『黒子のバスケ』緑間真太郎の3ポイントシュート、高度を計算してみたら、なんと4階建ての校舎くらい!?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。
マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。
さて、今回の研究レポートは……。
『黒子のバスケ』には魅力的なキャラクターがたくさん登場したけど、筆者が大好きだったのは、秀徳学園高校の緑間真太郎だ。
緑間は、主人公・黒子テツヤの中学時代のチームメイトで、「キセキの世代」と称される5人の天才の1人。
身長195cm、体重79kg。冷静沈着で、占いが大好き。
座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」。
セリフの多くを「なのだよ」で締める。
「なのだよ」はバスケと関係ないが、そんな緑間が得意とするのが、3ポイントシュートなのだよ。
ライン際からはもちろん、センターラインや、自陣ゴール付近のエンドラインからでも百発百中!
緑間自身、こう言っている。
「オレのシュート範囲(レンジ)は、コートすべてだ」。
そう、「なのだよ」と言わないときもあるのだよ。
バスケットコートのどこからでもシュートを決められるとはすごい。ぜひとも緑間のシュートについて考えよう。
◆ボールの高度は13m弱!
緑間がシュートをすると、ボールは急角度で高々と上がり、そのままほぼ垂直に落ちてきて、リングの中心を一直線に貫く!
バスケットボールでは、ゴールリングの中心から半径6.75mのところに「3ポイントライン」が引かれている。
3ポイントシュートが認められるのは、このラインより外側からシュートした場合だけだ。
緑間はどんなに近くても、ゴールから6.75m離れてシュートを放つわけで、それでほぼ垂直にゴールに入るからには、ボールの高度がすごかったはずである。
具体的な高さは、シュートの角度がわかれば、計算で求められる。
マンガのコマで計ると、ボールは80度もの急角度でゴールに突き刺さっている。
3ポイントラインの距離は、前述のとおり6.75m。
また身長195cmの緑間がジャンプしてシュートを打てば、ボールはゴールリングと同じくらいの高さ=3.05mから放たれると考えていいだろう。
この条件下、角度80度で入るシュートの滞空時間を計算すると2.8秒。
これはかなり長い。NBFの試合映像を見ると、3ポイントシュートは1.5秒ほど宙を舞っているから、その2倍に迫る時間だ。
そして、滞空時間がわかれば、ボールが上昇した高さも計算できる。
空中に投げ上げられたボールは、上昇中と下降中で、向きも速度も、まったく逆の運動をする。
このため、滞空時間が2.8秒なら、上昇と下降に1.4秒ずつかかることになる。
ボールが上昇した高度を求める式は、高度=5×上昇時間²で、すなわち9.8mだ。
この9.8mというのは緑間の手から投げ上げられる高さであり、床からの高さはこれに3.05mを加えたものになる。
最高到達点はなんと12.85m! これは高い。
日本バスケットボール協会は「試合を行う体育館は天井の高さが7m以上」と定めているが、普通の学校の体育館で、天井の高さが13m近いところがどれだけあるだろう?
12.85mとは、4階建ての校舎ほどの高さなのだよ。
◆どんな体育館でシュートしたのか!?
だが、高度13mくらいでビックリしていては、緑間の本当の魅力は理解できない。
彼の放ったシュートには、もっともっとすごい3ポイントシュートがある。
ドギモを抜かれたのは、緑間が作中で初めて披露した3ポイントシュートだった。
3ポイントラインからシュートを放つと、緑間はオドロキの行動に出る。
ボールがまだ高々と宙を舞っているのに、その軌道を見ることもなく、クルリと向きを変え、チームメイトの高尾に声をかけたのだ。
緑間「戻るぞ高尾 DF(ディフェンス)だ」
高尾「オマエいっつもそうだけどさー これで外したらオレもどやされんだけど」
緑間「バカを言うな高尾 オレは運命に従っている そして人事は尽くした」
そして、一瞬の間があり――
緑間「だからオレのシュートは 落ちん!」
と言い切ると同時に、ボールはゴールリングを突き抜けた!
こ、こ、これは長い!
いったいどれだけの時間、ボールは空中を舞ったというのか。
筆者が2人のセリフを音読してみたところ、ちょうど15秒かかった。
ボールの滞空時間も15秒だったとしたら、ボールの高度はとんでもないことになる。
前述の方法で計算すると、高度はなんと284m!
296mの横浜ランドマークタワーや、300mの大阪あべのハルカスの屋上に迫る高さということに……!
◆緑間の鉛筆がすごすぎる!
そんな緑間が、バスケ以外で驚くべき力を見せつけたことがある。
事件が起こったのは、インターハイ東京都予選決勝リーグの直前。学校で実力テストが行われ、成績が悪い者は土曜日に試験を受けさせられることになった。
土曜日はまさに試合の日。そしてエース火神は、前回の国語のテストが3点……。
そこで火神は、緑間からもらった鉛筆を転がして、解答用紙を埋めていったところ、なんと98点を取った!
さすが占いを信じ、「人事を尽くして天命を待つ」を座右の銘にしている緑間の鉛筆だ。
しかし、鉛筆を転がすだけで98点を取るなど、実際に起こり得るのだろうか?
火神が受けた国語のテストは、すべて4択だった。
それで98点を取ったのだから、1問2点で50問が出題されたと考えよう。
鉛筆を転がした場合、第1問に正解する確率は4分の1である。
第2問にも正解する確率は16分の1。
第3問も正解の確率は64分の1……と、問題の数が多くなるほど、正解する確率は激減していく。
すると、50問中49問に正解する確率はどうなるのか?
導き出される答えは「8500兆×1兆」分の1。
アラビア数字で書けば、8500000000000000000000000000分の1!
この確率は「宝くじを適当に4枚買ったら、すべて1等でした!」という確率にほぼ等しい。
キセキの世代の緑間真太郎は、鉛筆まで奇跡的だったのである。
本当にすごい。