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「植民地主義を肯定する差別的表現だ」ミセス新曲『コロンブス』MVの炎上と公式の対応 #専門家のまとめ

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
問題となったMVの1シーン。YouTubeより筆者キャプチャ

 ロックバンド『Mrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)』が6月12日に公開した新曲『コロンブス』のMV(ミュージックビデオ)が、「植民地主義を肯定する差別的な表現だ」として炎上し、13日に非公開となりました。

 どのような内容のMVだったのか? そして公式がどんな対応を取ったのかをまとめました。

ココがポイント

▼12日、『コロンブス』MV公開。「猿人類に技術を教える」表現が先住民を思い起こさせ、植民地主義を肯定するようだと騒ぎに

Mrs. GREEN APPLE「コロンブス」Official Music Video(YouTube。リンク先は現在非公開)

▼13日、所属元のユニバーサル ミュージックが「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現があった」とMVの公開を停止

Mrs. GREEN APPLE 「コロンブス」ミュージックビデオ公開停止に関して(Mrs. GREEN APPLE OFFICIAL SITE)

▼同日、ミセスのボーカル大森元貴さんが「類人猿を人に見立てた意図はなかった」とMV制作の経緯を説明。あわせて謝罪した

Mrs. GREEN APPLE 「コロンブス」ミュージックビデオについて(Mrs. GREEN APPLE OFFICIAL SITE)

▼同日、キャンペーンソングとしてタイアップしていたコカ・コーラ社も「いかなる差別も容認していない」と広告素材の放映を停止

日本コカ・コーラ「いかなる差別も容認していない」、公開停止のミセス新曲めぐりコメント…MV内容事前に把握せず(弁護士ドットコム)

エキスパートの補足・見解

 公開後すぐ、という驚くほどのスピードで炎上したミセスの『コロンブス』MVですが、その後の公式の動きは炎上への対応として素晴らしいものでした。

 炎上当日にはユニバーサル ミュージックがMVの公開停止を発表。なかでも「誤解を招く表現だった(誤解した人たちが悪いと受け取れる)」と書かずに、「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」と書いていたことが、「問題を真摯に受け止めている」と分かり、炎上後の謝罪文としてとても正しい書き方だと感じました。

 また、レーベルからの発表だけでなく、ロックバンドのメンバー自身がMV制作の経緯、「差別的な表現に見えてしまう懸念はあったが、そのような意図はなかったのでスタッフで確認し合ってフォローしていた」、「配慮不足が原因だった」と同じく当日に発表を行ったことも近年の炎上後の動きとしては他に類を見ないものです。

 一般的に企業の炎上というものは(確認する関係先が多いために)謝罪や説明までの動きが鈍く、そのあいだにSNSで炎上がヒートアップしてしまい、ミスリードやデマの情報が拡散してしまいがちです。

 しかしながら今回の炎上事例では公式の動きが素早く、また、どこが問題だったかを受け止めているかも一般ユーザーから分かり、少なくともユーザー間で炎上の熱が広がっていくことは防げているように見えます。

 それだけに今回の炎上を事前に防げなかったことが残念ではありますが、この炎上を経験として日本の音楽業界全体が改善への取り組みをより一層進められたらと思います。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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