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WBCスーパーミドル級2位を屠った咬ませ犬

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Mikey Williams/Top Rank

 第6ラウンド2分26秒、ブルーノ・スレースの右ストレートがWBCスーパーミドル級2位、ハイメ・ムンギアの顎を捉える。その一発でムンギアはキャンバスに沈み、戦闘不能となった。

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 今年の5月4日に統一スーパーミドル級チャンピオン、サウル・"カネロ"・アルバレスに挑んだムンギアはプロ初黒星を喫したが、それでも判定まで粘った。これほど派手な負け方をするのは初めてである。しかも、故郷であるメキシコ・ティファナのリングに上がるのは2022年2月以来で、元WBOスーパーウエルター級王者にとっては凱旋試合に当たっていた。

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 フランス、マルセイユ出身で25勝(4KO)無敗2分のスレースは、22連勝中だったがKO勝ちが4つしかない点がムンギア陣営を安心させた。また1年のブランクがあり、本来ミドル級の選手であることも好材料だった。言ってしまえば<咬ませ犬>として選ばれ、フランスからやってきたのだった。

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 試合2日前の記者会見で、スレースは次のように発言した。

 「ムンギアがスーパーウエルター級だった頃から、何度も試合を見ています。メキシカンらしく、攻撃的な選手ですね。彼の動きひとつひとつを注視し、対策を練ってきました。戦いに向けて周到な準備をしたつもりです。

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 ムンギアの地元で戦うことに興奮しています。すごいヤジが飛んでくるでしょうね。とはいえ、このムードは最高です。彼にとってストレスになっているかも。私は、ティファナが好きですよ。雰囲気が闘志をかき立ててくれます。市民の方々に好意を感じますし、この場所にいることにエキサイトしています。

 ムンギアは、攻守ともに高いレベルにある素晴らしい選手です。最初の数ラウンドは戦いながら彼のスタイルを学び、プランを調整していきます。多くの映像を見ましたので、いかなる方法が良いかは分かっています」

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 実際、フランス人ファイターは2ラウンドに左フックを浴びてダウンを喫したが、そこから立て直すメンタルと技能を持っていた。

 試合後、勝者は語った。

 「ムンギアが優れたボクサーであることは知っていました。だから私たちのチームは、カウンターをポイントに練習したんです。彼は真の戦士です。対戦の機会を与えてくれたムンギアに感謝します。私にとっては大舞台でした。ミドル級が自分の本当の階級です。しかし、再戦の可能性があるんじゃないですかね」

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 ムンギアはメキシコ内で、それほど知名度のある選手ではないそうだ。心身共に初KO負けのショックは大きいだろう。どのような未来を描くか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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