なぜ「夢を語る人」は、夢を叶えることができないのか?
■ 夢を語る人
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。
ですから、ビジネス上の目標を達成させたい人、夢を実現したい人がたくさん私の周りに寄ってきます。「役得」とは、まさにこのことを言うのでしょう。そのような夢追い人からは、たくさん刺激をいただけるので、それをエネルギーに変えられる私は、大変ラッキーです。
ただ、そういう人の中にも、さまざまなタイプがいます。タイプは大きく3つに分かれます。
● 夢を語る人
● 夢を追いかける人
● 夢を追いかけつづける人
この3種類です。
ちなみに、夢を追いかけつづける人がいるなら、夢を語りつづける人もいるだろうと思うでしょう。しかし、そういう人は極めて稀です。
そもそも夢を語る人は、実現するための具体的な行動をしません。夢を語ってばかりいます。ですから、さすがに、2年も3年も「語るだけ」という姿勢をつづけることはできないのです。
以前は、
「英語をバリバリ勉強し、アメリカのシリコンバレーに渡って起業する」
と夢を語っていた人も、1年や2年も経つと、
「今は目の前の仕事がすごく忙しい。会社からも必要とされているし、子どもも生まれたばかりだから、英語の勉強もなかなか……」
と言いはじめます。
■ 夢は語らないと、はじまらない
よく言われることですが、「口」に「十」と書いて、「叶う」と書きます。ですから、十回ぐらいは口にしないと、夢も叶わないもの。
ですから夢を語るのは大いにけっこう。口にしなければ、何もはじまりません。しかし、語ることに労力をかけすぎると、いっこうに前へ進めないのも事実です。
なぜか?
「夢を語る」ということ、そのものが満足度の高い行為だからです。これまで夢を持ったことのない人が、やりたいことを見つけ、それを誰かに伝えると、誰もが皆、「がんばって」「応援してる」「すごいね。私もそんな夢を持ちたい」と言ってくれます。
何一つ成し遂げてもいないのに、夢を持って語るだけで称賛されるのです。
その気分を味わいつづけたいですから、いろいろな人に自分の夢を語るようになります。聞き手さえよければ、朝まで自分の熱い思いを語ることでしょう。そして周囲の人に、夢を持つ素晴らしさを語るのです。
そう。それはまさに「恋」と同じです。
■ 夢は恋と同じか?
恋をしたことがない人が、恋をすると、誰かに伝えたくなります。そしてそのことを知った周りの人から応援されます。羨ましがられます。だからこそ恋のすばらしさを朝まで語り、「みんなも恋をしようよ」と促します。
恋をしている人は、その恋がずっとつづくように、装いを新たにしたり、デートコースを吟味したり。彼や彼女に気に入られるように、ずっと努力することでしょう。
しかし、夢の場合は、異なります。
夢を語るときは、恋を語るのと同じように陶酔できますが、その夢を叶えるのは、そんなに簡単ではありません。夢のサイズ感にもよりますが、地道な努力を、相応の期間つづけなければ、叶わないのが普通です。
「シリコンバレーで起業し、世界的な企業を育てる」という壮大な夢に向かって、いざ英語の勉強をはじめようとしても、まず何からやったらいいかわからない。勉強しようとしたら、学生時代に習ったことをすっかり忘れていた。そして、なんといっても、英語を勉強するだけで、シリコンバレーで起業できるかというと、そんなわけがないことに気付いた――。
夢を語っているときは、周囲から「凄いね」と称えられていたのに、いざ行動を起こそうとすると、自分がいかに「凄くないか」を目の当たりにすることになります。
不断の努力が夢を叶えるのに必要であるはずなのに、夢を語って現実逃避することを覚えると、そのままずるずる時間を浪費し、結局は、
「今は目の前の仕事がすごく忙しい。会社からも必要とされているし、子どもも生まれたばかりだから、英語の勉強もなかなか……」
と言いはじめることになるのです。
繰り返しますが、夢が実現するかどうかはともかく、その夢を語ってばかりいる人は、なかなか具体的な行動をはじめられません。
いっぽう、夢を追いつづける人は、夢を語ることにそれほど労力をかけません。そんなことより、具体的にどうすればいいのか、今ぶち当たっている壁をどのように乗り越えるのか。そればかり考えます。
仲間と朝まで飲んで、夢を語り合うといった映画のワンシーンみたいことは、一年に一回ぐらいあればいいのです。
■ 具体的なアクションプラン
「夢を語る人」は、「夢を語る人」とばかり繋がります。だから、いつまで経っても前に進みません。ですから、できる限り「夢を追いつづける人」と定期的に接触したほうがいいでしょう。そうすれば、
「どうなってたら、世界的な企業になったと言えるの? そして、それはいつまでに実現させるの? そこから逆算すると、もう来年ぐらいには、シリコンバレーへ行って、人脈を作ったほうがいいんじゃないかな。英語の勉強は、そのあとでいいから」
などと、具体的なアクションプランを催促されることでしょう。そう言われて腰が引けるようであれば、単なる「夢を語って満足している人」だったのだと、自己認識すべきなのです。