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日本人ファンに知られた選手同士によるIBF暫定ウエルター級王座決定戦

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
写真:TASS/アフロ マレーシアで生活するアブドカクロフ

 10月24日にセルゲイ・リピネッツ(31)とクドラティーリョ・アブドカクロフ(27)が、IBF暫定ウエルター級王座決定戦を行うことが決まった。

 本来、同ファイトは10月10日に予定されていたが、ウズベキスタン人であるアブドカクロフのビザの発給が遅れ、延期となった。両者共に日本人選手と対戦しており、馴染み深いファイターだ。

 ロシア人であるリピネッツは、2017年11月4日にIBF世界スーパーライト級王座決定戦で、近藤明広に判定勝ちしてチャンピオンとなった。しかし、初防衛に失敗。王座転落後、階級を上げて再起した。

 昨年7月20日にWBOウエルター級インターコンチネンタルタイトルを獲得して以来のファイトとなる。戦績は16勝12KO1敗。

写真:AP/アフロ 2017年11月4日には近藤明広を判定で下したリピネッツ
写真:AP/アフロ 2017年11月4日には近藤明広を判定で下したリピネッツ

 対するアブドカクロフも、2019年3月30日に小原佳太とグローブを交え、判定勝ちを収めた。目下17戦全勝9KO。

 ウズベキスタンで誕生し、マレーシアの首都クアラルンプールに居を構える。アメリカデビューが、小原戦だった。

 アメリカ進出第2戦で、WBAウエルター級王座に就いたことのあるサウスポー、ルイス・コラーゾを下して今回のチャンスを得た。24日は、合衆国での3戦目となる。

 SHOWTIMEが、ロシア人vs.ウズベキスタン人をメインイベントとした放映を決めた点が興味深い。PPVを売るべくチャーロ兄弟のようなビッグイベントを組む一方で、地味なカードも手掛けるのは、ボクシングの中継で勝負しようとする決意の表れか。

 カザフスタン出身のGGGはパウンド・フォー・パウンドとされながらも、それに見合うファイトマネーを与えられない。玄人受けはするが、なかなか米国で人気選手の仲間入りを果たせないからだ。2017年3月18日にダニエル・ジェイコブスを下したファイトで250万ドル。同年9月16日にサウル・カネロ・アルバレスと引き分け、WBA/WBC/IBF統一ミドル級タイトルを防衛した際も、カネロの保証額が500万ドルであるのに対し、チャンピオンのゴロフキンは300万ドルしか得られなかった。

 リピネッツとアブドカクロフは、米国でいかなる道を拓くか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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