しっとり艶やかな白銀の「加賀宝生」生落雁と羊羹のコントラストに塩気を効かせた雅なお菓子
創業嘉永2年、170年以上の歴史を、金沢が誇る茶の湯文化と共に過ごしてきた和菓子屋「落雁 諸江屋」さん。様々な形の木型と絶妙な力加減をもってして、芸術性の高い落雁を作り続けていらっしゃる由緒あるお店です。
王道の落雁のみならず、季節の和菓子やどら焼きなども製造なさっているのですが、今回はなかなか珍しくかつ優雅な生落雁「加賀宝生(かがほうしょう)」をご紹介。
「生じめ」という特殊な製法で作られた生落雁。
糯米の風味豊かな香ばしさはそのままに、一般的な落雁を遥かに凌駕する潤いを湛えた仕上がりに。落雁粉にお砂糖やとろりとした米飴を混ぜ合わせ、乾燥させる前のしゃりしゃりとした食感は、ふんわりとした空気感をも感じられます。そこに加わる、滑らかでもちもちとしたこし餡の羊羹の甘美な風味は、より一層落雁の塩気と旨味を引き立ててくれます。
そうなんです、こちらの加賀宝生の注目していただきたいポイントは、主役は羊羹ではなくあくまで生落雁というところなのです。ある程度厚みを伴う羊羹ですし、一般的なイメージでは慎ましやかな落雁は主役というよりは欠かせないバイプレーヤーとも言える存在ですが、諸江屋さんの生落雁は圧倒的な主役。羊羹と落雁、交互に口の中で味わいながら咀嚼していくとこの感覚が分かりやすいかと思います。最後は一体となり、澄んだ甘味が舌の上に広がっていきます。
仄かに光を反射する乳白色の粒子は、しんしんと降り積もる金沢市は兼六園の白銀の世界に思いを馳せますが、キリッと引き締めてくれる塩気は、日差しの厳しい夏にもより一層美味しく感じられる雅なお菓子。能楽の流派でもある宝生流から銘を拝したという由来も、なんとも風流ですね。
落雁の姿形や味わいも、時代と共に多様化して参りました。お茶の席だけではなく、ぜひカジュアルに毎日のおやつの時間にも取り入れてみてくださいね。