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【駅伝は10月から、マラソンは12月から】学生や実業団ランナー向けのレースの開催時期が違うのはなぜ?

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

秋になって大学駅伝が本格的に始まりました。そして間もなく年末年始の高校駅伝・箱根駅伝・ニューイヤー駅伝の予選会も続々と始まります。例年主要な駅伝大会は、10~1月に開催されます。
一方フルマラソンの代表的なレースは12月の福岡国際マラソンに始まり、その後東京や名古屋ウィメンズの3月まで続々と開催されます。どうしてこのような時期の違いが生じるのでしょうか。
それは駅伝もマラソンも似たような持久力競技ですが、レースに適した気温の違いがあるからです。2021年に持久力パフォーマンスにおける気象の影響を調べた文献があるので、みてみましょう。

フルマラソンは駅伝に比べ、気温や日射による影響が強い

1936~2019 年の間に42か国で開催された1258レースの上位者7867人のタイムと、最寄りの気象観測所からの気象データを調べています。
そして気象による大会記録と記録の差、つまりはパフォーマンスの低下率を計算し、分析しています。

競歩、5000m~フルマラソンにおけるWBGTによるパフォーマンスの低下:Mantzios K et al.Med Sci Sports Exerc.2022
競歩、5000m~フルマラソンにおけるWBGTによるパフォーマンスの低下:Mantzios K et al.Med Sci Sports Exerc.2022

パフォーマンスを発揮するための適温は、フルマラソンは5~13度で、5000mは13-17度のようです。もちろんランナーにより、得意不得意はありますし、天候や気温の影響を緩和するためにウェアや小道具で対策をするのですが、結果的にパフォーマンスの差として現れるのです。
秋の過ごしやすい季節は、5,000mや10,000mつまり駅伝で、冬の寒い時期はマラソンが向いているわけです。

競歩、5000m~フルマラソンにおけるWBGTによるパフォーマンスの低下②:Mantzios K et al.Med Sci Sports Exerc.2022
競歩、5000m~フルマラソンにおけるWBGTによるパフォーマンスの低下②:Mantzios K et al.Med Sci Sports Exerc.2022

同一グラフにすると顕著です。競歩も含めて持久系競技はの適温は、フルマラソンの適温とは明らかに違うことが分かります。

結果的にマラソンは

1254レースの気温のうちわけ:Mantzios K et al.Med Sci Sports Exerc.2022
1254レースの気温のうちわけ:Mantzios K et al.Med Sci Sports Exerc.2022

結果的にマラソンは、寒い時期に開かれます。世界に代表される42か国の1258レース(オリンピックや世界陸上やダイアモンドリーグ、日本では東京マラソン、びわ湖毎日マラソン、福岡国際マラソンが調べられています)を分析すると、5000mや10000mのレースに比べてフルマラソンは圧倒的に寒い時期に開催されていることが分かります。

日本では10-1月に駅伝、12-3月にフルマラソンが開催されるのは、その気候が適しているからなのです。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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