所もあるようです。
それもそのはず、ケニアは雷の多発地帯で、落雷による被害者の数も世界で最も多い国の一つなのです。
参考文献:”The Meteorology and Climate of Tropical Africa” (Marcel Leroux著)