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奮闘する真木よう子は「コードブルー」に勝てるのか?〜Twitterと視聴率の関係を再度考察する〜

境治コピーライター/メディアコンサルタント
データ提供:データセクション社

「コードブルー」のフォロワー数、17万を突破

フジテレビ月9枠で鳴り物入りでスタートした「コードブルー」が初回視聴率16.3%と好発進した。月9としても久々の高い数値だし、このクールのドラマ全体の中でも断然高い。

一方、上のグラフを見てもらうと、今期のドラマのTwitter公式アカウントのフォロワー数でも「コードブルー」はダントツなのがわかる。スタート日の7月17日時点で14万を超えていたが、その後も伸びて現在17万を超えている。

ドラマのTwitter活用はすでに当たり前になりつつあるが、スタート時にここまでフォロワー数を増やした例はそうそうない。ただこのところ、各ドラマとも早くからTwitter公式アカウントを立ち上げており、「コードブルー」も3月半ばにはすでにアカウントをつくっていた。他のドラマも5月6月から立ち上げているものがほとんどだ。

「コードブルー」の視聴率の高さとフォロワー数を見ると、Twitterが視聴率アップに貢献したかに見える。だがそれほど単純ではなさそうだ。

上のグラフで次にフォロワー数が多いのは同じフジテレビ系(制作は関西テレビ)の火曜9時枠「僕たちがやりました」だ。放送前日には10万に迫るまでになり、放送中もTwitterは盛り上がっていた。現在はフォロワー数が11万に達している。

ところが今朝の報道によれば、視聴率は7.9%だったそうだ。この枠は前のクールの「CRISIS」がテレビドラマの枠を越えたと話題で、平均視聴率が10%強だった。そこからすると、Twitterのフォロワー数とは関係なく、前のクールより低いスタートとなってしまったことになる。

Twitterには視聴率を高める効果があるのかについては、筆者も前々から観察してきて、2つの壁があると考えている。

  1. テレビ視聴者の高齢化・・・視聴率調査は日本の人口動態にきちんと合わせてあるので、高齢層が見る番組ほど視聴率が高くなる。若者層がメインユーザーであるTwitterの盛り上がりは高齢層には影響しにくい
  2. テレビ視聴の規模・・・視聴率を動かすには百万人単位で人びとの視聴行動を促す必要がある。フォロワー数が10万を超えても、視聴率に影響をもたらすほどの人数を動かすのは難しい

このことは、テレビ局もわかっていることだろう。ではドラマの公式アカウントには意味がないのだろうか。テレビ局はなぜフォロワー数を増やすのだろうか。

「逃げ恥」と「カルテット」に見るTwitterとドラマの関係

ここで、もうひとつのグラフを見てもらおう。

データ提供:データセクション社
データ提供:データセクション社

こちらも、上のグラフ同様ソーシャルメディアの分析で知られるデータセクション社に作成してもらったものだ。今期のドラマでフォロワー数が多い3つと、Twitterが盛り上がった過去のドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」と「カルテット」を比べたものだ。日付は、どのドラマも“今月はじまった“と仮定して合わせてある。

過去のドラマは2つとも、スタート時のフォロワー数は「コードブルー」や「僕たちがやりました」より少ないが、ドラマが進むうちに増えている。とくに「逃げ恥」は50万近くにまで増え、どれだけ盛り上がったかがわかる。

そして「逃げ恥」は10.2%でスタートした視聴率が最終回で20.8%に倍増し、星野源の曲もヒットしてブームとなったのは記憶に新しい。大ヒットした、そのペースに沿ってフォロワー数が増えている。ということは、Twitterが盛り上がれば、スタート後のドラマの視聴率は動かせるのかもしれない。

だが一方で「カルテット」はフォロワー数が順調に増え、Twitterも異様なほど盛り上がったが、視聴率は平均で10%を越えられなかった。

結局、Twitterが視聴率を動かすことはなく、むしろ視聴率が上がるとTwitterのフォロワー数を増やす、という当たり前の関係しか見えてこない。

ただ、「カルテット」とTwitterについては、先日Screensというサイトにこんな記事がでた。

「ドラマ『カルテット』とTwitterから見えた“視聴率とトレンドワード”の関係性」(Screens/7月10日)

Twitterにドラマの内容に関連するワードが”トレンド入り”すると視聴率に影響が出る・・・ように思える、というような話だ。この記事はその点のみならず「カルテット」とTwitterとの関係について語られ、作り手もウォッチしていることがわかり面白い。

この記事からは、作り手がTwitterから何かを見出そうとしていることがよく伝わる。視聴率に直接影響が出るかどうかだけでなく、そこにある何かを探り当てようとしている。ドラマとTwitterの関係は、そんな模索の真っ最中なのだと思う。

真木よう子の根性のTweetは視聴率に影響するか?

やはりフジテレビの木曜10時枠で先週スタートしたのが「セシルのもくろみ」。真木よう子が地味なヤンママを演じ、読者モデルとして上をめざして奮闘する物語だ。その真木よう子はTwitterをはじめたばかりとかで、ちょうど自分が取組んでいるドラマについて"根性Tweet"を投稿している。中でも、放送開始直前に“土下座“してドラマをアピールしたTweetは話題になった。

他にも出演者たちとの写真を投稿するなど、まるでドラマの公式アカウントのような投稿が続く。

主演女優の責任感なのだろう。必死と言っていいレベルだ。

ところが!フタを開けると初回視聴率が悲しい結果になってしまう。

今期のプライムタイムのドラマとしてはワースト。だがめげない彼女はこうTweetした。

めげずに頑張ると言うのだ。そして根性Tweetを続けている。

ちなみに真木よう子のTwitterのフォロワー数は14万を越えている。「コードブルー」が3月からはじめて放送日までに到達した数に、6月末にTwitterを開始して1カ月も経たないうちに達している。

こうなると、フジテレビが全社を挙げて力を注ぐ「コードブルー」に、Twitterで孤軍奮闘する真木よう子は勝てるのか?と外野としては囃し立てたくなる。もしそうなったら、いや少しでも報いることができれば、Twitterと視聴率の関係に新たな事例をもたらすかもしれない。そんな冗談半分のやじ馬根性で、今期のドラマを楽しんでみたい。

コピーライター/メディアコンサルタント

1962年福岡市生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社しコピーライターになり、93年からフリーランスとして活動。その後、映像制作会社ロボット、ビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランスとなり、メディアコンサルタントとして活動中。有料マガジン「テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder」発行。著書「拡張するテレビ-広告と動画とコンテンツビジネスの未来」宣伝会議社刊 「爆発的ヒットは”想い”から生まれる」大和書房刊 新著「嫌われモノの広告は再生するか」イーストプレス刊 TVメタデータを作成する株式会社エム・データ顧問研究員

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