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物価上昇で日本全体の家計が赤字に転落!今からでもできる家計対策は?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
家計赤字のイメージです。(提供:イメージマート)

2024年1月に公表された2023年7~9月期の「家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報」によると、家計の収支が赤字に転落したことがわかりました。内閣府の資料によると、家計可処分所得は2015年からゆるやかに上昇しているものの、家計支出が2021年の後半から上昇し続け、2023年7~9月期には、家計収入を家計支出が上回ることとなりました。これから私たちはどのように家計を見直せばいいのでしょうか。

■家計見直しの王道は固定費の削減

筆者は家計管理や家計の見直しが好きではありません。理由は、個人の頑張りが必要だからです。個人の努力に依存する家計改善は、短期的には成果が出やすいのですが、長期継続が難しいという欠点があります。家計は生活習慣を反映するため、長期的な家計改善は担当する人の育った家庭環境や金銭教育などにより固定化されやすいという弱点があります。

今回は、頑張らない家計改善として固定費の見直しからの着手をお勧めします。固定費が最も大きくなるのは、住居費です。家賃および住宅ローンと言えばわかりやすいでしょう。筆者が家計改善のアイデアとして引っ越しを提案し、実行した人は一人だけ。99.9%の人は「そこまでしなくても」という雰囲気になります。条件の悪くなる住まいに敢えて転居するには、相応の覚悟や必要性が必要です。一方で住宅ローンとなると話は別。住宅ローンの見直しは、常に相談テーマの1つになります。

住宅ローンの見直しは、借換えコストが100万円前後必要なことから、金利差がコンマ数%ではコスト倒れになります。つまり、そもそも低い金利で借りている場合、借換えに見合うような住宅ローンはほとんどありません。お金というコストを掛けず、銀行と直接金利引き下げ交渉をするという方法もありますが、希望するほどに金利が下がるケースは多くなく、折衷案となる場合が殆どです。

従って、住居費の削減は理論的にはできるのですが、実務的にはかなり難しいという結論です。

次の見直しは、生命保険です。生命保険はネットで検索すると不要論がでてきますが、家庭の状況によって要不要がわかれます。ただ、筆者がいつも必要性に疑問を感じるのが「葬儀代」相当の積立て型の保険です。皆さんも、葬儀代として毎月1万円~2万円位生命保険で積み立てていないでしょうか。筆者も大学卒業後すぐに、生保のセールス担当の方に提案されたことがあります。昔からある有名なセールストークの1つです。

葬儀代保険は、将来の資金を計算すると必要性がわかるのですが、貯蓄が上手にいく家計であれば、将来的に資金が貯まりますので、葬儀代も保険に頼らず捻出できます。一方で、将来資金が足りなくなる人は、葬儀代という人生の最後のタイミングまでお金が残せないので、葬儀代としての保険を使う前に、解約せざるを得なくなります。葬儀代保険が必要なのは、働き始めて数年間。それ以降は葬儀代相当のお金を貯めることができていれば保険が不要になりますし、お金が貯まらない場合は掛け捨ての定期保険で備えるといいでしょう。

葬儀代保険を見直す際、実行のブレーキとなるのが、解約返戻金が少ない点です。積み立て途中で保険を解約すると、支払った保険料に対して返金される解約返戻金の割合が少ないため(解約返戻率)、解約すると損をするという心理的ブレーキが家計改善の足並みを乱します。

固定費削減の検討に値するのが携帯電話料金です。定年退職世代の相談を受けると、間違いなく実行されるのが携帯電話代金の見直しです。収入が減るので電話料金の見直しに着手しやすいのが特徴です。ただ、現役世代ですとなかなか進みません。結構多いのが面倒くさい、仕組みが複雑でどこが得かわからない、といったものです。支出削減効果が大きくない割に、手続きが面倒くさいというのが実行につながらないようです。他にも、小さいお子さんに買い与えた携帯電話を、家計を見直したいのにも関わらず削減できない家庭も多く見受けられます。高校生や大学生であれば、自ら働き収入を得て親に頼らず携帯電話料金を支払えばいいのだと思いますが、親として子どもの携帯電話に手を付けるのは親の沽券にかかわるため口出しできません。中には、子供はキャリア携帯、親は格安携帯などいびつな契約になっていることもあります。最近の子供はお金のことを率直に話せば理解してくれると思うのですが、親の対面を守るために議題にさせないこともあります。

他にも毎月固定費を払い続けている支出はないでしょうか。パソコンソフト、WEBサービス、携帯電話で支払っている継続課金、利用していないのに支払いだけ続けているサービスも1つくらいは見つかるでしょう。こうしたサブスク型のサービスは、通帳やクレジットカードの明細を眺めていると存在に気が付ける可能性があります。年に一度は不要不急の支出をあぶりだしましょう。

■変動費の見直しは、手間がかからないことを優先する

変動金利の見直しは、仕事柄無力感を感じることが多いです。ポイントは楽しく取り組めるかどうかだと思っています。

例えば、食費を下げるのではなく、外食費や中食費を下げるために自炊する。はじめは楽しくないかもしれませんが、料理を続けていくとどこかのタイミングで苦も無く料理に取り組める時期がきます。習い事などで苦労していことができるようになる時期です。これを超えると家計全体の食費を削減することができます。

家事についても、外部サービスを利用して整理整頓してもらいつつ、家事を学ぶことで自ら楽しんで家事を上手に、効率的にこなすことができるようになりますし、そのような方向性のためにお金をかける人もいます。

自宅で畑設置したり、プランターを使ったりすることで、家庭内での食料自給率を上げることで、食費を下げることもできるでしょう。育ててみると、自分で育てるのと買うののどちらがいいか、お金を払う価値、時間をかける価値を天秤にかけて理解できるようになるのもいいかもしれません。

無理な家計改善に取り組むと、ご褒美と称した非日常支出や、ストレス性の高額支出が増えることがあり、時間がある人以外にはお勧めできません。

何事にも楽しんで取り組める人は、家計改善をゲームだとおもって取り組むと、楽しさ感じたり、代替支出による満足度向上などの視点が身に付く可能性があります。

■投資による収益獲得も有効な家計改善対策

最後に、新NISA等をつかって配当金を目当てに投資するのも有効ではないかと考えます。実際に筆者は、お金がお金を生む仕組みづくりに興味があり、仕事柄実験的に様々な投資を行っています。その中で、配当金や分配金が定期的に入金される「よさ」を理解しています。資産を増やすための積立投資もいいのですが、今の生活を豊かにする資産運用を行うことで、日々の生活にゆとりを生むという考え方もできるのです。理論的には、運用が効果的に活用できると、節約する必要がなくなります。

企業価値が大きく、市場のシェアが高い企業の中から、高配当株式を選択してみるのもいいでしょう。ネットで検索すれば情報もたくさんでています。自己責任が前提ですが、取り組む価値はあると思います。

手取りが少なくなっていく日本経済では、色々な角度から家計改善に取り組む必要がありそうです。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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