やっぱりドラフトは「クジ引き」が面白い!
昨日10月24日、恒例のプロ野球ドラフト会議(以下ドラフト)が都内のホテルで開催されました。取材に訪れるのは2年ぶりだったのですが、会場内には相変わらず独特の空気が流れ、一歩足を踏み入れると妙にわくわくドキドキしてくるのも2年前と変わりませんでした。
なぜ、わくわくドキドキするのか? それは注目の1巡目指名が「入札抽選」、つまり全12球団が一斉に選択を希望する選手を入札し、重複した場合は抽選によって指名権を得る球団を決めるという仕組みになっているからです。今年は昨夏の甲子園で1試合22奪三振をマークした松井裕樹投手(桐光学園高)が5球団、大瀬良大地投手(九州共立大)が3球団、さらに石川歩投手(東京ガス)も2球団重複し、抽選となりました。
本来、ドラフトとは各球団の戦力の均衡を目的としたものであり、その意味では弱いチーム=勝率の低いチームから順に欲しい選手を指名していく「完全ウェーバー制」にするのが筋でしょう。実際にメジャーリーグでは1965年の制度導入以来、これを貫いています。ところが日本では完全ウェーバー制が実施されたことはなく、逆に選手の希望を尊重するという趣旨で「逆指名制度」や「自由獲得枠(希望入団枠)」などが導入されたこともありました。現在の方式に落ち着いたのは、2008年からです。
ただし、実際に1巡目指名における抽選を目の当たりにすると、これが実に面白い。果たして誰がクジを引くのか? その役目を与えられた人は、半透明になっている抽選箱の中のどのクジを手にするのか?(もちろん最後の人は“残りもの”を引くしかありませんが…) そして、見事に当たりクジを引き当てるのは誰か?
昨日は東北楽天ゴールデンイーグルスの立花陽三球団社長が松井投手を、広島東洋カープの田村恵スカウトが大瀬良投手を、そして千葉ロッテマリーンズの伊東勤監督が石川投手を、それぞれ引き当てました。クジを当てて満面の笑みでガッツポーズをする横で、外れて肩を落とす、その悲喜こもごも。何より会場の大きな盛り上がりが、この抽選の面白さを如実に物語っていたと言えるでしょう。
そんな様子を目の当たりにしてしまうと、完全ウェーバー制が本来の形とは思いつつも、この入札抽選にも抗いがたい魅力を感じてしまいます。ただ、現在は偶数巡は「球団順位の逆順」(今年で言えばパ・リーグ最下位の北海道日本ハムファイターズ、続いてセ・リーグ最下位の東京ヤクルトスワローズと、両リーグ交互に下位球団から)、1巡目以外の奇数巡は「球団順位」(セ・リーグ1位の読売ジャイアンツ、続いてパ・リーグ1位の東北楽天ゴールデンイーグルスと、両リーグ交互に上位球団から)での指名になっているのですが、これは公平という観点では妥当なのかもしれませんが、本来の戦力均衡という趣旨を考えるなら3巡目以降も「球団順位の逆順」にすべきだと思います。
それにしても、今年のドラフトでは監督以外のいわゆる球団フロントにビッグネームが目立ちました。福岡ソフトバンクホークスの王貞治球団会長は以前からですが、新たに埼玉西武ライオンズは渡辺久信前監督がシニアディレクターとして、横浜DeNAベイスターズは山下大輔前二軍監督がGM補佐として列席。さらに会場入りした時から存在感を放っていたのが中日ドラゴンズの落合博満GMで、初々しさが感じられる谷繁元信新監督(選手兼任)とは対照的でした。