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ミニマリストが教えてくれた逆説的な発想の「すぐやる習慣」とは?

横山信弘経営コラムニスト
必要なノウハウだけ持つ(写真:アフロ)

■ ミニマリストとは?

「こんなに、広い家に住んでるんだ……」

自称ミニマリストの知人宅へ遊びにいったときの、正直な感想だ。決して家そのものが広いわけでもないのに、とても広々として見えたのは、テレビやソファ、家具や収納ケースなどがいっさいないからだろう。

物欲が多い私にとっては、憧れはするものの、自分のライフスタイルにこの発想を取り入れるにはハードルが高そうだと思った。とはいえ、必要最小限の持ち物で暮らすミニマリストに学ぶことは多い。

ミニマリストは、最小限主義者とも言う。とにかく最小限。何も持たない、という潔さがいい。

この潔い発想はビジネスにも役立つことが多い。私だったら「物」ではなく「ノウハウ」に当てはめる。物があまりにも溢れ、その物質的なモノに囲まれて生きるのはイヤだという発想と同じように、高度情報化時代になり、いろいろなノウハウが巷に溢れている。

このノウハウを最小限にして、ビジネスをするのだ。

それが今回のテーマである。

■ 増えるノウハウコレクター

私たちの身の回りにあるノウハウ、メソッド、方法論といったものを、好んで収集する人がいる。こういう人を俗に『ノウハウコレクター』と言う。「意識高い系」という言葉と似ていて、嘲笑の対象として使われるのが一般的だ。

知的好奇心が旺盛なのはいいが、ノウハウを集める割には実践しない。方法論を学ぶ割には問題を解決しようとしない。こういう人たちが「ノウハウコレクター」だ。

生活に必要でないなら、いくら魅力的な物でもバッサリと捨ててしまおう。所有しないでおこう、というミニマリストのように、ノウハウを手に入れても使わないならバッサリと脳の中から捨ててしまおう、排除してしまおうという考え方があってもいい。

たとえば先送り、先延ばしの習慣をなくし、「すぐやる習慣」を身につけるにはどうすればいいのか? 

過去から現在にかけて、膨大な数のすぐやるための「ノウハウ」「メソッド」「方法論」が編み出され、数えきれないほどの書籍が刊行されてきた。少し探せば、ネット上にも「先送りの習慣をなくしてすぐやる人になる方法」といった内容の記事は数百、数千と見つかることだろう。

にもかかわらず、相変わらずグズグズしてやるべきことをすぐにやらない人がたくさんいる。高度情報化時代になり、よけいに増えたと言える。

■「ノウハウのミニマリスト」を目指せ

こういう場合、ミニマリストの発想を拝借しよう。簡単だ。

先送り、先延ばしの習慣をなくし、何事もすぐやる人になるためには、どうすればいいか? 

それは……すぐに「やる」ことだ。「やる」だけである。

もっと具体的に書くと、「先送りをせずに、すぐやる方法」があると思わないことだ。そんな方法はない。

この潔さが大切だ。ノウハウのミニマリストになれば、すぐにやれる。

先送りをしなくなるメモの書き方、タスク管理、心構え、時間管理術……それらを知ろうとすればするほど、本来やるべきことができなくなる。

なぜなら、「ついつい先送りをしてしまうのは、先送りをしなくてもいい方法がどこかにあり、その技術を自分が知らないから、すぐにやることができないのだ」と思い込んでいるからだ。

これは思考ノイズである。

家の中の埃やごみくずと一緒。そんな思考ノイズは、なるべく早く脳から捨ててしまおう。

どんなテクニックを知っても、先送りをしてしまう人は先送りをする。よく考えればわかることだ。仕事の完成度を高めるためにどうすればいいのかと悩むならともかく、「すぐやる」にはどうすればいいか、という悩みなのだから。

単純に、すぐ「やる」だけなのだ。やればいいだけだ。

こんなこと言うと、

「横山さん、『やるだけ』と言ったって、それができないから困ってるんでしょう?」

と激しく突っかかってくる人がいる。しかし、そう指摘されたら私もこう切り返したい。

「いえいえ、そんなことはありません。ノウハウは使うものであり、使われるものではないです」

と。

■ ノウハウコレクターは酔っぱらっている?

お酒と同じだ。お酒は飲むもので、お酒に飲まれるのはよくない。

「『やるだけ』と言ったって、それができないから困ってるんだろう!」

とグダグダ言う人は酔っぱらっている。ノウハウや方法論に飲まれて、嫌な感じに酔っぱらってしまっているのだ。少し冷静になるまでノウハウを飲むのをやめよう。そして待つのだ。落ち着くまで待つのである。待てばわかる。深呼吸すればわかる。

どうすれば、「すぐやる人」になれるのか?

すぐに「やる」だけだ。

それだけだ。

知識も必要ない。経験もスキルも必要ない。モチベーションや内的動機付けなども、まったく関係がない。「やる」だけである。そうすることでストレスから解放され、仕事の品質も上がり、周囲からの信頼も得られるようになる。

何より、「わかっちゃいるけどなかなかやれない」と言って「先送り」する場合、それは自分への裏切りでもある。

だから先送りの習慣をなくすだけで、自分への信頼は増す。つまり「自信」がついてくるようになるのだ。すぐにやるためにはどうすればいいか? すぐにやるだけなのだ。

名経営者である稲盛和夫氏の有名な言葉を最後に紹介しよう。

 バカな奴は、単純なことを複雑に考える。

 普通の奴は、複雑なことを複雑に考える。

 賢い奴は、複雑なことを単純に考える。

そう。クレバーな人ほどシンプルに物事をとらえ、実行するのだ。あれもこれもとノウハウを集め、ややこしく考え、悩みを深めることがない。

ノウハウのミニマリストになるろう。必要最小限のノウハウだけで「すぐやる習慣」は身につけられる。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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