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待望のクリーンディーゼルを搭載したCクラスを試す。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

メルセデス・ベンツCクラスに待望のクリーンディーゼル搭載モデルが発表されたのは、2015年9月28日。世の中はVW排ガス不正問題一色という時期であった。

そうした中での発表は、かなりの向かい風かと思われたが、発表会の後にメルセデス・ベンツ日本株式会社代表取締役社長・上野金太郎氏は、「安心してご購入いただければ」と語った。そしてこの時に、Cクラスに関しては「3割くらいディーゼル・エンジン搭載モデルが占めるのではないか」という風にもコメントしたのだった。そんなCクラスのクリーンディーゼル搭載モデル「C220d」に、早速試乗する機会を得た。

例のごとく、試乗した印象は動画にまかせるとして、長らくユーザーから日本導入のリクエストの声が大きかったCクラスのクリーンディーゼル搭載モデルは、実際に試してみると商品として非常に魅力的だった。

2.2Lとそれほど大きくない排気量にも関わらず、直列4気筒ターボ・ディーゼルは最高出力170ps、最大トルク40.8kgmを発生する。この最大トルク値は、一昔前ならばV6やV8エンジンで実現していた数値だ。そんな巨大なトルクを、1400-2800回転という、日常で最も使うエンジン回転で発生させる。つまり、普通に使う限り常に最大トルクが得られる、というイメージと考えてよい。

それだけに、実際に走らせるとアクセルを踏み込む量が極めて少ないことに驚かされる。回転計に目を向けると1200−1500回転、といった感じなのだ。それでも十分以上に力が感じられて、豊かさやゆとりを感じる。そしてこの感触がCクラスを、さらに上質なクルマに感じさせる要素になっている。

加えて9速ATの9G−TRONICを採用したことで、きめ細やかで滑らかな変速や、エンジン回転が低く抑えられることによる静粛性の高さ、そして燃費性能の良さも手に入れている。燃費はセダンで20.3km/L、ワゴンで19.6km/Lを達成している。こんな具合で商品性の高さがC220dの魅力だ。

ディーゼル・エンジン搭載車の魅力はひとつではない。まず、使用燃料である軽油がガソリンよりも安く、最近ではその価格差も以前より開いている。加えてガソリン車よりも約1割くらいは燃費に優れているため、1タンクで1000km近く走れるポテンシャルを秘めているため、ガソリンスタンドに行く回数も少ない=手間がかからない。またそうしたランニングコストの安さに加えて、なんといってもクルマとしての魅力が大きい。パワフルで滑らかな加速や走りは、高級サルーンの持っているフィーリングそのもの。また最大トルクが日常域から発生するため、単純に扱いやすいし、アクセルを踏み込む量も少なくて済む。それゆえにエンジン回転も無闇に高まらないので静粛性にも貢献する。といった具合で、様々な方面に“効能”がある。

また実際の販売状況は数値では公表されていないが、関係者によれば好調な販売となっているようだ。そしてこれに加えて、購入を検討している方が相当数いるのはもちろんで、ディーゼルが大丈夫ならば…という意識を持っている方はかなり多いのだという。こうした状況から想像するに、VW排ガス不正問題によってディーゼルに対するイメージが悪化した、とは一概に言えないようだ。むしろそれ以前のマーケットの状況として、日本のマツダによるディーゼルのメジャー化等も手伝い、興味は大分喚起されていたといえる。そうした中で、VW問題こそあったものの、世の中のユーザー的にはディーゼル搭載車に対する興味は失われておらず、安心が担保されたり証明されれば購入したい、という向きも多いように思える。

そうしたことを考えると、やはり決めては走りの印象およびそこから生まれる商品性の高さに帰結するのだろうなと思う。走りに様々な方面で魅力があり、商品性が高いからこそ、多くの人が気にする存在=クリーンディーゼル搭載車なのだ。そしてこれと同じことがハイブリッド搭載車やPHEV、そしてピュアEV等でも考えられる。つまり世の中的に、新たなパワーソースへの興味は高まっている。それだけに、ユーザー間における新世代のパワーソースへの興味をいかに納得できるものとしてPRできるかが、今後の成否に大きく関わってくるだろう。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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