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「終わった男」ライアン・ガルシアが両手首を負傷?

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:REX/アフロ)

 現地時間2024年12月15日の17時、ボクシングニュースを扱う広報会社よりメディアに向けてメールが配信された。発信場所は米国カリフォルニア州ロスアンジェルス。

 同リリースによると、「“ボクシングのスーパースターである<キング>”ライアン・ガルシアがトレーニングキャンプ中に手首を負傷し、12月30日(月)に東京で開催予定だった日本のキックボクシングチャンピオン、安保瑠輝也とのエキシビションを一時延期した」とのことだ。「イベントは、2025年初頭に仕切り直される」とも記されていた。

写真:REX/アフロ

 「12月12日、両手首の痛みが悪化したガルシアを診察しました。私は彼にスパーリングとボクシングマッチを数週間控えるよう勧めます。治療の選択肢については、さらなる診断後、ガルシアと話し合う予定です」

 ”世界的に有名な専門医”、スティーブン・シンなる医師のそんなコメントも添えられている。

 ガルシア自身の発言も載っていた。

 「ここ数週間、ダラスで懸命にトレーニングし、日本でのエキシビションファイトに向けて準備してきました。残念ながら、トレーニング中に手を負傷したので、医師の診察を受けるためにロスに戻りました。医師からは、12月30日のエキシビションを延期するようにとアドバイスされました」

写真:REX/アフロ

 本コーナーで度々取り上げてきたが、ガルシアというボクサーは、真のスーパースターではない。WBC暫定ライト級タイトルを獲得したことはあるが、今年4月20日のデヴィン・ヘイニー戦で、禁止薬物であるオスタリンの使用が発覚。その結果、1年間の出場停止処分を受けている。今尚、謹慎中の身である。

 ヘイニー戦ではリミットをオーバーしてリングに上がり、重い体を武器として対戦相手を倒すという姑息な手段を平気で選ぶ人間だ。ボクサーとして見るべきものは無い「終わった男」だ。

 それでも、SNSのフォロワー数や人気面で、利用価値があるとされる。

 ガルシアは「ラップシングルをリリースするとアナウンスした」「デヴィン・ヘイニーの父親でトレーナーを務めるビルに、プロのポン引きとしての仕事を与えようとした」「ボヘミアン・グローブの森に誘拐されたと主張した」「2歳の時にレイプされ、証拠があることを明かした」「インフルエンサーのジェイク・ポールにも対戦を要求した」「ジェイクの兄、ローガン・ポールを悪魔崇拝者だと非難し、消費者に彼のプライム・スポーツドリンクをボイコットするよう促した」「2人の異なる女性に疑似結婚を申し込んだ」「ラスベガスとロサンゼルスを大地震が襲うと予測した」「宇宙人が存在するという証拠を持っていると発表した」「著名人のオペラ・ウィンフリー、トム・ハンクス、マーク・ザッカーバーグがジェフリー・エプスタインのリストに載っており、イーロン・マスクが『反キリスト』であるという証拠を持っていると主張した」など奇行を繰り返し、精神の異常性が指摘されている。

 謹慎中にカネを稼ぐいい機会だったように思うが……「終わった男」は一体どこへ向かっているのか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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