年末年始、飲みすぎたあなたの肝臓はどうなる?
飲みが続く…
皆さん、飲んでますかー?
忘年会のはしご。クリスマス。そして年末年始の真っただ中。ふるさとでこの記事を読まれている方も多いだろう。
飲み、飲み、飲みの連続で肝臓が悲鳴を上げているんじゃないか…そう思っている人も多いだろう。ガンマなんちゃらの数値も高くなっているんじゃないか…
かくいう私も他人事ではない。大晦日から元旦は、実家で飲んだくれてしまうだろう。
しかし、酒を飲みすぎた肝臓をこの目で見たことがある人なんてほとんどいないだろう。医者だってめったに見るものではない。
ところが、日常的に肝臓を見ている職業がある。それが私たち病理医だ。
そもそも肝臓って何?
そこで、病理医の視点から、酒で傷んだ肝臓がどうなっているのかを解説したい。
その前に、肝臓のことを皆さんはどの程度ご存知だろうか。
人体の化学工場と言われる肝臓は、たくさんのことをしている。食べ物から取り込んだ栄養を変化させ、蓄えること(代謝)、脂肪の消化を助ける胆汁を作ること、そして、酒の成分であるアルコールや薬などを解毒することが肝臓の仕事だ。
アルコールは肝臓で、最終的には水と二酸化炭素になり、無毒化される。アルコールがアセトアルデヒドという物質になり、アセトアルデヒドが水と二酸化炭素になる。アセトアルデヒドを分解する酵素がうまく働かない人はお酒に弱い人だ。
健康な肝臓は上で述べたことをするために、肝細胞とよばれる細胞がみっちりと、理路騒然と並んでいる。
アルコールは肝臓をボロボロに
さて、ここで本題だ。アルコールは肝臓で分解されるが、分解しきれないほどのアルコールがやってきたらどうなるか。
肝細胞が壊れて死んでしまう。上で挙げたガンマなんちゃらはガンマGTPのことで、肝細胞が壊れると血液の中に流れ出していく。ガンマGTPが高いということは、肝細胞が壊れたことを示しているのだ。
死んだ細胞は再生するが、それを繰り返すうちにだんだん細胞の並び方が崩れていく。代謝や解毒、胆汁を作り出す力が弱まっていく。肝硬変は再生した肝細胞がむちゃくちゃに並んだ状態だ。
以下にボロボロになった肝臓の写真がある。健康な肝臓と比較してみてほしい。
破壊と再生を繰り返し、遺伝子の異常がたまり、がんになることもある。飲酒習慣とがんの発生に関連性があることは、研究によって証明されている。
一時的なら戻りますが…
とはいえ、年末年始に飲みすぎたくらいでは、すぐにがんになるということはない。酒をしばらく断てば壊れた肝細胞は再生し、もとに戻っていく。ライターのみわよしこさんは、酒豪として知られているが、酒の飲みすぎによる体調不同が数日の断酒で回復していったという。
しかし、酒の影響は肝臓だけではない。膵臓は破壊され、食道は痛み、脳は縮む。常習性があり、依存症になることもある。
飲酒運転による交通事故は、減ってきたとはいえまだまだ発生している。
厚生労働省が定める健康日本21では、「「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20g程度である旨の知識を普及する。」としている。20gのアルコールとは、ビール中瓶1本500mlだ。たったそれだけ?!と思う人も多いだろう。
体を破壊する毒物でもあるアルコールとうまく付き合っていくのは簡単ではないが…酒とうまく付き合ってよいお年を!