後悔しない人生を送るために知っておきたいたった一つの指標「最低必要努力投入量(MER)」
人生を後悔しないために
一所懸命がんばったのに、期待したとおりの成果が出ないことがあります。反対に、それほど努力してもいないのに、期待以上の果実を手に入れることもあります。人生いろいろです。だからこそ面白いわけであるし、苦難に満ちているとも言えます。とはいえ、どんな人生を送るにしても「後悔だけはしたくない!」。誰もがそのように思っているのではないでしょうか。
何事にも後悔をしないためには、自分なりの「基準」「指標」があればよいと言えます。
指標を考えるうえで覚えておきたい言葉は「執着心」です。執着心とは「諦めずに、ある物事に固執する。結果が出るまで粘り強く実践する」ということです。そして、こういった「執着心」を持つかどうかは、その事柄に対する興味・関心レベルに左右されることでしょう。
● 興味・関心レベルが高いことは、結果が出るまで粘り強く実践する
● 興味・関心レベルが低いことは、それほど努力することなく諦める
「やらずに後悔するより、やって後悔するほうがいい」とよく言われます。たとえ興味・関心レベルが低いことであっても、期待どおりの成果が出ないからといって、それほど努力することなく早々と諦めてしまったら、後に後悔する確率は増大します。
「最低必要努力投入量」とは?
したがって、興味・関心レベルが高いことであれば意識する必要はないでしょうが、興味・関心レベルが低いことなら、先述したように、後悔しないための「指標」が必要だと私は考えています。その指標こそが、「最低必要努力投入量」と呼ばれるものです。ミニマム・エフォート・リクワイアメント(MER)とも言われ、名著「働くひとのためのデザイン」で金井壽宏氏が紹介した概念です。
自分が期待した成果を手に入れるためには、一定以上の努力をしてもいないのに見切りをつけない。諦めない。グダグダ言わないことが重要です。この「一定以上の努力」という概念が、「最低必要努力投入量」なのです。ただ、ひとえに「努力」といっても、この表現ではわかりづらいので、「精神的コスト」と「経済的コスト」と「時間的コスト」という3つに分解して考えてみましょう。
前述したとおり、興味・関心レベルが低いことに対しては、ついつい努力することなく諦めてしまうもの。「精神的コスト」が大きいからです。好きでもないことをするのは面倒だし、ストレスがかかります。ちょっとやっただけでうまくいかなければ、やり遂げようという気持ちを維持するのは難しいかもしれません。
しかし、後悔したくないのであれば、この「精神的コスト」とバランスをとるように「経済的コスト」「時間的コスト」をかけていきましょう。ただでさえ面倒なことなのに、お金や時間を投入する、というのは、さらにイヤだ、ということになるかもしれません。ですから、後悔したくないときだけでいいのです。
「英会話をできるようになりたいが、正直いって勉強するのは面倒くさい。でも後悔はしたくないから1年間週2回、英会話スクールへ行って、毎回2時間勉強しよう。お金も20万円ぐらいかかるけれど、本気になるにはそのほうがいい。そこまでやって上達しなければ、自分のセンスのなさに見切りをつけられる」
「希望してもいないのに営業職に配属させられた。営業成績が上がらないので、営業に向いてないと思う。でも、あと半年、顧客との接点量と時間をこれまでの2倍にしてみよう。そして毎週1冊は営業に役立つ本を買い、読んでスキルアップに心掛けよう。それで成績がアップしなければ、やはり営業に向いていないと考えていいかもしれない」
……と、このように具体的に「努力投入量」を設定します。
「最低必要努力投入量」をどう正しく設定するか?
ただ、この具体的指標がそれなりに正しいかどうかは2つの視点で検証する必要があります。
● 過去の自分の成功体験と比較して妥当か?
● 「その道のプロ」の意見を聞いて妥当か?
たとえば、種類は違っても、宅建の資格を合格するのに週に6時間勉強して5ヶ月かかった。その時に使ったお金は15万円。というのであれば、そのときの感覚を生かすことができます。
「ある程度、英会話ができるようになりたいが、スマホの1000円のアプリを使って、毎日20分ぐらい勉強してるだけで成果が出ないのは当たり前だな。宅建を合格するにも、それなりに苦労したし」
実際に目標を達成させた過去がいくつかあれば、中途半端な努力だけで見切りをつけることはなくなると言えます。「最低必要努力投入量」と言われても、見当がつかない、ということはないでしょう。
もし、過去の成功体験がない、というのであれば「その道のプロ」に聞いてみればいいのです。先述の例でいえば、英会話をできるようになりたいのであれば、複数の英会話の講師に尋ねてみることです。営業成績をアップさせたいのであれば、その会社で結果を出している先輩や上司に聞いてみましょう。それはまさに、後悔しないための「最低限の努力」と言えるはずです。
「無駄な努力」を続けると後悔する人生に
「やらずに後悔するより、やって後悔するほうがいい」と書きましたが、私は意外にこの格言は好きではありません。なぜなら中途半端な努力はやったほうが後悔するからです。やるなら、やる。やらないなら、やらない。……とハッキリしたほうが私は後悔の質も量も減ると考えています。
「将来グローバルな人材になりたいので、あの先輩ぐらい英会話ができるようになりたい。でも、なかなか時間がないから、いま自分ができることと言ったら、英会話の本を1冊買って、付録としてついてきたCDをたまに聴くことぐらいかな……」
このような考えなら、やるだけムダです。自分のできる範囲でやる。やらないよりやったほうがマシ、とは私は思いません。
「英会話の本を読むことに慣れる」という成果を手に入れたいのならいいですが、「先輩ぐらい英会話ができるようになる」ことが目標であれば、「最低必要努力投入量」にまるで達しない努力は意味がありません。
正しい成功体験が身に着かず、
「どうして英会話が上達しないんだろう? この本、まったく役に立たない。1500円がムダになった」
と、他責にするクセがついていくだけです。結局、うまくいく人は何をやってもうまくいきます。いろいろな成功体験があり、自分なりの「最低必要努力投入量」という指標を手に入れているからです。そして成功者には、必ず異分野の成功者の仲間がいます。何か新しいことをチャレンジしようとしても、そのときにかかる「最低必要努力投入量」をその道のプロから教えてもらえるのです。
後悔しない人生を送るために、「最低必要努力投入量」という、自分なりの物差しを手に入れていきましょう。