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“ベストフレンド詐欺”が横行、詐欺を防いだと思ったら、新たな展開が!出し子逮捕で、さらなる新局面!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

このところ、非国際ロマンス詐欺が横行しています。あえて「非」をつけましたが、恋愛感情を抱かせるというよりも、ベストフレンドな関係で、だまそうとしてくるからです。そして旦那さんにいわずに、こっそりと奥さんが「困っている友達にお金を貸すつもり」で、送金してしまい被害に遭います。

その時、相手は死と隣り合わせの戦いの最中にいる写真を送り、同情心を煽ってきます。

出会いのきっかけも、マッチングアプリからではなく、インスタグラムなどの大手SNSからです。しかも、そのやり口を見ていくと、もはや特殊詐欺そのものです。

ベストフレンド詐欺とは?

恋愛感情ではなく、友情を抱かせてだます手口自体は以前からありましたが、コロナ禍もあってか、かなり被害報告が増えてきているように感じます。

既婚者である30代女性は、6月初めにインスタグラムで50代の国連で働くカナダ人男性医師と友達になりました。そしてLINEを交換して、英語でのやりとりをするなかで、彼はパキスタンの戦火の中で医療活動をしていることを彼女は知ります。

「現地でいかに苦労して医療活動をしているのか。それがわかるメッセージや写真をこちらに隙を与えないくらいに、次々に送ってきました」

写真を見せてもらいましたが、血だらけの人たちをトラックで運ぶ写真や、砲弾により車や建物が焼き尽くされて、ガレキと化している街並み、ほんとうに見ているだけで涙が出てくるようなものばかりです。

筆者もわりと人情家なので、こうした写真が次々に送られてきたら、同情心から危険な心理状態に置かれるかもしれません。

これらを送るなかで、男性医師は現地で働くことの悩みを話します。

「こうした凄惨な場所で働くのは、精神的に辛いので、もう帰国したい」と心のうちを吐露します。

「もうこの頃には、彼のおかれている現状が心配になり『友達として、何か助けてあげたい』という気持ちになっていました」

彼女のそうした気持ちを見透かすように男はメッセージを送ります。

「帰国しようと思うんだけど、こちらの銀行からは戦況が厳しくてお金は引き出せなくて、カナダまでの航空券が買えずにいる。2700ドル(約30万円)を貸してもらえないか?帰国したら、『絶対に返す』といいます」

彼女も一刻も早く、戦地から帰国させてあげたい思いから、お金を送ることに応じます。

そして日本にある銀行の口座番号を振込先として伝えられます。

彼女は急いで30万円を振り込みます。

その後、急な事態が起きる

しかし「飛行機に乗る直前で、国連から『勝手に帰ってはいけない』と止められてしまい、飛行機に乗れなかった」と男は連絡してきました。

いまだパキスタンに足止めされていると聞いて、彼女はとても心配します。

数日後「国連に帰国の届けを出した。しかし、そのための費用として7000ドル(約78万円)を払わなければならなくなった。必ず返すから、貸してもらえないか」といいます。

しかし日本でのカードの引き出し利用限度額が、一日50万円であることを伝えて、彼女はその額を送金します。

彼女はこの時の心境を次のように話します。

「すでに30万円を貸しているので、もしここでお金を払わなければ、返してもらえないのではないか。その不安もあって、さらに50万円を振り込みました」

男からは残りのお金を払ってほしいと言われます。ただ翌日が土日でしたので、彼女は月曜日に振り込もうと思っていましたが、この2日間があったおかげで、少し冷静になり「もしかして、これは詐欺ではないのか?」と思い始めます。

もう一人のベストフレンドからの助言で詐欺を確信

ちょうどこの頃、インスタグラムで出った自称韓国人男性とも頻繁にメッセージのやりとりをしており、彼にこの件を相談してみました。

すると韓国人男性は「それは詐欺なので、お金を送ってはいけない!」と断言します。

それを聞いて彼女は「やはり、詐欺だった」との確信を持ちます。

そこで、カナダ人医師に「もう、お金を払わない」ことを告げます。

これで、詐欺を防げた!……わけでは、ありませんでした。

二重の罠が仕掛けられていた

その後も韓国人男性は「僕が国連に通報して、必ずお金を取り戻してみせる」と力強いメッセージを送ってきます。

男からは「国連に連絡したところ、お金を取り戻すのに、手数料として20万円がかかる」といい始めます。

そして国連のマークのついたメールが送られてきます。

タイトルは「IMMEDIATE RELEASE FUNDS US{$100,000 }ONLY TO FRAUD VICTIMS」(即時リリース資金10万ドル 詐欺被害者だけに)です。

被害者に送られてきた、国連のマーク入りメール
被害者に送られてきた、国連のマーク入りメール

「国連セクションユニット 世界銀行支援プログラム」と書かれており、ここに載っているURLをタップすると、国連の正規のHPに飛ぶようになっています。

メールはもう一通送られてきています。

「私たちはあなたがあなたのお金を取り戻すことができるように、それを処理します。(中略) 私たちの調査ユニットがあなたの詐欺情報を調査し、あなたにあなたのお金を取り戻すからです。しかし、私たちの世界銀行ユニットはあなたのような多くの詐欺被害者を補償しています」との内容です。

またお金の無心?

一瞬、国連のマークを見て彼女は信じそうになりますが、ネットで調べ始めます。すると、国際連合広報センターの「詐欺にご注意ください!」のHPを見つけます。

そこには「一般の方々に料金の支払いや費用の立て替えなどを要求することは一切ありません」とありました。

これを見て、彼女は「この韓国人も詐欺師だ」と判断します。

こうして、二次被害を防ぎました。

実は、他の被害者からも、SNSで知り合った別な友達に相談したところ、「それは詐欺だ!と言われて、詐欺に気づいた」というケースを耳にします。しかしその後、その人物からもお金の話を持ち掛けられます。

つまり、この二人の人物は同じ詐欺組織でしょう。

詐欺グループは本人が不安になった時のために、もう一人のベストフレンドを相手に近づけておき、ダブルスタンダードな方法で、だまそうとしているわけです。

これが、最近のベストフレンド詐欺の手口です。

「特にロマンチックな話はなく、友達が困っている、その一心でお金を送ってしまいました。後になって思えば、戦地でLINEができるなんておかしい話ですよね」

ベストフレンド詐欺は、冷静になる暇を与えずに詐欺を行うだけでなく、疑われることを想定して次の手も講じてきており、かなり巧妙化しています。

出し子が捕まり、犯行の手口が明らかに

後日談があります。ここが国際ロマンス詐欺及び、ベストフレンド詐欺が、特殊詐欺そのものと思われるところです。

2週間で80万円をだましとられた彼女は、6月末日に警察に相談に行きます。そして振り込んだ先の銀行口座の凍結を依頼します。

数日後、彼女が振り込んだのと同じ銀行口座に、別な被害者が振り込んだお金を引き出そうとして、中年の日本人女性が警察により逮捕されました。

彼女が捜査関係者から聞いた話によると「この方は、子供のいる家庭の奥さんだそうです。SNSで出会った人物から、8%の報酬を受け取れると誘われて犯罪に加担して、私の振り込んだお金も彼女が引き出して、黒人男性に公園で渡したと言っていた」そうです。

この女性は「出し子」といわれる存在で、お金の足がつかないように、引き出したお金を別な第三者に渡す。まさに、これは振り込め詐欺の構図です。

10月2日に報道された別な事件では、京都府警により、イラクで働く国連医師をかたって、恋愛感情を抱かせた60代女性から、飛行機代名目でお金をだまし取ったとして、75歳の歌手の女が逮捕されています。

犯人が高齢女性というところも驚きですが、この女性は被害者宅を訪れ、90万円を受け取ったといいます。この女性は「受け子」とみられています。

指示役に恋愛感情抱き国際ロマンス詐欺か 容疑で75歳受け子再逮捕 (毎日新聞)

国際ロマンス詐欺では「受け子」「出し子」を使います。

前出のカナダ人医師にだまされた30代女性によると「逮捕された中年女性は、過去に国際ロマンス詐欺に遭った方」とも聞いています。

今回、逮捕された75歳女性も、会ったこともない外国人男性とメールのやりとりをして「受け子」をしていたと報道されています。

今の国際ロマンス詐欺では、恋愛や強い友情を抱かせた後に、単にお金をだまし取るだけでなく、組織的犯罪グループの犯行に駆り立てる方にもっていくこともあります。

いまだに、被害者が警察に行くと「国際ロマンス詐欺の犯人は海外にいるから、逮捕できない」との理由で、積極的に被害届を受けないところもみられますが、その視点で相談を受けていると、今後、国内の組織的犯罪グループによる被害拡大を許してしまうような危険な事態にもなりかねないと思っています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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