沖縄・奄美で梅雨入り 梅の実の熟す頃の雨というより黴菌の繁殖する頃の雨
雨の「こどもの日」と梅雨入り
令和3年(2021年)の「こどもの日」、5月5日は低気圧と前線が日本列島を通過中で、ほぼ全国的に曇りや雨となっており、西日本では雷を伴って非常に激しく降りました(図1)。
翌6日は、高気圧に覆われるためほぼ全国的に晴れますが、前線が停滞する南西諸島では曇りや雨の天気で、この天気は続く見込です(図2)。
このため沖縄地方では平年より5日早く、鹿児島県奄美地方では平年より7日早く、ともに「こどもの日」に梅雨入りとなりました(表)。
沖縄の梅雨入りが一番早かったのは、昭和55年(1980年)の4月20日ですから、令和3年(2021年)の梅雨入りが、特別に早い梅雨入りではありません(図3)。
梅の実の「梅雨」とバイキンの「黴雨」
「梅雨」の漢字の由来には未詳部分が多いのですが、主な2つの説があります。
一つは、「梅の実の熟する時期の雨」という「梅雨」という言葉がもともとあったという説です。
「花が咲いた時」とか、「実が実った時」という特定の時期ではなく、「実の熟する時期」というやや長い時間帯を使っているのが、各地で広く使われている理由と思われます。
ただ、もう一つの説も説得力があります。
それは、もともと中国で黴(カビ)の生えやすい時期の雨であったことから「黴雨(バイウ)」と呼ばれていたのが、黴菌(バイキン)の黴(バイ)では語感が悪いということで、同じ音の「梅(バイ)」を使ったという説です。
個人的には、後者がしっくりきます。
食中毒を引き起こす細菌の多くは、約20度で活発に増殖し始めるとされています。
また、細菌の多くは湿気を好みます。
つまり、梅雨期は、気温が高くなって20度を超し、雨が多くなって湿度も高くなりますので、細菌による食中毒が増えます。
ただ、食中毒は、気を付けると防ぐことができます。
各地の10日先までの天気予報をみると、北海道を除き、最高気温も連日20度を超えています。
また、梅雨入りした那覇(沖縄地方)や名瀬(奄美地方)だけでなく、鹿児島など各地で雨の予報が多くなっており、まもなく梅雨入りを思わせます(図4)。
気温が高く、湿度も高いという食中毒になりやすい季節になっていますが、新型コロナウイルス感染と違って、食中毒は注意深い行動で防げるものです。
新型コロナウイルス対策で多忙の医療機関の負担をこれ以上増やさないためにも、食中毒にはならないという、注意深い行動が求められています。
梅雨末期の水蒸気量
気温が高くなればなるほど、大気中に含むことができる最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)は増えてきます(図5)。
梅雨入りの頃の平均気温は、那覇で24度、名瀬・大阪で23度、鹿児島・福岡・高松・広島で22度と、22度のところが多くなっています。
これに対して、梅雨明けの頃の平均気温は那覇・名瀬・鹿児島・福岡・広島・大阪で28度、高松で27度と、28度のところが多くなっています。
つまり、飽和水蒸気量は、22度の1立方メートル当たり19グラムから、28度の27グラムにまで、梅雨期間中に4割も増えるということができます。
単純に言えば、気温以外の条件が同じであれば、雨が4割多いことになります。
梅雨末期に集中豪雨が多いのは、梅雨初期に比べて気温が高く、その分だけ水蒸気が多くなって大雨になりやすいからです。
沖縄・奄美地方が梅雨入りとなり、その他の地方も梅雨入り間近となっています。
梅雨入り前、遅くとも梅雨末期前には、家族そろってわが家の大雨対策を考え、実行してください。
それが、あなたとあなたの家族を大雨から守ります。
図1、図2、表の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図4の出典:ウェザーマップ提供。
図5の出典:筆者作成。