松島幸太朗、スコットランド代表を破って8強入り直後の心境は。【ラグビーあの日の一問一答】
2019年10月13日、神奈川・横浜国際総合競技場。ラグビーワールドカップ日本大会の予選プールA最終戦があり、日本代表がスコットランド代表を28―21で制して4連勝。初の決勝トーナメント進出を果たした。
あれから1年。この日、日本代表のウイングとして先発し、大会通算5トライ目をマークした松島幸太朗の談話を紹介する。国民の熱狂を呼んだシーンを淡々と振り返るなか、この日の攻撃が機能した背景も簡潔に語っている。
本稿の談話を確認したうえで得点シーンを見返せば、得点までの背景を豊かに味わえそうだ。
松島のトライシーンは、こちらのハイライト映像などでチェックできる(松島のトライまでの流れは1分45秒頃から)。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――先制された時、焦りはなかったのか。
「完全に崩されてはいない。キックを蹴ってくるのは予測していたんですが、ターンオーバーを取られてしまって…という感じ。焦らず、自分たちのペースでやろうと思いました」
――トライを決めた瞬間は。
「うーん、まず同点にしようというのもありましたし、自分たちが得点したいという気持ちが強かったので、自分たちの形で得点できてよかったです」
――その瞬間、手にしていたボールを高く放り上げていましたが。
「あぁ、それは、パフォーマンスです」
――大会トライ王争いへの意欲は。
「終わってみればそういう気持ちも出るとは思いますが、試合中はそんな余裕はなかった。そういう立ち位置にいるので、そういったところも狙っていきたいと思います」
――トライへのきゅう覚は鋭くなっているか。
「(味方に)抜けそうなところはしっかりサポートしていこうというところもあります。ただ、まずはブレイクダウンでやられたく(圧力を受けたり球を取られたりしたく)ないので、(できた接点への)サポートする意識が強いです。(この日の自身のトライ時は)ラッキーにパスが捕れたので」
――前半24分頃、素晴らしいラインブレイクを見せています。
「前はフォワードの選手だったので、先にボールをくれと(味方)に言っていました。自分のスピードで…(大きな選手を抜く)と。狙い通りです」
――ひとつには絞れないと思いますが、チームのアタックが機能している理由は。
「全員が同じページを向いているというところと、疲れても何をするかがわかっているところ。意思統一できていた」
――アタックに勢いがあった。それをどう作ったか。
「フォワードが単純に前に出ていてくれたので、バックスとして、助かりました。フォワードのおかげでバックスのいい形ができた」
――全般的に、空中でのボールの競り合いもうまくいっていたような。
「どうせ蹴って来るだろうと予想していたので、1週間、その練習もしました」
――試合後、チームソングのビクトリーロードを皆で熱唱していました。
「スタジアム全体に一体感があって、いままでにない気持ちが出てきたので、勝ててよかったかなと」
――歴史を変えた実感は。
「まだ実感はないです。前回大会(2015年のイングランド大会)でスコットランド代表にやられているので、そのリベンジが果たせた気持ちはあります」
貴重なトライを決めたシーンを「自分たちの形で得点できてよかった」と、感情が爆発していそうな勝利の瞬間を「いままでにない気持ちが出てきた」と述懐。いつだって言葉を飾らない。
桐蔭学園高校卒業後に単身で南アフリカへ渡った松島は、自身2度目となるワールドカップで躍動。現在はフランスのプロクラブリーグ、トップ14のクレルモンに在籍する。