Yahoo!ニュース

ヘヴィメタ芸人・橋山メイデンが語る「できない自分を認める」ことの意味

中西正男芸能記者
今の思いを吐露する橋山メイデンさん

ヘヴィメタルに関する豊富な知識を持つヘヴィメタ芸人としてオンリーワンの道を歩む橋山メイデンさん(37)。9月29日には単独ライブ「鋼鉄地獄炎~HEAVYMETAL HELLFIRE~」(東京・ヨシモト∞ドーム ステージⅠ)も開催します。攻撃的なルックスとは裏腹に、ここ数年強く意識しているのが「できない自分を認める」ことだといいます。

失敗が失敗にならない世界

 ヘヴィメタルが大好きで、その知識を生かしたヘヴィメタ芸人としても活動しているんですけど、普段から先輩に怒られることがすごく多いんです。

 こういうキャラクターでやっている割にというか(笑)、自分で言うのもアレなんですけど、礼儀がなってないとかいうことではないんです。

 空気の読み方というか、ライブでのみんなでトークをしている時の立ち回りというか、自分では「これがベスト」と思ってやったことがそうではない。どこかズレている。そういうところでダメ出しをしていただくことが多々ありまして。

 ネタライブをやっても、結果的にこちらが予想もしない展開や、もっと言うとミス的なことがあったりもするんですけど、それを一緒にいる方々が笑いにしてお客さんの満足につなげてくださっている。

 今で芸歴は18年目になるんですけど、そういう流れをここ数年、とりわけ強く感じるようになってきたんです。“できない自分”を認めるというか。

 もちろん、ネタライブは自分が面白さを純粋に出す場なので、本気でネタを作って、本気でやっているんですけど、そこでも狙いとズレたりする。

 そんな中で、怒られるということもありつつ、面白がってくれる先輩も増えてきまして。ありのままを本気で出して、周りに面白がってもらう。迷いなく、それをやりきる。それが自分に合ったスタイルなのかなと今は思っています。

 つくづく、芸人の世界はやさしい。それを痛感しますね。何があっても、誰かがそれをプラスにしてくれる。失敗があっても失敗にならない。

 もちろん、理想は自分で作った笑いがドカンとウケて完結することなんですけど、そうはならなかったとしても楽しんでもらえる。

 そういう世界でもあることは分かっていたつもりだったんですけど、それをここにきて本当に噛みしめています。

人間の“層”を積み重ねる

 ただ、このスタイルは「頑張って作る」ものではないですし、結果「行き着くもの」だと思っています。狙って「失敗する」なんてことは一番面白さから遠いことになってしまいますしね。

 あくまでも、必死になって笑わそうとしたけれども、そうはならずにハプニングが起こる。ただ、このハプニングや失敗をどうナチュラルに出し続けるのか。ここが難しいところなんですけどね(笑)。

 それこそ、狩野英孝さんとか「パンサー」尾形さんがそこを完遂している方々なのかなとも思うんですけど、どうやったらたまたまのハプニングを常に出せるのか。そこを考えるのが自分の課題なんだろうなと。

 いろいろ考えたんですけど、行き着くところは「ウソをつかない」というところかなと思っています。

 常に本当に思うことだけを、しっかりと言う。そこには狙いなんてないですし、あるのは本気だけ。そうしていても、幸い、どこかズレているとは思うので(笑)、周りの皆さんに楽しんでもらう。それが自分の存在の仕方なのかなと。

 ヘヴィメタも、ゲームも大好きな中、それでも自分の軸にあるお笑いの世界でやっていくためには、そこを極めにかかるのが僕の道なのかなと思っています。お笑いを始めた時の真っ当に売れていくプランとは全く違いますけど(笑)。

 そうやって、周りに笑いにしてもらう。そして、ヘヴィメタが好きという自分のカタチもあいまって、このまま60歳になっても同じスタンスだったら、より味が出てくるのかなとも考えています。

 今のままみんなからつっこまれて、変わらずヘヴィメタは大好きで。人間の層が少しずつ積み重なって、おっちゃん、おじいさんになればなるほど面白さに近づけるのかなと。

 そんなことを考えていて、ハッと気づいたんですけど、僕、本名の下の名前が「真実(まさみ)」なんです。ウソをつかず、真実の自分を出す。実は自分の名前というスタート地点にあるアイテムが最大のキーアイテムみたいなことがあるんだなとも思いました(笑)。

 どこまで行けるか、どこにたどり着くのか。それはなかなか見えませんけど、自分のままで自分の道を進んでいければなと思っています。

(撮影・中西正男)

■橋山メイデン(はしやま・めいでん)

1987年3月14日生まれ。神奈川県出身。吉本興業所属。NSC東京校12期生。NSCで出会った後村武志と2006年に「メイデン玉砕」を結成する。17年にコンビ解散し、ピン芸人として活動している。ヘヴィメタル芸人として芸能界でNo.1の知識とライブ鑑賞回数を持っている。ドラゴンボール芸人としても活動。9 月29日に第3回単独ライブ「鋼鉄地獄炎~HEAVYMETAL HELLFIRE~」(東京・ヨシモト∞ドーム ステージⅠ)を開催する。ゲストは「トレンディエンジェル」たかし、「シシガシラ」脇田、KOTORI。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

中西正男のここだけの話~直接見たこと聞いたことだけ伝えます~

税込330円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

中西正男の最近の記事