ハイブリッド車のコストを燃費で回収するのは無理? 防災視点を加えれば「意外と得かも」と思える話
ハイブリッド車を評論する記事によく見られるのが、「燃費で価格差を取り戻すには十数万km、走らなければならない」という記述です。確かに同じモデルのガソリン車とハイブリッド車では、価格差が30〜40万円ありますから、ガソリン代だけでその差を埋めるのは困難でしょう。しかし、ハイブリッド車を防災用品のひとつと考えれば、見方が少し変わってくるかも知れません。
東日本大震災は言うに及ばず、19年9月の台風19号でも、千葉県を中心に大規模な停電が発生しました。これらを機に、防災用品としてエンジン発電機に注目した人も少なくないのではないかと思います。しかし、エンジン発電機は意外と高価です。家庭用のバックアップとして使える18アンペアクラスのものだと、たとえばホンダのEU18型で22万8800円(税込み定価、以下同じ)、ヤマハのEF1800iS型で23万3200円もしてしまいます。
ところが、たとえばトヨタのハイブリッド車の多くには、15アンペア(100V1500W)の給電機器が、4万4000円でオプション設定されています(標準装備されているものもあります)。ハイブリッド車には、そもそもエンジンと発電機が付いているため、追加するのはAC100Vを作るインバーターだけで良いので、追加コストが安くて済むのです。
防災用品として発電機を買うより、ハイブリッド車がお得かも!?
実際のクルマで試算してみましょう。トヨタ・ヤリスGグレードの価格は、ガソリンエンジン車で177万3000円、ハイブリッド車で213万円。その差は35万7000円です。ハイブリッド車は4万4000円のオプションを追加しますから、合計40万1000円の差になります。
ガソリン車には、発電機を組み合わせるとしましょう。発電機の実売価格(2021年10月上旬)はホンダもヤマハも12万円ぐらいなので、これを加算して189万3000円。ハイブリッド車+オプション(インバーター)も、オプションは半分ぐらい値引きしてくれますから、215万2000円として、差額は25万9000円まで縮まります。
これにエコカー減税も加味しましょう。ヤリスのガソリン車に減税はありませんが、ハイブリッド車は重量税と環境性能割(旧自動車取得税)が非課税となります。webで見積もりをとったところ、課税額の差は5万3600円ありました。これを両者の差額から引くと、20万5400円になります。
ガソリン単価を150円、実用燃費をWLTCモードの90%として計算すると、6万8467km走ればこの差は埋まります。
ハイブリッド車+インバーターなら、特別なメンテも置き場所も不要
しかも、ハイブリッド車+インバーターには、エンジン発電機を単独で買ったのでは得られないメリットもあります。
エンジン発電機は非常用ですから、災害が起きなければ出番がありません。しかし、いざというときに使えなくては困りますから、定期的にエンジンをかけてチェックする必要があります(ヤマハでは月に一度、約10分の稼働を推奨しています)。備蓄しておくガソリンも、半年に1度ぐらいは新しいものに入れ替える必要があるでしょう。可燃性が高いため、保管場所にも気を遣います。
ところがハイブリッド車+インバーターなら、こうした手間はいっさいかかりません。走行7万km弱で初期投資が取り戻せるうえ、こうした手間が不要になると考えれば、現実的な選択肢として十分「あり」という気がしてこないでしょうか?
もうひとつ言えば、手放すときの下取り価格にも差が出るはずです。たとえば7年(3度目の車検)7万kmで乗り換えるとすると、そのときの差額は、そのままメリットとして戻ってきます(いくらになるかはわかりませんが)。
10月7日には、関東地方で大きな地震がありました。震源は千葉県北西部と、首都直下型地震の想定震源域のひとつ”東京湾北部”と一致します。今回の震源深さは約80kmと、直下型地震を起こす活断層ではなく、プレート境界が原因と見られていますが、活断層になんらかの影響があったかも知れません。
来たるべき大災害に備えて発電機を用意しておこうとお考えのかたで、クルマの買い換え時期も近いなら、ハイブリッド車を選ぶことも、可能性のひとつに入れておくと良いのではないでしょうか。