平成ラストマッチを飾れず。動き鈍く、令和初戦へ「課題」道連れ/レノファ山口
J2レノファ山口FCは4月28日、維新みらいふスタジアム(山口市)でツエーゲン金沢と対戦し、0-2で敗れた。金沢との対戦成績は0勝2分5敗となり、相性の悪さを平成のうちに払しょくすることはできなかった。レノファのJリーグでの通算成績は69勝34分70敗。平成時代を一試合の負け越しで閉じた。
明治安田生命J2リーグ第11節◇山口0-2金沢【得点者】金沢=クルーニー(後半4分)、大石竜平(同31分)【入場者数】6605人【会場】維新みらいふスタジアム
レノファのほぼ全員に対して、1対1のハードマークをする金沢の特徴的なディフェンス。それは十分にスカウティングできていたが、レノファは上回れなかった。
前節・モンテディオ山形戦では試合中に左ウイングの高井和馬とインサイドハーフの佐々木匠のポジションを入れ替えるなど、先手を打った策が奏功。高井と佐々木の連係からペナルティーキックを獲得し、決勝点につなげていた。今節も先発メンバーは変えず、相手のディフェンスを地上戦でかわそうとしていくが、後半立ち上がりでの失点でリズムが崩れ、そこからの再構築ができなかった。
互角の前半45分間
前半は良くも悪くも想定の範囲内で過ぎていく。左サイドでは高井のキープと川井歩のオーバーラップを生かしてボールを進め、中央のラインや右サイドでは前貴之や佐藤健太郎がバランスを取ったり、相手を引きつけたりして、田中パウロ淳一や三幸秀稔が前を向く時間を作った。
もっとも、押し込んで人数を掛けた状態でも相手選手が付いてくるため、アタッキングサード以降の崩しも難航。高井は川井とのコンビネーションを生かすなどして前半だけで4本のシュートを放つが、厳しいマークでコースを限定されてしまう。
ビルドアップの中でボールを失い、何度か金沢のショートカウンターを食らうが、これに対してレノファのディフェンスも組織で確実に跳ね返した。前半は0-0。中盤での攻防が続き、互いに最終局面では決定力を欠いていたが、スコアレスは全く予想外というものではなかった。
「金沢はどの選手にもマンマークだったので、最初から点が入らなくてもだんだん疲れてくるとは想像していた」。古巣対戦となった田中パウロはそう前半を振り返る。このままどちらの土俵にも乗らない状態で試合を進めていけば、最終的にはレノファが運動量で相手を上回れるのではないか--。それは希望的観測ではなく、実際に最終盤はワンサイドの展開となるが、霜田正浩監督はハーフタイムから修正。「足元のパスになりすぎず、しっかり裏を取ること」などと指示し、立ち上がりから先手を取るべく、よりゴールに向かう動きを出すよう促した。
思わぬ失点と、続いた「バタバタ」
ゲームを0-0で進められれば流れは来るはずだった。しかし後半4分、相手に簡単にパスをつながれると、レノファの左サイドから金沢・長谷川巧がセンタリング。FWへのコースには菊池流帆が入っていたが、ヘディングで跳ね返そうとして処理を誤り、フリーのクルーニーにシュートを許した。これが決まって金沢が先制する。
後半の序盤で起きた想定外の形での失点。レノファにとって大きく影を落とすことになった。どんなスーパーゴールを決められても、どんなイージーミスから決められても「1失点」であることに変わりはないのだが、影響もまた想定を超えていた。「サッカーはミスのスポーツ。誰かのミスを誰かが取り返すというチームにならなければいけない」と霜田監督は話すが、3試合ぶりの失点を喫したイレブンはメンタル面から崩壊。失点をチームで取り返せば良かったものの、その後は攻守にミスを重ねていった。
ハーフタイムでの確認とは裏腹に攻撃での動きも縮小。ボールの受け手がマークを外せず、ボールホルダーの球離れが悪化した。失った1点を取り返すため、霜田監督はディフェンダーを削って攻撃的な選手を投入し、前線に人数を割く「3-5-2」に布陣を変更する。それは何ら難しい一手ではなかったが、今日ばかりは交代に込められたメッセージが伝わらず、混乱に拍車。手を打った直後にやはり金沢に簡単にボールを動かされ、大石竜平にネットを揺らされた。
後半序盤に起きた事態にメンタル面で対応できないまま、攻撃にも出られず、再び失点。終盤は金沢が引き気味になったほか、田中パウロが指摘したような相手の疲労、ゲームメークに長けた池上丈二の投入などで再びアタッキングゾーンに運ぶが、ゴールは奪えなかった。「すごくいいリズムで試合ができていたと思ったが、1失点してからのチームのバタバタ具合。リーグ戦を戦っていく上で、そこから盛り返すチーム力が必要だ。若い選手は多いが、みんなで声を掛けて雰囲気を作っていかないといけない」。厳しいマークに技術と運動量で抗った佐々木匠は、チームのメンタルをそう悔やんだ。
ボールと人が動くサッカーを
試合が崩れた直接的な要因は1失点目だが、霜田監督は「流帆を責めるわけにはいかないし、流帆を使っている僕の責任。シンプルにはじき返せるだけの力はある。あとは判断の問題だ」と説き、三幸も「失点の直前のミスが見えがちだが、なぜあのように運ばれたか。センタリングをなぜ上げられてしまったか。ふわっとした時間帯で、一発の隙を突かれてしまった」とチーム全体の責任だと受け止めた。一人だけがフォーカスされるような失点ではなく、ルーキーの菊池にとっては成長の糧にできれば良いようなもの。課題はむしろ1失点しただけでピッチ全体が悲壮感に包まれ、次には「バタバタ」としてしまったことだ。
攻撃にフォーカスすれば、動きの小さくなった後半だけでなく、前半からチームとしての動きがもっとあっても良かっただろう。ピッチを細分化したとき、「タカ(前)が僕のスペースを空けるために後ろで待って、僕が1対1で仕掛けられるようにしてくれた」(田中パウロ)といった個の能力を引き出す動きはあった。しかし、チーム全体で効果的に動けたかといえば疑問符が付き、反復攻撃の少ない単発のアタックも続いた。
ダブルボランチの一人としてパスの受け手を探した三幸は、「自分たちは下(足元)でつないで練習してきた。あれぐらいのプレッシャーであれば、はがせないといけない。そのためにもっと周りが動かないといけないし、そのスキルは練習しているが、グラウンドで表現できなかった」と肩を落とした。
すでに11試合を戦い終えて、新加入選手にもチームが目指すサッカーは浸透したはず。選手それぞれの技量やパスの出せる範囲、受けられるエリアなどの特徴も分かってきただろう。パスの受け手は、ボールホルダーが出せると思ったら特徴に合わせて積極的に動かなければならないし、出せないと思えば同じように積極的に距離を縮め、受けに行かなければいけない。ボールに関係せずとも、おとりになるような自己犠牲の動きも必要だ。
だが、90分を通して動きの鈍い小さなサッカーに終始した。「しっかり連動した動きができれば十分に相手の裏を崩せる」(霜田監督)はずの試合で、無得点かつ複数失点を喫したのは大いなる反省材料。失点後の「バタバタ」も含めて、タクティクス(戦術)の植え付けも、メンタル面の強靱化も道半ばであることを示した。次戦までの準備期間は通常よりも1日短くなるが、レノファのスタイルのベースとサッカーの基本に立ち返り、チームで立ち上がりたい。
悔しい形で平成最後の試合を終え、多くの課題とともに改元日を含む1週間のトレーニングに入っていく。リカバリーし、リスタートし、令和初戦を快勝で飾るためにも、重要な準備期間になりそうだ。
次戦は5月4日午後2時から、新潟市中央区のデンカビッグスワンスタジアムでアルビレックス新潟と対戦する。ホーム戦は2週間後で、5月11日に維新みらいふスタジアムに大宮アルディージャを迎える。レノファはこの試合を「レディースデー」として、女性を対象に1500人をメーンスタンドMA席などに招待(要申し込み)。特設サイトなどを制作し、ファン層の拡大を図る。