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世界中を席巻する日本語ラップ曲「Mamushi」が示す日本音楽の可能性

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:ミーガン・ジー・スタリオン公式SNS)

日本語のラップ曲が、世界の様々なチャートのトップ10にまで入ってきていると聞いたら、皆さんは信じられるでしょうか?

そんな快挙を成し遂げたのが、アメリカのラッパーであるミーガン・ジー・スタリオンさんが、日本のラッパー千葉雄喜さんとコラボしてリリースした「Mamushi」という楽曲です。

にわかには信じられないかもしれませんが、実際に楽曲を聴いていただくと、この「Mamushi」という歌の半分近くが日本語で歌唱されていることに驚かれるはずです。

この「Mamushi」の大ヒットには、今後の日本音楽の未来の可能性が示唆されていると感じましたので、詳細をご紹介したいと思います。 

YouTubeで世界8位に到達

この「Mamushi」は、6月にミーガンさんがリリースしたアルバム「MEGAN」に収録された18曲の1曲ですが、リリースされた直後から世界中で話題となり、ビルボードのGlobal 200で29位、米国のHot 100でも36位を記録するなど大きな注目を集めていました。

そして、8月9日に満を持してYouTubeにミュージックビデオが公開されると、米国で人気のドラマ「TOKYO VICE」の笠松将さんが出演していることなども話題となり、世界のミュージックビデオの週間ランキングで40位にランクイン。
そして、先週は再生数2200万をたたき出し、世界8位にまでランクアップしてしまったのです。

実際に楽曲を聴いていただくと、この楽曲で千葉さんだけでなくミーガンさんも日本語歌唱をしていることに驚かれる方は少なくないと思います。

もちろん、ミーガンさんのメインのラップは英語で展開されていますが、歌のサビで「お金稼ぐ 俺らはスター」「お金稼ぐ 私はスター」という日本語が展開され、全体の印象は日本語の方が強い楽曲になっていると言えるでしょう。 

TikTokが後押しした大ヒット

今回の「Mamushi」のヒットを巨大なものにした要因の一つは、間違いなくTikTokのダンスチャレンジです。

「Mamushi」リリース翌日の6月29日に日本人ダンサーのMONAさんがサビの部分のダンスをTikTokに投稿すると、すぐにミーガンさんがInstagramにその動画を投稿。

(出典:ミーガン・ジー・スタリオン公式Instagram)
(出典:ミーガン・ジー・スタリオン公式Instagram)

さらには7月1日にミーガンさん自らもそのダンスを踊ったことで、爆発的に「Mamushi」のダンスチャレンジが広がるのです。

なにしろ現時点で、この「Mamushi」を使った動画は、TikTokに190万本も投稿されています。

(出典:TikTok)
(出典:TikTok)

同様にTikTokのダンスチャレンジ経由で世界的に大ヒットしたCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」は2ヶ月半で71万本だったことを考えると、この190万本という本数がいかに凄まじい数値か分かっていただけるのではないかと思います。

参考:ついに世界1位も獲得。勢いが止まらない「Bling-Bang-Bang-Born」の凄さ

世界中に響き渡る日本語ラップ

今回の「Mamushi」におけるミーガンさんと千葉さんのコラボは、ミーガンさん自身が大の日本のアニメ好きであり、日本のラップへのリスペクトもある方だからこそ実現した企画だったようです。

ただ、そのミーガンさんの日本や日本語のラップへの思いは、着実に世界中のミーガンさんのファンにも届いています。

象徴的なのは、7月にミーガンさんがロンドンで行った公演で、千葉さんと「Mamushi」を披露した際の映像です。

「Mamushi」がリリースされて、まだ1ヶ月も経っていないタイミングにもかかわらず、ロンドンのファンが二人に合わせて日本語のサビの大合唱をしているのが良く分かると思います。

さらにミーガンさんは、なんとカマラ・ハリス副大統領のアトランタでの演説の際に応援のパフォーマンスを行ったのですが、その際にも「Mamushi」を披露。

副大統領の演説会場に日本語を響き渡らせた上に、TikTokに民主党カラーの青いスーツ姿での「Mamushi」のダンス動画もアップされているのです。

(出典:ミーガン・ジー・スタリオン公式TikTok)
(出典:ミーガン・ジー・スタリオン公式TikTok)

参考:ハリス副大統領の演説で「日本語」が、メーガン・ジー・スタリオンが「Mamushi」を披露

ある意味では、現時点でこの日本語ラップ「Mamushi」のすごさを一番知らないのは日本人なのかもしれません。

日本語の楽曲も世界に通用する

もちろん、今回の「Mamushi」の大ヒットは、なんといっても楽曲をリリースしたミーガンさんが、世界中にたくさんのファンがいる人気ラッパーだからこその現象なのは間違いありません。

なにしろミーガンさんは、YouTubeの登録者は658万人、TikTokは1520万人、Instagramに至っては、なんと3236万人を超えるフォロワーがいる超人気アーティスト。

最も人気の動画の「Body」が1.6億再生を超えていると言えば、その影響力の大きさは伝わるでしょうか。

ただ、そのミーガンさんの最新アルバムの18曲の中で、日本語ラップの「Mamushi」が最大のヒットになっているというのは、日本音楽の未来にとって重要な示唆を含んでいます。

それは日本語の楽曲でも世界に通用するということです。

日本音楽に集まる注目

これまで日本の音楽業界にとって、日本のアーティストが世界でヒットするためには英語の曲を出さなければいけないというのが一般的な常識でした。

特に日本語ラップは、ながらく日本ですらダサいと言われることが多く、世界には通用しないと考える人が少なくありませんでした。

参考:なぜ「日本語ラップはダサい」と言われてきたのか…日本語と音楽の「意外な関係」

しかし、今回の「Mamushi」のヒットに見られるように、日本語ラップも間違いなく世界に通用します。

日本語の楽曲が世界で通用することは、既に米国のゴールドディスクを取った藤井風さんや、米津玄師さん、BABYMETALなど、様々なアーティストが証明してくれています。

本当に良い曲であれば言語の壁を越えることができることは、坂本九さんの「上を向いて歩こう」がヒットした時代から実は変わっていないのかもしれません。

さらに最近ではNewJeansが、日本語と韓国語と英語の3カ国語が混じったトリリンガル楽曲で世界のチャート入りしていますし、BLACKPINKのLISAさんも日本語を入れた楽曲をリリースして話題になっていました。

今回、世界的な人気ラッパーであるミーガンさんが日本語ラップに挑戦してくれたように、実は「日本語」の音楽は、これまでにないほどに世界のアーティストから注目されていると言うこともできるかもしれません。

今回の「Mamushi」のヒットをきっかけに、また私たちが驚くようなコラボが生まれ、日本の音楽がさらに世界に広がるきっかけになることを楽しみにしたいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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