Yahoo!ニュース

最新作『007 スペクター』が全貌を現し、ダニエル=ボンド、見納めの可能性

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『007 スペクター』でヘリコプターを操縦するボンド役、ダニエル・クレイグ

10月26日(現地時間)、ロンドンで、ウィリアム王子夫妻らも出席したロイヤル・プレミアが行われ、『007スペクター』がお披露目された。

次を演じるかどうかは僕の意思次第

現在、ジェームズ・ボンドと聞けば、この人の顔が浮かぶように、すっかり役に定着したダニエル・クレイグ。4度目となるボンド役を今回も体当たりで演じているが、この人、前作の『007 スカイフォール』の時から、「もうボンド役はこりごり」という発言を、折に触れて口にしている。一応、もう一作ボンドを演じる契約を結んでいるダニエル。しかし、この『007 スペクター』の撮影現場であるメキシコで取材した際も、「契約は存在するかもしれないが、次もボンドを演じるかを決めるのは、あくまで僕の意思次第。どうなるか分からないよ」と、決定権は自分にあることを必要以上に強調していた。

イオン・プロダクションが製作した、正式な「007」シリーズはこれまで24本あり、ダニエルを含め、6人の俳優がボンドを演じてきた。

ショーン・コネリー 6作

(※イオン・プロ以外の「ネバーセイ・ネバーアゲイン」は含まず)

ジョージ・レーゼンビー 1作

ロジャー・ムーア 7作

ティモシー・ダルトン 2作

ピアース・ブロスナン 4作

ダニエル・クレイグ 4作(現時点)

レーゼンビーとダルトンは、あくまで“番外”的な印象で、残り4人のボンド役が多くの人のイメージに定着している。こうして振り返ると、ショーン、ロジャー、ピアースは4〜7作でシリーズを卒業しているわけで、ダニエルのボンドもそろそろ終わってもおかしくない。

ボンド役はうんざり。このグラスで手首を切った方がまし」などと物騒な発言もへっちゃらのダニエル。先日行われた、HFPA(ハリウッド外国人記者クラブ)の会見でも、ダニエルは記者たちとの恒例の写真撮影を断って、会見場を後にしたという。基本的に取材嫌いな彼のことなので、とくに驚くべきではないが、やはり今後のボンド役について、あれこれ聞かれたくないのかもしれない。

しかし、シリーズのプロデューサーであるバーバラ・・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンは、絶対にあと1回はダニエルにボンド役を演じさせるつもりらしい。

過去3作のドラマが、一定の決着をみせる

今回の『007 スペクター』は、ジェームズ・ボンドの少年時代が描かれ、ダニエルのボンドが過去3作で出会った敵や女性とも深いつながりがある宿敵が現れ、過去をすべて精算させるドラマも用意された。つまり、ここでダニエル=ボンドが終わっても、ある一定のカタルシスは与えられる。そしてもちろん、本作の後の物語も予感されるので、次の25作目にダニエル・クレイグが戻ってきても違和感はない。

要するに、ダニエルが降板しても、継続しても、どちらでもいい終わり方なのである。

そのうえで、次の条件を考えると、ダニエルにとってもひとつの区切りになる可能性も…。

・2作続いたサム・メンデス監督は、次は降板する。

・日本を含めて世界配給を手がけてきたソニー・ピクチャーズは本作で契約が終わり、次の第25作はおそらく他社に移る。

というわけで、25作目はさまざまな周囲の環境変化が起こるのだ。ただ、『007 スカイフォール』の後も、「辞める」発言を撤回しているので、ダニエルの気分もしばらく揺れ続けるのは確かだろう。

いろいろ考慮すると、ダニエルが本作でボンドを降板する確率

70%

25作目もダニエルが演じ続ける確率

30%

あたりではないだろうか。

現在、もちろん噂の域は出ないが、次のボンド役として名前が挙がっているのは、ジェイソン・ステイサム、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディ、『パシフィック・リム』、『マンデラ 自由への長い道』のイドリス・エルバ(任されれば黒人初のボンドとなる)など。もちろん、全員がイギリス出身である。

あれこれと憶測が流れるなか、いずれにしても、『007 スペクター』をダニエル・クレイグの最後のボンド役と思いながら観れば、彼の表情から何か、強い意思を感じられるはずだ。

『007 スペクター』

12月4日(金)、全国ロードショー

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

斉藤博昭の最近の記事