実を結び始めるセティエンのトータルフットボール。リーガのアシスト王はベティスに在り。
2012-13シーズン以来の、欧州カップ戦出場権獲得は実現できるだろうか。ベティコ(ベティスファン)の期待値は高まっている。
リーガエスパニョーラ第8節、本拠地ベニト・ビジャマリンにバレンシアを迎えたベティスは、壮絶な打ち合いの末に3-6で敗れた。しかしながら一時は0-4とリードされながら3ゴールを叩き込みバレンシアを慌てさせた。「シー、セ・プエデ!(すべてが可能)」というベティコの大合唱がスタジアム全体に響き渡り、クラブ、選手、ファンは一体化していた。
ベティスは今季のリーガでかつてないほど素晴らしいスタートを切っている。バレンシアを迎える前のリーガ第7節までで、獲得可能な勝ち点21のうち勝ち点13を獲得。この成績はクラブ史上3番目だ。
2001-02シーズンのフアンデ・ラモス監督率いたベティス(勝ち点16を獲得)、1996-97シーズンのセラ・フェレール監督が率いたベティス(勝ち点14を獲得)に次ぐ数字である。なお、その間挙げた7試合14得点は過去60年で最高の数字となった。
■クライフを「コピー」したスタイル
今季のベティスの得点力、それはキケ・セティエン監督の掲げるトータルフットボールの賜物だ。
アントニオ・サナブリア(5得点)、セルヒオ・レオン(4得点)、ホアキン・サンチェス(3得点)、フェダル(2得点)、クリスティアン・テージョ、ファビアン・ルイス、ジョエル・キャンベル(以上1得点)と実に7選手がここまで得点を奪っている。セルヒオ・レオンは「どこからでも、誰でもゴールを奪える」と手応えを口にする。
ベティスは昨季、ルベン・カストロ(現貴州智誠)の得点力に依存していた。ルベン・カストロはシーズンを通じて13得点をマーク。だが彼を除くと、4得点以上を記録した選手はいなかった。
それを変えたのが、セティエン監督だ。バルセロナを率いてリーガ4連覇を達成したヨハン・クライフに憧れを抱いたセティエン監督は以前、あるインタビューで「私はクライフのフットボールをコピーした」と話していたことがある。
「クライフのバルセロナを見るまでは、フットボールの異なる見方をしていた。あそこで私の世界観は変わった。あの頃のバルサから、たくさんの要素をコピーしているよ」と指揮官が認めるように、その哲学は現在のベティスで確と息づいている。
■レアル・マドリーを翻弄してベルナベウを征服
ポゼッションこそが最大の守備。主役は選手でもなく、監督でもなく、ボールだ。そこにクライフイズムが垣間見える。強弱と長短を織り交ぜたパスで自陣から前進する。純粋なるフットボールの快楽を追求した末にあるのは、勝利か、敗北か...。セティエン監督はその先の世界を見ようとしているのだ。
勝利に見放される時期が訪れたとすれば、そこで大切なのは道筋である。アートを好むベティコに、セティエン監督のフットボールは合致する。ボールを晒し、隠しながら、ピッチをワイドに使って進軍する。クロスボールを上げ、中央で合わせる。教科書のようなプレーを、今季のベティスは幾度も見せている。
リーガ第5節では、レアル・マドリーに1-0で勝利を収め、敵地サンティアゴ・ベルナベウを19年ぶりに征服した。その試合の決勝点の場面では、10人の選手がプレーに関与し、44タッチ数、22本のパスを経てクロスボールからサナブリアがフィニッシュした。70秒間に渡り、レアル・マドリーの選手たちは一度もボールに触れられなかったのである。
■リーガのアシストキング、グアルダード
また、当然ながら、得点するには決定的なパスが必要だ。
ベティスの「アシストキング」は、アンドレス・グアルダードだ。先日31歳を迎えたメキシコ代表MFは衰えるところを知らず、チーム内だけでなくリーガ全体でもアシストランクの首位に立つ。
2位カルロス・ソレール(バレンシア/4アシスト)、3位ヤニック・カラスコ(アトレティコ/3アシスト)、ファビアン(ベティス/3アシスト)、ゴンサロ・グエデス(バレンシア/3アシスト)を抑え、グアルダードが1位の座に居座っている。
アトラス、デポルティボ、バレンシア、レヴァークーゼン、PSV、ベティスと複数クラブをわたり歩きながら12シーズンを過ごしてきたグアルダードだが、30歳を超えてキャリア最高の時を迎えている。今季ここまでの6アシストは、デポルティボ在籍時記録したキャリアハイの8アシストを上回る勢いだ。
バレンシアに大敗したベティスは9位まで順位を落とした。しかしながら7位レアル・ソシエダ、8位ビジャレアルとは勝ち点13で並んでいる。そして、勝ち点16の4位アトレティコ・マドリーまでは十分射程圏内だ。セティエン監督との心中を決め込んだ、ベティスの決断は実り始めている。