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【東京人流5割減】デパ地下入場制限で達成できる? それならオフィスにも通勤制限が必要か?

横山信弘経営コラムニスト
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

■デパ地下入場制限で効果はあるか?

8月14日(土)からそごう・西武や大丸松坂屋百貨店、高島屋、三越伊勢丹はデパ地下への入場制限をスタートさせた。

実際に百貨店ではクラスターが発生した例があり、「デパ地下、百貨店の人流を強力に抑制してほしい」とコロナ対策分科会からも提言があった。

大手デパート3社(三越伊勢丹、高島屋、大丸松坂屋百貨店)は現在、コロナ前と比べて売上を半分ほどに減らしている。その状況で入場制限である。「弱り目に祟り目」とはまさにこのことだ。

飲食店やデパートが開いている時間を制限したり、開店していても入場できる人数を制限することで、確かに人流は減る。交通機関を利用する人も一定数は減るだろうから効果は期待できる。

しかし、分科会が提言している東京の「人流5割減」が、このような局所的な措置で達成できるのか。甚だ疑問だ。

■企業に対する「通勤制限」は?

一般企業に対する通勤制限はできないものか。いつも思う。

飲食店やデパートへの時短要請、入場制限は、ストレートに業績を押し下げる作用が働く。いっぽうで一般企業への通勤制限は、はたして対象企業の業績を押し下げる要因となるのか。

業績ダウンとなる直接的な要因になることは、ほぼ考えられないだろう。

慣れないうちは、仕事の生産性は下がる。しかし在宅勤務に慣れてしまえばそんなことはない。「デジタルネイティブ」のように「オンラインネイティブ」と呼ばれる人たちも登場している。

つまりオフィス勤務をしたことがなく、オンラインでの仕事しか経験のない人材である。このような「オンラインネイティブ」からすればオフィス勤務ほど生産性の低い働き方はない。

テレワークや在宅勤務をすると仕事の生産性が落ちると主張する人は、オフィス勤務のやり方を在宅勤務にそのまま持ち込んでいるからだ。変化への適応能力が求められるこの激動の時代において、このような現状維持バイアスがかかった思考では生き残っていけない。

■トヨタ等の取り組みとCSR(企業の社会的責任)

8月初旬、トヨタ自動車は、在宅勤務に関する職場からの距離制限を撤廃し、全国どこでもテレワークが可能となる制度を導入したと発表した。

在宅勤務が難しいとされる製造業で、はやくから導入している企業がカルビーだ。富士通やJTBでも、数値目標を決めて在宅勤務を促進している。

このような大企業の動きを見習うべきだ。在宅勤務ができるのにもかかわらず、オフィス勤務を続けるオフィスワーカーを対象に「強力に抑制してほしい」と提言できないものか。

実際に現場からは、

「本社は在宅勤務を推奨しているのに、直属の所長がオフィスに出てこいと言ってくる」

このような声をよく耳にする。会社が、個人や組織に「判断を委ねる」という姿勢では、決して人流を抑えることはできないだろう。

先日から西日本豪雨を超える豪雨が、九州や中国地方を襲っている。「過去に例を見ない」とか「50年に1度」といった表現が虚しく聞こえるほど、毎年のように大きな災害が日本列島を襲い掛かっている。

BCP(事業継続計画)の観点からしても、多様な働き方を企業は模索しなければならない。自社都合だけを考え、面倒なことを先送りし続けるのはやめよう。

在宅勤務者の数値目標を各企業は公言し、人流削減に貢献する。松下幸之助氏は「企業は社会の公器」と言った。企業は社会に対し、「よき企業市民」として範を示す存在なのだ。何かが起こってからアクションを起こす企業姿勢では、社会からも、次代を担う若者たちからも支持されないのだから。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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