下関開催で4連勝! 田中パウロが決勝点。したたかにゲーム運ぶ/レノファ山口
明治安田生命J2リーグは10月12日、第36節11試合のうち3試合が行われた。レノファ山口FCは下関市営下関陸上競技場(山口県下関市)で京都サンガF.C.と対戦。田中パウロ淳一の決勝点で勝利し、勝ち点を43に伸ばした。順位は14位。
明治安田生命J2リーグ第36節◇山口1-0京都【得点者】山口=田中パウロ淳一(後半34分)【入場者数】4166人【会場】下関市営下関陸上競技場
下関市でのホームゲームの開催は、今年は今節のみ。台風の影響で入場者数こそ4千人台にとどまったが、レノファは相性の良さを見せつけ、2017年から続く当地での連勝を「4」に伸ばした。
前線からプレス。相手のシュートを抑制
レノファは前節からメンバーを2人、変更した。右サイドバックでは川井歩がU-22日本代表のブラジル遠征に追加招集されたため、このポジションにケガから復帰した石田崚真を起用。左サイドのアタッカーには高井和馬を置いた。京都も前節までとはシステムを変更。中田一三監督は「今日に関してそれがはまる」と話し、最終ラインは4バックに戻した。
ゲームは互いが相手のストロングに対して確実にディフェンスを仕掛ける堅い展開で始まった。
レノファは前線からのディフェンスに重点を置き、相手の4バックやパサーの庄司悦大に強くアプローチする。霜田正浩監督は「京都はクオリティーの高い選手が揃っている。時間とスペースを与えると、僕らが奪えない時間が続いてしまう。3枚でも4枚でも彼らの最終ラインにプレッシャーを掛け、そこから出てくるパスの精度を下げさせる」必要があると説き、宮代大聖や高井がこれまでの試合に比べても守備にハードワーク。三幸秀稔も相手の起点にプレスを掛け続けた。
今シーズン、レノファは前線がプレッシャーを仕掛けたときに、中盤がぽっかりと空いてしまうことがあった。前線がプレスに行っても後ろが連動して動けず、間延びしていたからだ。ただ、今節も前貴之のセンターバック起用が奏功。前を中心としたラインコントロールで最終ラインを上下動させ、中盤の間延びを阻止。FWがボールを奪えなくても、次に三幸や池上丈二が対応し、さらに佐藤健太郎や高宇洋が奪いきるという組織的な守備が機能した。
対する京都もレノファのサイド攻撃に対応。4バックにしたことも含めて、レノファに使えるスペースを与えなかった。レノファから見れば、アンカーやサイドバックはボールを持てたが、高い位置で両サイドを使えず、クロスからシュートに持って行く流れは作り出せなかった。
手堅い試合は前半終了まで続いた。レノファは高井が縦に抜け出してシュートまで持って行くなど、単発ながらチームで5本のシュートを放ったが、京都は前半を通じてシュートは0本。数字の上からも、レノファがほぼ完璧に相手の攻撃を抑えた。
田中パウロが決勝点。FKを生かす
レノファは前節は前半終了間際に失点し、後半のゲーム運びを難しくしていた。しかし、今節は前半を耐えるという第一目標をクリア。0-0というスコアで迎えた後半に全てを懸けた。
「疲れるかもしれないが、ラスト15分が勝負だという話をしていた。京都さんのデータを見ると、ラスト15分での失点数が多い。僕らはラスト15分で戦える、走れる、そういう強みを持っている。残り15分になったときにイーブンの戦いができていれば、十分に勝つチャンスはある」(霜田監督)
後半も立ち上がりからしばらくは前半と同じような状態が続き、双方ともに中盤ではボールを持てるが、その先に進めなかった。流れが変わるきっかけになったのが、後半27分の田中パウロ淳一の投入だった。斜めに走ってゴールに近づく高井から、大外を走る田中パウロにスイッチし、左サイドでの攻撃パターンが変化。田中パウロは投入直後からサイドを深く突いてチャンスメークし、相手ディフェンスに風穴を開ける。
流れが変わってきたタイミングで、レノファはついに均衡を破った。
同33分。カウンターから前がボールを持ち出すと、そこに京都がチャージしてカウンターが勢いづくのを防ぐ。サッカーではよく見られる戦術的なファールで特筆するようなものではなかったが、低い位置からのFKをレノファ攻撃陣が好機になると判断。近くにいた三幸は田中パウロにアイコンタクトを取り、間髪入れずにボールを蹴り出した。
「前半は思うようなプレーができず、アシストのところでいいパスを出せればと狙っていた。パウロがいいタイミングで走ってくれたので、落とすだけだった。いい動き出しに感謝したい」(三幸)
放ったのは相手DFの背後に落ち込む絶妙なボール。走り込んだ田中パウロは軽快にボールをさばくと、左足を振って、決勝点となるシュートを左隅にしずめた。田中パウロは5月以来のゴール。「中が空いているのは分かっていたが、三幸がちらっと見たので、それで走ったらいいボールが来た。ずっと守っていて、みんなが疲れている苦しい試合だった。決めたのはほっとしている」と冷静にゴールシーンを振り返った。
終盤のレノファは守備にシフト。京都は何度かペナルティーエリアの中に入ってシュートを放つが、菊池流帆がシュートブロックに入るなど集中力を切らさず、リードを守り抜いた。
守備から入るが、ベタ引きは選択せず
レノファのスタイルから考えれば、シュート数が前後半計8本で終わったのは物足りない。それでも、1点を追いかけて走り続けるという姿勢や攻守へのハードワークには伝統的なレノファらしさを感じ取れた。
また、前、高、三幸などをセンターラインに置いた布陣はこれで4勝1分0敗となった。センターバックの前と菊池のチャレンジ・アンド・カバーがこなれてきた印象があり、この試合では菊池のカバーリングでもピンチを跳ね返している。菊池は試合後、「しっかり全員がハードワークしていたので、無失点はそこに尽きる。(前は)安定をもたらしてくれる。僕みたいにこうなる(波がある)のを、きちんとやってくれる」と一定の手応えを口にした。
上述したように、最終ラインが必要以上に落ちず、さらには高や三幸、佐藤などのポジショニングにも支えられて中盤の間延びを防止。前線のプレス、中盤のプレスもそれぞれがきちんと相手に対して効果を発揮した。ライン設定で言えば、高く設定することだけが善でもなく、前線が追えなくなるとラインを無理に動かさないなど、クレバーなコントロールも光った。
今、レノファは守備から入り、最後の仕留めるというサッカーになっているが、守備から入ることは自陣に砦を築くこととイコールではない。チャレンジしているのはあくまでも相手陣地でのサッカーで、霜田監督は「僕らはできるだけ自分のゴールから遠いところから守備をする」と力を込める。
ただ、シュート数や決定機数が伸びなかった要因に重なるが、今節の反省点を挙げるなら奪ったあとの展開が重たかった。前節は中央を締められて攻撃がサイドに頼りがち。今節は逆に幅を使った構築がうまくいかず、シュートシーンは高井と田中パウロのいずれも左サイドのプレーヤーが同サイドの中を駆け上がった。パスを出す三幸は「プレッシャーをはがしてボールを自分たちのものにしなければいけないし、取った後も、もっとつながなければいけない」と話す。まだまだフィニッシュの二つ手前、あるいは三つ手前からの攻撃には進化の余地があるということだろう。今シーズンは残り6試合。上の順位を目指しながら、さらにスタイルを磨いていく。
レノファは次節は10月20日に鹿児島市で鹿児島ユナイテッドFCと対戦。同27日には維新みらいふスタジアム(山口市)に戻り、ジェフユナイテッド千葉と対戦する。
「サッカーができる幸せ」。両監督がコメント
今週末のJリーグは、J2とJ3のリーグ戦計20試合と、ルヴァン杯(Jリーグ杯)準決勝の2試合が予定されていた。しかし、台風19号の接近のため、関東で開催される試合を中心に、中止や延期が相次いでいる。
レノファと京都の試合では、試合後の記者会見の冒頭で両監督がこうした状況に言及した。レノファの霜田監督は「無事に開催できたが、台風で関東、東日本は大変な状況になっている。そういう中で僕らはゲームをやらせていただき、たくさんのサポーターに応援してもらった。その中でサッカーができるのは幸せ。サポーターの気持ちに報いるためにも、気持ちのこもったゲームをしたいという話を選手たちにしていた。そういう意味では選手たちは球際を含めて戦ってくれた」とコメント。京都の中田監督も「台風が心配される中で、選手にも家族が心配という選手がいる中で、サッカーができる幸せを感じて試合に挑んだ」と話し、両監督が「サッカーができる幸せ」を感じながら、持てる力をフルに注いだ試合だったと振り返った。
中止や延期になった試合については、Jリーグやクラブは公式サイトなどを通じて取り扱いを発表している。(Jリーグ公式サイトの関連情報)