ノート(60) 主任検事が自ら取調べを行うために取調べの担当を交代した実例
~達観編(10)
勾留22日目(続)
特捜部長の呼び出し
福島汚職事件では、約40日間でサブコン元会長の取調べ担当をクビになったものの、その途中、伏線として、捜査主任検事が1日だけ東京拘置所にやってきたことがあった。自ら元会長の取調べを行うためだった。
この事件では、いよいよ強制捜査に着手するという前日、特捜部長の大鶴基成さんにわざわざ部長室まで呼び出されていた。
大阪と比べて組織の規模が大きい東京の特捜部は、ヒラ検事と特捜部長の距離が遠い。部長室に入るのは着任時のあいさつ以来だったし、部長とサシで話をするのも特捜部の歓迎会以来だった。
「僕は君のことをよく知らないんだけど、キャップがぜひ君を、と推しているので、君に身柄を任せることになったんだ。必ず割ってきてくれ」
向かい合ってソファーに座る部長は、僕にそう言った。
――部長が部下のことをろくに知らないって、無責任な話だな。こっちこそ、部長のことなんかろくに知らないけど。
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