PS5の転売ツイート横行 希望小売価格でいつになれば買える?
予約が殺到し、12日の店頭販売を見送るほどの人気となっている新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」。残念ながらツイッターでは同機の転売を呼び掛けるツイートが横行しています。希望小売価格(4万9980円と3万9980円の2種類、税抜き)での入手は当面厳しい……というボヤキもあります。
ただし、過去のゲーム機の販売状況を考えると、PS5の品不足は長期間続かないのではないでしょうか。
◇転売の“購入希望”も…
PS5の転売は一時期に比べると静かに見えます。大手通販サイト「Amazon.co.jp」では予約受付の開始直後に、最大10倍の価格で売られていましたが、今は「現在在庫切れです」と表示されて転売は見られません。アマゾンから販売の許可を得た業者が出品する「マーケットプレイス」で、PS5の出品ができないからです。
他の通販サイトもPS5の抽選にあたり、購入履歴のある人のみを対象にするなど、転売の封じ込めに一定の成果を上げているようです。ただし、個人の小規模転売を封じるのは、厳しいのが現実です。違法でないためメーカー側や販売店からは「転売はしないで」というお願いが精いっぱいでしょう。
転売の“相場”は、8~12万円という感じでしょうか。そして残念なことに、ある程度の覚悟をして購入希望をするツイートもありました。抽選に外れた人のあきらめや嘆きの声もあります。しかし、冷静になることも大事です。
◇発売日の購入が大変なのは予告済み
まずソニーの経営者の視点で考えてみましょう。
新型コロナウイルスの感染拡大という不確定要素のある中で、PS5の初年度の世界出荷数は「760万台以上」の予定です。約7年前のPS4の初年度出荷数を超えるのは確実です。そして新型ゲーム機は、発売日に一気に売れる傾向があり、その中でもソニーのゲーム機は、その傾向が強く出ます。
コロナの巣ごもりに加え、世界的な需要の高まりがある中で、世界中のユーザーの希望をすべてかなえるのは難しく、どうしても優先順位が付きます。今回の予約不足を見て「日本市場の軽視」という声もありますが、他地域のゲーマーも「我々の地域を優先して」と思っているはずです。何より日本の優先を主張することは「他地域を軽視しろ」と同じ意味になります。
PS5の初回出荷の多くが投入されるであろう地域は、据え置き型ゲーム機の主戦場である北米です。具体的には、商戦期「Thanksgiving(サンクスギビング)」(11月第4木曜日)までに可能な限りPS5を投入し、マイクロソフト(MS)の新型ゲーム機「Xbox Series X(XboxSX)」を上回って勝利することが最優先となります。理由は、米国で勝利しないと、イメージ戦略で後れを取る可能性があり、後々に響くからです。
日本でのPS5の初回出荷不足を解消する方法は、PS4のように発売時期を後にずらすことでしたが、その手は避けました。もちろんXboxSXの世界同時期発売というライバルの動向も影響しているでしょう。それでも、日本への配慮には違いありません。
現行機のXbox ONEでは完敗したとは言え、MSはソニーの倍以上の売上高を誇り、高利益体質の難敵です。PS5が苦戦して後れを取るシナリオも十分あり得ますし、当のソニーの危機感も相当ある……と取材する側からすると見えます。
そして日本と米国の同時期発売が確定した段階で、情報に敏感なユーザーはPS5の品不足を予想し、覚悟していたはずですが、その話は忘れ去られている……という気がします。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の社長が直々に「発売日の入手は大変」と予告していますが、なかなか伝わらないわけです。
「ユーザーの要望に応えるのはビジネスの基本。商品をそろえられない方が悪い!」というのはある意味その通りですが、ゲーム機は売れ幅が激しいのも確かです。どの企業でも欠品は機会ロスですし、それを一番避けたいのはメーカーと販売店です。またスイッチやニンテンドーDSライトを作った任天堂をはじめ、人気商品を生み出す企業ほど「失格」になってしまいます。
◇7年前のPS4発売を振り返る
2014年2月に日本で発売されたPS4は、発売日こそ品不足になりましたが、その後すぐ店頭に並んだため、転売は軒並み失敗しています。一方で、PS4は世界的に品不足になり、初年度の世界出荷計画を500万台から760万台に一気に増やしたものの、欧米では品不足が半年以上続きました。なぜ日本だけ品不足にならなかったのでしょうか。
参考ですがファミ通によると、PS4の初週販売数は約32万台、初年度(約6週間)は累計約49万台でした。初週を除外すれば、週平均3万台を供給していたことになります。それで3月には店頭に商品が並んでいたのです。「50万台は少ない!」となりそうですが、PS4のときはこれで日本の初期需要のバランスが取れたのです。
なおPS5の日本への出荷割り当ては未公表ですが、ある程度の推測はできます。日本のシェアは1割弱なので、初年度の世界出荷数の760万台の1割弱……70万台ではないでしょうか。PS5の需要が増えると見越しても、上記の需要を満たせる数は割り振られている計算になります。
次に、転売をする側の視点で考えます。転売ビジネスの悪夢は、単価の高いPS5が、狙い通りに売れないことです。今年のコロナの「ニンテンドースイッチ」の転売で味をしめた人もいるでしょうが、普段ゲームをしない客層を取り込んだスイッチとは違い、PS5は高額ですし、発売初期ゆえにユーザーが限られる商材です。
つまり購入希望者が転売の誘惑に少し耐えるだけで、高騰している転売PS5がだぶつく可能性があるのです。発売日に買えなくても、定期的に出荷されるので、ネットをチェックして応募すれば普通に手に入る可能性があるのですね。個人的に言えば、11月は米国、12月は欧州、その後は日本へPS5への割り当てが増えるのでは……というのが読みです。特に年明け以降、需要の一段落するタイミングは「PS5入手の狙い目」でしょう。
転売対策の第一は、潤沢な商品供給ですが、それができない場合は品物を切らさず定期的に出荷し、購入者の望みをつなぐことです。転売をする人が買い占めても、資金に限界があります。PS5の専用ソフトもまだそろっていません。転売に手を出すほど無理をして買う理由はないのです。
転売も売れなければ手を引くしかありません。転売をする人に「ゲームの転売は割に合わない」と思わせるしかないのですね。
◇転売のPS5を買うリスク
今回の品薄で、思い出すのは2006年のPS3でしょうか。初週の日本の販売数はわずか8万台で、日本だけで2000万台以上を売ったPS2の後継機としては、あまりにも少ない数でした。しかし、PS2も、携帯ゲーム機「PSP」のときも人気だったのは同じです。そしてPSPのときは、心のない販売店が希望小売価格の2倍で売ったりしてファンから反感を買っていました。今と似たことはこれまでも起きているわけです。
転売は「違法」ではありませんが、トラブルと表裏一体です。PS5のような高額商品は、何かあったときに相談できる販売店と違い、取引相手の信用問題……だまされる可能性、保管が甘く商品が正常に作動しないリスクなどもあります。発売日に欲しいというだけで数万円上乗せして転売商品を買うのは、あまりにも割に合わないと思うのです。
ゲームが大好きだからこそ、転売の誘惑には乗らず、ゆったり構えるのが「最善の手」です。転売をする人が「高くても買ってくれる。ゲーム機の転売はおいしい」と考えるからビジネスになるわけです。「PS5がすぐにやりたい」というゲーマーの熱意と愛に、転売をする人たちはつけこんでいるわけです。
PS5の購入希望者が困っているように、メーカー側や販売店も同じで、売る側の対策にも限界があります。そういう意味では、PS5の転売ビジネスを「ゲームオーバー」に追い込むカギになるのは、ゲーム好きのひとりひとりの心がけです。答えはシンプルで、転売に手を出さなければ、転売をする人を確実に苦しめることになるのです。
「PS5を希望小売価格で買えるのはいつ?」の答えは、「発売日のすぐ後から」です。定期的に出荷しているのですから、各社の通販サイトをしっかりチェックすれば、運が良ければすぐに、そして予約抽選を繰り返すほど手に入る可能性は高くなるのです。