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極端になっている近年の台風 令和2年の少ない発生と上陸ゼロ

饒村曜気象予報士
北西太平洋に散在する台風14号(図中の円)などの雲(9月29日12時)

令和2年(2020年)の台風

 近年の台風は、統計的にみて、いろいろなことが極端になっています。

 令和2年(2020年)の9月末は、台風13号が日本のはるか東海上を北上中です(図1)。

図1 台風13号の進路予報(9月30日0時の進路予報)
図1 台風13号の進路予報(9月30日0時の進路予報)

 台風の進路予報は最新のものをお使いください

 さらに、北西太平洋には、台風13号以外にも、積乱雲の塊が散在していますが、すぐに台風14号に発達しそうな積乱雲の塊はありません(タイトル画像参照)。

 従って、台風発生数は、9月末で13個になりそうです。

 毎年4個以上発生している7月の台風発生数が統計史上初めて0個であるなど、7月までの台風シーズン前半の発生数が極端に少なかったことに加え、8月から9月の台風シーズン後半はほぼ平年並みで、前半の少なさをカバーできませんでした(表)。

表 令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数
表 令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数

 台風の統計がはじまった昭和26年(1951年)以降、9月末までの台風発生数は、平均で18.9個ですから、令和2年(2020年)は、その約3分の2です。

 10月以降も台風が発生しますが、平年よりかなり多く発生しないと、平年の年間発生数26個には達しません。

 なお、令和2年(2020年)の9月末までの台風発生数を13個とすると、昭和26年(1951年)から令和2年(2020年)の9月末までの台風発生数の平均は18.9個です(図2)。

図2 9月末までの台風発生数
図2 9月末までの台風発生数

 そして、これまでの最少は平成10年(1998年)の9個ですが、これよりは多いものの、平均よりはかなり少ない発生数でした。

【追記(9月30日17時)】

 日本のはるか東海上の台風13号は、9月30日15時に温帯低気圧に変わりました。

 台風のタマゴである熱帯低気圧もありませんので、令和2年(2020年)は9月末までの台風発生数は13個で確定しそうです。

台風の上陸数

 近年、台風の発生数より、台風の上陸数のほうが極端になっています。

 気象庁では、台風の気圧が一番低い場所が、九州・四国・本州・北海道の上にきたときを「台風上陸」といいます。

 島の上の通過や、岬を横切って短時間で再び海に出る場合は上陸ではありません。

 この定義による台風上陸数は、平年(昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)の30年平均)では2.7個です。

 そして、平年でいえば、10月以降の上陸数は0.2個です。

 このため、令和2年(2020年)の台風上陸数は0個になる可能性が高いといえます。

 昭和26年(1951年)からの30年間では、上陸数の最大が5個、最小が1個と台風が上陸しない年はありませんでした(図3)。

図3 台風上陸数の推移
図3 台風上陸数の推移

 しかし、昭和59年(1984年)に初めて上陸数が0個となるなど、昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)までの30年間では、上陸数0個が4回もあります。

 その反面、平成16年(2004年)は上陸数が10個となるなど、上陸が多い年も増えています。

 前の30年間に比べ、平均値は3.0個から2.7個と少し小さくなるものの、標準偏差は1.2個から2.1個とかなり大きくなっています。

 この傾向は、平成23年(2011年)以降も続いているように思います。

10月も台風シーズン

 10月以降の台風上陸数の平年は0.2個と、台風が全く上陸しないわけではありません。

 5年に1回は上陸しており、昨年、令和元年(2019年)も、関東甲信地方や東北地方などで大規模な被害が発生した台風19号(東日本台風)が上陸したのは、10月12日のことです。

 昭和26年(1951年)以降、10月以降に上陸した台風は19個あります。

 このうち、昭和26年(1951年)からの30年間で7個、昭和56年(1981年)からの30年間で8個、そして、平成23年(2011年)からの9年間で4個(30年で13個に相当)です。

 近年は、数は少ないといっても、10月以降に上陸する台風が増加傾向です。

 また、台風が上陸しなくても、接近して大雨を降らせることがあり、10月も台風シーズンです。

 まだまだ台風に対して、気を抜くことはできません

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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