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Amazonが開発する「レジ精算不要のコンビニ」とは

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米ウォールストリート・ジャーナルの報道によると、米アマゾン・ドットコムがまもなく一般公開する予定の、レジ精算不要の実店舗は、システムが機能不全に陥ることが分かり、オープン時期が遅れるもようだという。

レジ不要の最先端店舗

この店舗は「Amazon Go」と言い、同社が昨年12月に発表していたもの。現在は同社の従業員限定で試験営業しているが、ウォールストリート・ジャーナルによるとアマゾンはこれを3月末にオープンさせる予定だった。

上述のとおりAmazon Goの店内には、レジがなく、あるのは、駅の改札口のようなチェックインレーンのみ(以下の動画参照)。顧客は専用アプリが入った自分のスマートフォンをこれにかざして、入店する。あとは買いたいものを棚から取って、そのまま店から出ればよい。

アマゾンによると、この店舗では自動運転車にも利用されている、コンピュータビジョン、ディープラーニング・アルゴリズム、センサーフュージョンといった技術を採用している。

これらの技術が、どの買い物客がどの商品を手に取ったかを認識し、その客の仮想ショッピングカートに商品を入れる。また客が手に取ったものを棚に戻した場合、ショッピングカートから商品を削除する。

客は商品をそのまま自分のバッグに入れてもかまわない。こうして必要なものを手にした客は、先のチェックインレーンを通って店から出る。すると代金は客のアマゾンアカウントで精算される。

技術上の問題に直面

ところが、今回のウォールストリート・ジャーナルの報道によると、Amazon Goでは、一度に20人以上の顧客が店に入ると、システムが顧客の動きを追えなくなる。また、棚の所定の場所から別の場所に動かされた商品は、追跡が困難になるのだという。

現在のところ、顧客が少人数の場合や、顧客の動作が遅い場合、システムは不具合なく動作する。だがこの店ではもうしばらく、これまでどおり従業員を配置し、システムの動作を監視する必要があると同紙は伝えている。

アマゾンは、本社がある米ワシントン州シアトルで、Amazon Goを一般公開することを計画している。その店舗面積は約1800平方フィート(約50坪)と、日本のコンビニエンストアよりも少し広い。

店内では、シェフがその場で調理した朝・昼・夕食、スナック類のほか、パン、チーズ、チョコレートなどの食品や飲料を販売する。しかし、ウォールストリート・ジャーナルによると、システムの不具合にアマゾンが対処している現状では、オープンがいつになるかは分からない状況だという。

10軒目となる書籍販売の実店舗

一方で同紙は、こうした実店舗展開はアマゾンのマーケティング戦略にとって重要だとも伝えている。今回の報道に先立つ3月8日、米リコードなどの海外メディアは、アマゾンがワシントン州シアトルの近くに、新たな書籍販売の実店舗を開設すると報じた。

同社は2015年11月に、書籍を対面販売する店舗「Amazon Books」をワシントン州シアトルに開設したが、その後同様の店舗をカリフォルニア州サンディエゴや、オレゴン州ポートランドなどにも開設。現在は4店舗がオープンしている。さらに同社はニューヨーク市やシカゴなどにもAmazon Booksを開設する予定で、新たに分かったシアトルの店舗は10軒目となる。

アマゾンは最近、こうした実店舗展開を加速させている。ウォールストリート・ジャーナルによると、米国にはショッピングモール内にアマゾンの小規模店舗が約30店ある。先ごろは、ドライブスルー方式の食料品店や商品受け取り店舗といった新業態を計画しているとも伝えられた。

JBpress:2017年3月29日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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