【名古屋市】「夏本番に備えてカラダを整える」スパイスと発酵調味料を使った優しい味のモロッコ料理
今年の3月にオープンしたばかりの「Batoul(バトゥール)さんは、モロッコのカサブランカ出身のエットハミ ムライ アメドさん(以下、アメドさん)と、エットハミ ナホさん(以下、ナホさん)がご夫婦で経営されているモロッコ料理のお店です。
営業は毎週水曜日と木曜日のランチタイムのみが基本ですが、平日来店できない人のために、月に1 回程度、土曜日や日曜日にも営業することがあります。夜は予約が入ったときのみ対応しているそうです。今回は、モロッコ料理の特徴と食べた感想、また、お店の雰囲気だけでなく、お店をプロデュースしたナホさんの生き方までお伝えします。「こんな生き方もあるんだ」と、つい聞き入ってしまいました。
お店のイメージはマラケシュの建物の空間
名古屋市内でモロッコ料理を専門に提供するお店は、「Batoul(バトゥール)」さんを入れて現在 2 店舗のみ。かなり珍しいジャンルの料理であるため、モロッコ料理を知らないという人も多いのではないでしょうか。モロッコは北アフリカに属するイスラム圏の国で、旅行界わいでは青い街並みのシャウエンとピンクの街並みのマラケシュが人気です。
「Batoul(バトゥール)」さんの店内は、マラケシュの建物の空間をイメージしたというピンク色がメインカラーの内装でした。「私、ピンク色が好きなので」と言うナホさんが、自分で漆くいを塗って仕上げたものだとか。日本の漆くいとモロッコの漆くいはアルカリ濃度が違うため、仕上がりの質感が違ってきます。そのため、珪藻土やモルタルを混ぜるなどして工夫し、現地の空間を再現したそうです。
カウンターのみのこぢんまりとした店内には、モロッコの音楽「グナワ」が BGM として流れています。
足元のモルタルには、砕いた食器が埋め込まれていました。
ふと見上げた先には梁がむき出しの天井が。「天井をめくってみたら梁がでてきたのです。モロッコの家の天井がまさにこんな感じだったので、『これでいこう』って」とナホさん。
お店の奥の厨房には調理担当のアメドさん。お店のドアを開け、一歩足を踏み入れた瞬間、もうそこはモロッコでした。
ランチメニューはおまかせのプレート料理
「Batoul(バトゥール)」さんのランチはスープを添えたプレートで提供されるもので、料理のみ、またはデザート付きを選ぶことができます。
最初にいただいたのはクスクスのサラダ。きゅうりとパプリカをあわせたもので、とてもやさしい味でした。
続いてニンジンのサラダ。スパイスの風味を軽く感じます。サラダの脇に添えられていたハリッサ(唐辛子やスパイスなどをブレンドしたペースト)を絡めて食べるとさらに美味しい。
そして、メインのお肉。スパイスと発酵レモンを混ぜたスープで煮込んだ鶏肉をオーブンで焼いたもので、お肉の食感は肉々しく食べごたえがあります。スープはスパイスの風味を感じるものですが、それほど強くありません。パンをちぎってスープに浸し、お肉と一緒に食べるのがオススメ。スープのうま味が倍増します。
モロッコ料理の特徴
スパイスを使う料理の代表格としてインド料理があげられますが、それと比較するとモロッコ料理はインド料理のようにガツンとくる味付けではなく、とても優しい味付けです。スパイスは、素材のうま味を生かすための脇役に徹しているといった印象を受けました。味付けにはスパイスの他、オリーブオイルと塩が使われています。ブイヨンやその他の添加物は入れません。素材と素材の組み合わせ、スパイスの組み合わせ次第でさまざまな風味を味わうことができるのだそうです。そして、料理に応じて発酵レモンが加わります。
インドをきっかけに視点は海外へ
アメドさんが作った美味しいモロッコ料理を味わった後、甘いミントティーをいただきながら、お店をプロデュースしたナホさんにインドやモロッコと関わることになったきっかけから、お店を開店するまでの軌跡を話していただきました。
「もともと建築を学びにインドに留学しました。北インドに、チャンディガール裁判所という施設があるのですが、この建物のデザインにすごく魅力を感じて『これを生み出した本場で勉強したい』と思いました。この留学がインドとの最初の接点ですね。滞在中、建築以外に現地の家庭や食堂などで料理を学ぶ機会に恵まれたこともあって、スパイスとインドをとりまく食文化にも興味が湧いてのめり込んでいきました」(ナホさん)
インドで建築と料理を学んだナホさん。インドの大学を卒業した後はアメリカに留学して建築デザインを学び続けます。同時に、料理に対する探究心もますます高まっていったそうで、渡航先では興味を持ったお店の厨房の仕込みを手伝いながら料理を覚えたのだそうです。
仕事感
学びを終えたナホさんが最初に就職したのは海外の航空会社でした。「きっちりしすぎていないところが自分に合っていた」のだとか。ところが、その国が突然、軍事政権となり即出国しなければ命の保証はないという状況下に置かれてしまいます。即日解雇となり、やむなく帰国したナホさん。帰国後は、新たな職場となる NGO 系の組織に参加し、カンボジアのプノンペンに滞在しながら インフラ整備に携わっていたそうです。1999 年から 2000 年頃のことで、この頃のカンボジアはポルポト政権を崩壊させた内戦の影響が色濃く残っており、厳戒令がしかれていました。そのような過酷な環境下で1年半ほど活動します。その後、職場を変わりながら、バックパッカーとしてアジアの国々やモロッコなどを旅していたそうですが、やがて「勤め人は合わない」と感じて独立することに。「当時、インド料理とモロッコ料理の教室を始めようとしていました。それを友人に話したところ、『モロッコ料理なんて食べたことがない人がほとんどなのに、そんな知らない料理を習おうという人なんているわけないよ』と反対されました。でも、彼女は実際にその教室をやっていたわけではないし、経験がない人に言われてもピンとこなくて『やらなきゃわからない』と思って始めてしまいました(笑)」(ナホさん)こうして始めた教室は大盛況で、今年で 14 年目だそうです。生徒さんは、飲食店を営むオーナーシェフが 3 割ほど、残りはインド料理やモロッコ料理に興味を持った一般の方なのだそうです。
「初めにきちんとした計画をたてるのは苦手」というナホさん。おそらく、持って生まれた対応力が群を抜いているのでしょう。海外に飛び出してから、絶えずリスクのそばに身を置いていたと思いますが、その経験が彼女の対応力をさらに高めていったのかなとも感じます。こうした生き方は、誰もがまねできるものではありません。また、お勧めするわけではないのですが、今、閉塞感を感じている人がいるとしたら、何らかの行動を起こすための良い刺激になるのではないでしょうか。
経験の集大成
現在、アメドさん、ナホさん共に自分の事業を持っており、ナホさんは料理教室以外に古民家のリノベーションにも取り組んできたのだそう。手掛けてきた物件数は 10 以上とのことで「民泊や保護猫カフェなど、自分の事業に使ったり、企業にオフィスとして貸し出したり、半々くらいですね」(ナホさん) 今回お伺いした「Batoul(バトゥール)」さんは、こうした彼女の経験を統合して形にしたものなのかなという印象を受けました。モロッコ料理を初めて食べたお客さんからは、「さわやかで美味しかった」「食べやすいんですね」と言ってもらえるそうで、「モロッコ料理をもっとたくさんの人に味わってもらいたいですね。このお店がそのきっかけになればいいなと思っています」とナホさん。
料理教室も運営されているため、モロッコ料理を気に入って自分でも作ってみたいと思ったら教室で習うこともできます。まだまだマイナーなモロッコ料理ですが、食べやすくヘルシーな料理。ホームパーティなどでモロッコ料理を披露したりしたら一目置かれる存在になりそうです。あなたがまだモロッコ料理を食べたことがないならば、ぜひ、味わっていただきたいものです。
店舗情報
店名:Batoul(バトゥール)
住所:名古屋市昭和区滝子通 4-8-6
営業時間::11:00~15:00 ディナーの予約は Instagram の「メッセージ」から受付
営業日:水曜日 木曜日 他店舗カレンダーによる
公式 Instagram
施設情報
施設名:スタジオ 168 (料理教室など)
住所:名古屋市東区東桜 2-14-10 宝東新ハイツ 5F 一番奥
連絡先:168studio168@gmail.com
公式サイト:外部リンク