ノート(62) 贈収賄立件の苦労と困難さ 犯人隠避の背景となった奈良医大汚職
~達観編(12)
勾留22日目(続)
立件への寄与
取調べの担当を引き継いだ例としては、大阪地検特捜部が立件した奈良県立医科大学をめぐる贈収賄事件もその一つとして挙げられる。主任検事として数十名の先輩、同僚、後輩検事、事務官らを従え、年末年始を挟んで約4か月にもわたる大規模な強制捜査を取りまとめたのは、当時の大阪特捜で中堅の一人にすぎなかった佐賀元明さんだった。
この種の汚職事件を察知し、捜査を前に進め、立件、起訴へと繋げるには、筆舌に尽くしがたい苦労と困難さを伴う。僕の改ざんを知った後、佐賀さんが特捜部副部長として僕をかばうという方向に舵を切ったのも、その奈良医大汚職が背景にあったのではないかと思われる。
キーマンを自白させ、余罪に関する供述を次々と引き出すなど、僕もその立件に少なからず寄与し、佐賀さんの評価を大いに上げる成果を出していたからだ。
価値ある「サンズイ」
すなわち、汚職の「汚」という文字にちなんだ「サンズイ」と呼ばれる贈収賄事件は、警察の捜査2課や特捜検察が取り扱う「知能犯」と呼ばれる事件の中でも別格だ。
贈賄側も収賄側も秘密裏に金品を受け渡し、これを他に口外せず、そのまま口を閉ざすのが通常なので、確たる物証を押さえ、尻尾をつかむのが難しいからだ。
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