PS5の出荷数はPS4のローンチ時より多い MSの低価格ゲーム機は気になるが… SIE社長に聞く
11月に世界同時期発売が決まったソニーの新型ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」。17日早朝に開催され、世界各国の発売日と価格が発表されたイベントの直後に、ソニーの常務も兼任するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のジム・ライアン社長に話を聞きました。
ーーPS5の出荷計画数は?
商戦期・年度末と比べて、PS5の出荷数は(現行機の)PS4(のローンチ時)よりも多いことは言えます。新型コロナウイルスの影響があったにもかかわらず、(上回る台数を)達成できる(見通しである)ことはすごいと考えています。
ーー2013年10~12月のPS4の世界出荷数は450万台ですから、それよりも上?
ワールド・ワイドの数字がそうであれば、それよりたくさん売ることになりますね。
ーーPS5の価格はいつごろ決定しましたか。
2020年の初頭に「この価格で行こう」と決めました。可能な限りベストな価格にして、ユーザー数を膨らませようと思ったのです。399ドルは、PS4のプライスポイント(一番多く売れる価格帯のこと)でしたから。
ただ価格を決めても、(新型コロナなど)いろいろな出来事が起こりました。「PS5を今年に発売できるのか?」と考えないといけないときもありましたから。そして「(生産できるし)大丈夫。ローンチできる」と分かったときも、(世の中が経済的に苦しい中で)この金額を払ってくれる人がいるのか? 人々は外出できるのか? 販売店は営業できるのか?などの疑問がありました。
ーーマイクロソフト(MS)が低価格のゲーム機「Xbox Series S」を発売します。299ドルの価格は気になりませんか。
もちろん、価格は(ゲーム機の普及に)重要な要素ですから、「ない」といったらウソになりますね。ただし、ゲーム業界の歴史を振り返ると、一般論として価格を低く抑えるためにスペックを下げたゲーム機は幸せになりません。我々にもその経験があるし、他社もそうだと思います。将来……3年後も、ちゃんと使えるゲーム機であって欲しいと思うのです。
ーー399ドルという価格ですが、生産コストが販売価格を上回る「逆ザヤ」はないでしょうか。
その点については公表しないのですが、このプライスポイントであれば、ソニー全体の財務の数字(ゲーム事業の目標)を達成できると考えています。
ーー11月に世界同時発売します。PS4のときのように、慢性的な品不足になる可能性はありませんか?
供給に関しては、お話した通り(PS4の出荷数より上)ですが、需要に関しては(完全に)予測ができません。少なくとも、発売日の段階でPS5を手にしようとすれば、かなりの努力が必要と思います。
ーーPS5の売れ行きが好調であれば、増産の計画もありえますか?
(他の商品でも)いつも、そうしていますし、慎重に需要の分析はしています。2021年の生産能力を正確に予想するべく力を尽くしています。
ーー以前のインタビューで、PS4の日本の発売時期を遅らせたことを後悔していました。その場で「PS5は世界で年末商戦期に発売するつもり」と言わなかったのはなぜですか。
それは、最終的な決定がされていなかったからです。インタビューでも話した通り、私自身はPS5を日米同時発売をしたいと思っていましたが、決定を100%にするには、さまざまなピース(かけら)がはまらないとダメでした。だから、そのときは言えなかったのです。
ーー日本では、任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」の転売が横行しています。PS5もターゲットになる可能性はありますが、その対策は。
それに関しては、販売店と協力していかなければいけないと思います。転売はもちろん減らさないといけませんが、我々独自の努力だけではどうにもなりませんから、(販売店と)緊密に協力したいと思っています。
◇プロフィール
1959年、英ニューカッスル出身。1994年、ソニー・コンピュータエンタテインメントヨーロッパ(SCEE)入社、2002年7月にSCEEのエグゼクティブ・バイス・プレジデントに。2018年、SIE副社長、同年6月に親会社のソニー執行役員に就任。2019年4月からSIE社長で現在に至る。同年6月からソニー常務も兼任。